飴祭り
今回はイラストあり。恥ずかしがるタコさんです。
毎度のことながら見たくない理由がある方はお手数ながら挿絵をオフにしていただければと。
飴祭りとは。
ここ水晶砦クリスタルシティにて一年に3回、行われる行事である。
街の中央にある水晶砦はその名のとおり、他諸国からの進行を食い止める拠点や要所として使用されていた場所で、現在では近くに鉱山型迷宮もあるということで街としてしまったほうが便利だろうとの判断の元、街へ発展していったという歴史を持つ。
砦として大きな建物である水晶砦を起点に円状に広がるように街ができていったため、自然トップクラスの規模を持つ街である。
とは言えども街にする際には一つの問題があった。
食料である。
ここから近い村は存在せず、一番近い町は学園都市アルタイル。しかも当時はちゃんとした道など無く、食料輸送におけるリスクが高いということで援助が難しかった。
さらに問題があったのがここの付近には鉱山しかなく、しかもそこはただの鉱山ではなく迷宮という名の摩訶不思議空間。
木々や生物の一本一匹に至るまで食用とするには厳しいものがあった。
紆余曲折あって、結局、学園都市の援助を受けることはできたのだが、街を作る人数に対してそれは雀の涙ほど。
ゆえにあまり人数も増やせず、地道にやるしかない。
そんな艱難辛苦の中、皆の意気を高めようと一人のガラス職人ウェイバーさんがとある催しを開催した。
飴細工によるショータイムである。
これが飴祭りの原型と言われているそうな。
今から300年ほど前の話である。
工作感覚で創作活動を楽しみ、甘い食べ物でストレス解消、というのが彼の目的だったらしい。
当然、飴だからといって量が多いわけではなかったが、見て楽しめる飴細工というのが人々の心を潤した。
この街出身の人間で彼の名前を知らない人は一人もいないらしい。
それから祭りはより発展していき、今では様々な店が創意工夫をこらした様々な飴を食べることができるビッグイベントへと昇華したのである。
『みなみなさま~っ!
おっまたせしましたぁっ!!
今年最後の飴祭りにようこそぉ~っ!!』
拡声器のような物がいつの間にか街のいたるところに設置され、そこから女性らしい声が聞こえてくる。
周りからリリィちゃーんっ!という叫び声にも似たリリィちゃんコールが。
この声の主はアイドル的な立ち位置にいるのかもしれない。
『この街出身のみなさまはもちろんのことっ!
今回の祭りが目当ての観光客の方々っ!
知らずに運良くこの街にいる方々もっ!!
存分にお楽しみくださいっ!!』
そんなアナウンスを聞きつつ、僕とやまいは宿から出るのだった。
ティキは気を利かせたのか二人で楽しんできてとのこと。
「た、たこ?」
「ん?」
やまいを見るとやまいは手をおずおずと差し出してきた。
なるほど。
「手を繋いでいこっか?」
「うん!」
ぎゅっと手を繋いで、本当に仲直りできて良かったと思いながら僕はやまいと一緒に歩き始めた。
☆ ☆ ☆
街に出るとよくもまぁ一晩でここまでと感心する。
昨日、宿に帰るまでは確かに普通だった街並みがガラリと変わっていた。
何かゴソゴソやっていたのはわかっていたが、宿の人に明日の祭りの準備だと聞いていてあえて全く作業を見ないようにしたのだけれど、ここまで見事だとその作業自体を見てみたかったという思いも湧き上がる。
あたり一面に色鮮やかな紙吹雪が舞い、人々の多くは仮装・・・?しているようだ。
ここはもともと職人の街であり、異世界の職人といえばドワーフ。
ウェイバーさんがドワーフ族であったことから、祭りの日にはドワーフ族らしき民族衣装に着替えているのだ。
男性はだぼっとした作業着に何かの動物の模様をつけ、女性の服装はチャイナ服のような形で裾に幾何学模様による線が刻まれてた。スリットから見える生足がエロスを感じさせる。
ちなみに僕の服装は白のワンピースに麦わら帽子のような奴。
個人的に美少女に対する鉄板衣装だと思っている。
着心地と、この世界においては驚きの白さを誇るワンピースはすごく高価でした。
でも、せっかくのお祭りだし、ということで買ったのだ。
ちなみにやまいもワンピースだが、色は黒を基調にした裾に赤が混じったワンピースである。
「これって何?
変な雨?」
早速始めて見たであろうやまいが紙吹雪に興味を持つ。
「紙吹雪だよ。多分。」
紙といえば羊皮紙しかないと思っていたんだが、この街はなんか技術力がすごいしちょっと違うのかもしれない。
カラフルでなんか甘い匂いもするのだが、どうやって作っているのか?
そもそもどうやって降らしてるのだろうか?
「た、タコ・・・こ、こ、これ飴だよ!
飴だっ!!」
紙吹雪の甘さに少し口に入れてみたくなったのだろう。
気持ちは分かるのであえて黙って見ていたのだが、やまいが慌てた様子で・・・飴?
落ちてくる紙吹雪の一つを手にとって口に入れてみると。
「た、確かに・・・飴だ。」
雨と飴をかけたこじゃれた紙吹雪である。ってやかましいわっ!!なんていう一人ツッコミをしつつ、飴を味わうこと山の如し(?)。
ほのかな甘味が口に広がる飴吹雪は、なかなかどうしてくちゃくちゃという食感だ。
硬いタイプの飴ではなく、柔くてガムに近い感触の―俗に言うチューイングキャンディに分類されるような飴である。硬い飴をハードキャンディ、柔らかい飴をソフトキャンディと言った気がする。
色によって味が異なり、ピンクはいちご風味。黄色はレモン風味と、細かい。
赤はリンゴだろうか?
駄菓子屋で子供向けアニメのパッケージが書かれたチューイングキャンディと似たものと言えば、ピンと来る人も少なくはないだろう。
個人的にすごく好きなお菓子であるが、最近は食べてない。
というか日本ではないので、もう二度と食べられないはずだったがもうこれは箱買いするしかない。
どこかにこの飴が箱入りで売ってる場所はないだろうか?
落ちてる飴を集めるわけにはいかないし、やまいの目の前で必死こいて落ちてくる飴を回収するのもかなり恥ずかしいものがある。
「たこ?
・・・そんなにたくさん食べるの?」
「か、勘違いしないでよねっ!?
こ、これは目の前で降ってきたからキャッチしたのであって、別に必死こいて集めてなんかないんだからねっ!?」
「え、えと・・・う、うん。」
普通に聞いてきただけであろうやまいに僕の腕の中いっぱいになった飴吹雪を見られて、勘違いされないように一応弁解しておく。
少し声が上擦ったのはたまたまそんなことがあっただけであって、別に何かしら動揺があったわけではないことは言っておかなければならないだろう。
そんなこともあって、周りを見渡しながらまずは昨日の約束通りラインハルト君のところへと赴く。
道中、周りの人がやたらとこちらを見てきたが、きっとやまいの可愛さに見惚れているのだ。
「ん?
いらっしゃ―っ!?」
「やぁやぁ、ラインハルト君、約束通りにやってきたよ!」
「・・・いらっしゃいませ。」
「おいおい、どうしたんだい?ラインハルト君や。
薄情な対応じゃないか。
僕たち、マブだろ?」
マブだろ?のところで親指を立てて、ウィンク。
「・・・いや、知らないっす。
お姉さんみたいな美人さん、俺は知らないなぁ・・・」
なんか棒読みで知らんふりをし始めるラインハルト君。
心なしか周りの視線を気にしている気がする。そして声も大きい。まるでこの人とは知り合いじゃありませんアピールを周囲の人にしているようだ。
「はぁっはぁ~ん?」
「な、なんすか?その変な笑みは?」
なるほどなるほど。
ラインハルト君も年頃の男の子だもんね。
こんな美女と一緒にいるところを見られたら、気になるあの子が見てるかもしれないっ!みたいな心配をしているのだろう。
周りの人もそんな初心な彼を見てクスクスと嫌味ではない、微笑ましい類の笑い声をあげていた。
「大丈夫、大丈夫。
ラインハルト君の気になる女の子には僕からちゃんと誤解をといてあげるからね。」
「ちっげぇえええええっ!!どんだけ馬鹿な勘違いをしてんだっ!?あんたはっ!?」
「まぁまぁ、そんな顔を真っ赤にして恥ずかしがらなくても・・・」
「ちがうからっ!これまた見事に違うからっ!!
これは怒りとかそういう赤みだからっ!!あんたの馬鹿さ加減にキレてんだよっ!!」
「そういうことにしといてあげるから、とりあえず落ち着いて?ね?」
「じゃかぁしいぃわっ!
だから違うって言ってんだろっ!?人の話聞けよっ!?」
「・・・?
聞いてるでしょ?」
「聞いててそれかっ!?
本当に!聞いててそれかっ!?俺の態度と今までのセリフ、それらを聞いていて本当にそういう判断をしちゃったのかっ!?いや、そもそも俺はあんたに気になる女の子の話をした覚えが無いっ!!」
「見てれば分かるよぉ、僕は鋭いからね!きりっ!」
「ぜんぜん分かってないっ!!
あんたぜんぜん分かってないよっ!?
まずは分かってないことを分かろうっ!?頼むからっ!!そして、そのドヤ顔はやめろ!」
「分かってないことを分かる?
なにそれ?
とんち?」
「どこがっ!?」
「分かったよ。とりあえず君に対してなにかしらわかる必要があることは分かった。
けど分かるためにはどうすれば分かるのかが、僕には分からない。」
「言い回しがややこしいわっ!」
「うん、知ってる。わざとだし。」
「わざとすんなやっ!?」
「てへぺろ。」
「うぜぇっ!!」
まぁ冗談はこれくらいでいいだろう。
それにしてもウザイとは失礼な。
自分で言うのもなんだが、僕のてへぺろはかなり可愛いと思ったんだけど・・・
「真面目に話そうか。
とりあえずどうして知らんふりしたの?」
「・・・はぁ・・・。・・・知り合いだと思われたくなかったんだよ。」
「・・・?やっぱり気になる女の子がいるんじゃないか。
ほら、お兄さんに話してみ?面白おかしくアドバイスしてあげるから。」
「・・・最悪だな。仮にそうだとしてもあんたにはぜってえ相談しねぇよ。・・・お兄さん?」
「ああ、気にしないで。で、どうして?」
「自分の胸に聞けよ。」
「あら、エロス。」
「なんでっ!?」
「胸に聞こうって言っても、思い当たる節はないのだけれど?」
「・・・その両手にいっぱいに抱えてる飴吹雪はなんだ?」
「・・・飴だけど?」
「いや、そうじゃなくて・・・一応言っておくが、それは子供が楽しめるようにということで街に降らせてるものであってだな。
ある程度年食った人がそこまで抱え込んでるのは・・・めちゃくちゃ恥ずかしいことなんだが?」
「は?」
と、ということは?
なにか?
今まで衆目がこちらに向いていたのは良い歳して飴を両手いっぱいにかかえる僕に対してそういう目を向けていたからなのか?
ぷーくすくすと皆して笑っていたからなのか?
「・・・顔、真っ赤だぞ。」
「う、うるさいわっ!!」
おーおーおーっ!
はずかしぃぃいいいいいいいいっ!!
思わず麦わら帽子を手で目深にしつつ、うずくまる。
にょわわわわわっ!!
まじかっ!
まじでかっ!!
「た、タコ?」
「・・・それが分かっても、飴吹雪は捨てないんだな。」
うおぉおおおおおおっ!
めちゃくちゃ恥ずかしい。
すっごい恥ずかしいっ!!
「ひぬほど恥ずかしいっ!!」
「ひぬ?」
「死ぬなよ?こんなところで死なれたら営業妨害だ。つか、どけ。」
やまいが僕を怪訝な表情で見つめ、ラインハルト君はまさに馬鹿を見るような目でこちらを見ていた。
「し、知らなかったんだもんっ!!
しょうがないんだもんっ!!」
「・・・いいからどけよ。他の客がこっちを遠巻きに見て、結局逃げてってるんだから。」
「んなっ!?
傷心のカワイコちゃんに向かってなんたる無慈悲な言葉っ!!
そんなんじゃ、モテないぞぉっ!」
「・・・照れ隠しでこっちを挑発するのはいいから、とにかくどけ。」
おっはうっ!?
見破られてるっ!!
けど、ここで引くと余計に恥ずかしくなるので、引きません!媚びません!省みません!!
「でも、モテモテになれる方法があります!
貴方はいますぐ僕とやまいに対してわたがしを作るときっと明日以降にはモテモテになれますっ!!」
「スルーかよ・・・そらな。明日以降のいつかは多分、モテる時もあるかもな。
つか連れの子供にはすでにやってる。」
というセリフを聞いてやまいを見ると手には確かに綿菓子がっ!!
いつの間に!?
「あ、あのお金・・・」
やまいが財布を取り出して言うのだが、
「ああ、いらんいらん。サービスだ。つか勝手に作って、あげたもので金取るのもおかしいだろ。押し売りは嫌いなんだ。いらなきゃそっちのお姉さんにでもやってくれ。」
「でも。」
「この祭りは結構、金食うからな。どうせならそっちに使ったほうが楽しめる。この街に住んでる俺のアドバイスだ。聞いておくと得するぞ。」
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「あるぇっ!?
やまいにだけすっごい優しい!?」
「子供に優しくするのは年長者の務めだろ?」
何をアホなことをという目でこちらを見てくるラインハルト君。
なんだ、なんだ。こいつ、イケメンだっ!!
「優しくすることだけが子供のためにはならないっ!!」
「怒るのは親の務めだろ?俺の務めじゃねぇ。」
「・・・ですね。」
揚げ足を取ろうとしたが失敗した。
「てか、そろそろ照れ隠しの相手も疲れてきたし、いい加減どけ。」
「言うなよぉっ!」
なかなか好調の出だしの飴祭りだった。
豆知識とイラスト
そもそもチューイングキャンディってなんじゃそら?という方もいるかと思いますのでそこをちょっとだけ詳しく話そうかなと。
まずチューイングとは噛むことを意味するらしく、キャンディはそのまま飴(広義にはチョコレート菓子を指すこともあるとか)を意味します。
つまりチューイングキャンディとは噛んで食べられるソフトキャンディのことを言うようです。
チューイングキャンディで有名なものといえば作中でも言ったように、ロッテから発売されてる機関車トー○スやドラえもんのパッケージが書かれた奴が有名ではないでしょうか?
個人的にあれはベスト3に入ると思っています。お菓子の中で。
あとはカエルのキャラクターが書かれた小さなポットの甘いジュースのあれが好きでした。名前忘れましたが。
ちなみにチューイングと呼ばれる摂食障害もあるらしく、食物をただ噛みしめるだけで吐き出してしまうとか。
その後、過食症や拒食症に発展するそうです。
イラスト
タコさんを書きましたが、前回のイラストを見てないので顔とかうろ覚えで違う人に、というか中途半端にデフォルメした感じなので違和感を感じると思います。
あまり気にしないでください。
デフォルメされてると思っていただければと。髪の毛も下ろしてるしね!




