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タコのグルメ日記  作者: 百合姫
Ⅴ章 交易都市バルゴ

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結局トンボの話

今回はやまいの下書きイラストでも。いわずもがな見たくない理由がある方はお手数ですが挿絵設定の方オフにしていただければ。

「こへほいふぃいねっ!」

「口に物を入れた状態でしゃべらない。行儀が悪いよ。」

「・・・ごくん。ごめんなさい。」

「よろしい。」


やまいが食べているのはコカトリスの卵を茹で卵にし、それを串に刺した物をソースのような物につけて炭火焼にしたもの・・・もとい焼き鳥の茹で卵バージョンだ。

僕も食べてみる。

かじって驚くのがそのとろみである。

2工程分の火を通しながらもその身は固ゆでほどパサパサしておらず、かといって半熟のような柔らかさを持っているというわけではない。

パリッと焼けた表面の中はあっと驚くほどのジューシーさ。

口に入れた瞬間に卵の濃厚な旨みが口に広がり、白身が、黄身が、溶けてなくなる。

それだけならただのゆで卵で、その独特な白身の淡白さ、黄身の口の中にしつこく残る濃厚さ。人によっては苦手な人もいるだろうがそういった癖が綺麗さっぱりなくなっている。

すなわち後味さっぱりなすっきりした卵。

しかしその味は地球のものよりも、むしろ濃く、ほんのりと甘い。

だが、これでは物足りないと感じる人も多いだろう。

パンチが足りない。

そこをソースのような・・・醤油ベースの照り焼きソースが飾り立てる。

しかしそれが主張しすぎるということは無い。

とろけた中身はソースと良く混ざり、そのすっきりした味に独特の色を付ける。


ソースだけを舐め取ってみるとなかなか味が濃いが、これぐらいでなければ口の中で溶ける卵に負けてしまう、流されてしまう。


卵のみを好む人も少なくは無いと思うのだが、思い切りの良い味付けである。

店主の性格がこれを通して見て取れる。大胆で思い切りの良い店主の―気がする。


こんな感じで買い食いをしてる僕達は交易都市バルゴを観光しながらのんびり買い食いをしていた。

お金はこの街の冒険者組合ですでに作った。

手持ちのお金、60万ルピー。ちょいとした小金持ちだ。

街に行く度に動物の体の一部を持っていくのだが、持って行ったものを売ったお金をすべて使うわけではないので、家にあるのも含めて貧乏というわけではない。

色々と買い食いをして、ついでにカマドや新しい飯盒(はんごう)なんかも買えれば良いなと思う。

カマドは・・・ちょっと持って帰るのがつらいか?

交易都市とか言う位だから配送手段に置いてはそれなりのものがあると思うけれどカマドは可能なのだろうか?

せめてミドガルズの街まで輸送してくれればいいのだけれど。


☆ ☆ ☆


街を探索して5時間。

日が暮れ始めたので、そろそろバルゴ邸にお邪魔しようかと思ったのだがちょっとからまれてしまった。

男三人組である。


「どいてくれませんか?」

「まぁまぁ、いいじゃん?

俺達とお茶しようぜ!」


こんな露出のある服で街をあるいていればそら目立つわけで。

さらに僕の見てくれだけは完全な美少女。

ナンパの一つ二つはあってもおかしくない。のだが、途中から雲行きが怪しくなってきた。


「こっちの女の子は何?

妹?

この子もかわ――いくねぇ・・・な?

おねぇちゃんに比べてふてぶてしい面してやがる。」


とやまいに向かって言う。

当然ながら完全な言いがかりであり、やまいの可愛さでふてぶてしいなんと言ったら概ねの人間はふてぶてしい人間になる。

僕を可愛いと言ってるので、彼らの美的センスがずれているというわけでもないだろう。

となればぼっち能力発動か。

いまだにこの能力の詳細が良く分かってないのだが、とりあえずガラの悪い連中には効果が出るのが早く、たとえローブで顔を隠していても、体を隠していても不快に思うようだ。目の前の男は覗き込んだのでさらに効果が顕著に出ている。

僕にとっては目の前のこの人たちこそが不快なのだが。

久しぶりの嫌悪感あらわな視線にさらされたやまいは縮こまる。


「大丈夫。」


頭を撫でて耳元で優しくつぶやく。


「・・・うん。」

「よしよし。」


強い子だ。

それとも僕がちゃんとした支えとなれているのか。

後者であるなら保護者としてこれ以上にうれしいことは無い。

あるいはそのどちらともか。


「そんな小汚いガキなんざ放っておいて・・・」


そう言って僕の腕を掴む男A。

殴り飛ばすのは簡単だ。

しかし当然のことながらちょっとからまれたぐらいで殴り飛ばすのは大人としてどうかと思う。

出来る限り話し合いで解決するべきだろう。

ぱしりと男の腕を叩き落した後にしっかりと断る。


「何度も言うがその気は無い。

他を当たって―」

「いいからいこうぜぇ!」


またもや腕を掴む男A。しつこい。

ひっぱってくるがたとえ擬態することに筋力の半分以上を費やしていようと今の僕は昔に比べてさらに強くなっている。

現在の筋力は鋼の塊をねじ切れるほど。

冒険者組合で動物の素材を売る際にはいつぞやに作ったカードの確認が必要なので、最近それを見たところレベルは128。魔力量は140万強。僕の筋力は魔力に比例することが最近分かったので現在の筋力はすさまじいものがある。その僕の筋力が半分削られている程度では、彼ら程度片腕で十分。

もとい微動だにしない。


「くっ!

あぐっ!

くそっ!

あれっ!?」


思いっきり引っ張ってもまるで僕が動かないので男Aは必死に引っ張ろうとする。しかし変わらない。


「何、遊んでんだよ。もう強引でいいだ―――なんだ?このクソガキ。」


そこでやまいが僕の目の前に出た。


「たこがいやがってるっ!

それくらいにしてっ!!」

「んだぁ?何?

お姉ちゃん守ってるつもりかよ?オチビちゃん?」


やまいは震えながらも僕を助けようとしてくれる。

やまいの方がはるかに強いだろうから震える必要は無いと思うが、そうは言ってもガラの悪い男三人に囲まれて、敵意を向けられるのは辛いだろう。

村で嫌われていた時のことを思い出しているという可能性もある。

近い状況だっただろうから。

ここまで大事になってしまってはさすがに暴力反対と言ってもいられない。

僕は拳を握り締めたが、いったんその拳を収めた。

今はやまいががんばっている。

ぎりぎりまでそのがんばりを見てあげることこそ保護者の務めではないだろうか?

5歳児には酷すぎるという考えもよぎったが、ではいつからが適しているのかと聞かれても僕には答えられない。

子育ての経験なんて無いし、ここは日本ではない。

生ぬるい育て方で良いのか?という思いもある。

環境が違う。


なによりもやまいは普通の人よりも絡まれやすい体質だ。

小さなころからこういった時の対応に慣れておくべきなのは間違いない。

が、急ぐ必要もない。

やっぱり殴り飛ばすか。むかつくし。いやしかしな。

子どもの前ですぐ暴力に頼るような行動は如何様か。



「うぜぇぞっ!」

「やまっーっ!?」

「大丈夫だよ。たこ。防御したもん。」


だが、男はもう辛抱が足りなかったのだろう。

やまいを殴りにかかる。

が、やまいはくろもやさんを体にまとってそれを受けた。

内心焦った。


いい度胸だ。邪竜の加護のせいがある。彼らが全部悪いとは言わない。とは言えども人の家の子を目の前で殴るとは。

ダメージは無い。しかしそういう問題ではない。

元々しつこくナンパしてきたのが悪いのだし、いい加減殴り飛ばしてやろう。


「ぐっ!?

な、なんだそりゃっ!?」

「どっかいってっ!

じゃないとおこるよっ!!」

「・・・ちっ!

ふざけ―がはっ!?」

「ひあっ!?」


得体の知れない黒いオーラを殴って逆に手を傷めた男Bは子供にそんなこと言われて引き下がれるはずも無く、もう一度、今度は剣を抜こうとしたところで僕も拳を構え、さて殴ろう!としたところで、いきなり横合いから飛んできた炎的な魔法に焼かれた。

頭がいきなり爆発したように見えたので驚きの声をあげるやまい。


「タコちゃん。大丈夫?」

「り、リシュテルさんっ!?

それにシンシアさんっ!?」


そこには久しぶりに会うリシュテルさん達だった。

森での研究員護衛任務で知り合った人たち。ダイグンタイアリの情報をちょろっと喋っちゃったときにやたらとしつこく絡まれたっけ。

赤い短髪は相変わらず良く目立つ。彼女の吊り目は僕と話しながらもナンパをしてきた男達をにらみつけている。

その背後には魔法を使ったのだろう。

腕をこちらに向けたシンシアさんがいる。

おっとりした目つきと水色の長髪という彼女の見た目的に、大人しい人と思っていたのだが――やるときはやるんだ。

当然仲間をやられた男Aと男Cは黙っていない。

一応は戦いなれていたのだろう。

男Bが倒れた瞬間、すぐに腰にある使い込まれた剣を抜き、リシュテルさん達に向けるが残念。少し遅い。


金髪のポニーテールを翻した小柄なマリーさんが男達にナイフを首に突きつける。

両手にいかついナイフを持っていた。


「これ以上やるなら私達が相手になる。」

「く、くそっ!い、いくぞっ!!」


そうして男達は命からがらという様子で去っていった。


「ぐーてんたーく。タコ。」


無表情、しかし声は弾んだ状態という器用なことをしてのけるマリーさん。


「マリーさんも壮健そうで。」


・・・そして、なぜドイツ語?

前もあでぃおすとか言ってたし、僕の翻訳魔法はどうなってるのだろうか?ちなみにアディオスはスペイン語だった気がする。

この世界で言うところのドイツ的な場所にある言語なのか、なんかの不具合か。

まぁ細かいことは気にしないで置こう。

この辺で使っている言葉ではない、外国語を使ってると思っておけば良い。

地球でもさまざまな地域で言語形態が違うのだから、異世界だって色々な言語体系があるだろう。

それだと思っておく。そもそもこの翻訳魔法はグリューネに刷り込まれた言語変換辞書のようなもの。変換不可能な言語はそのまま発音されたり、何か違う言葉になるのかもしれない。

やまいに言葉を教わるのも良いなと思いつつ、とりあえず感謝した。



☆ ☆ ☆


「この子は何?」

「この子は僕の・・・妹?」


お母さんって歳に見えるわけでもないのでそう言っておく。


「へぇ・・・」

「ほら、やまい。自己紹介して。」

「う、うん・・・やまい。よろしく。」


僕の背後に隠れてぼそりとだけ言う。

いまだ村のことはトラウマなのだろう。

人と接したがらない。

まずは避ける傾向があるのはいずれ直したいものだ。


「よろしくやまいちゃん。」

「・・・不快に思いませんか?」


少し気になったので聞いてみる。


「え?どうして?」

「ならいいんです。別に。」


一応簡単に事情を話し、あまり近づかないことを伝えた。


「なるほどね・・・まぁ私達はシンシアに常に守ってもらってるから。直接顔を覗き込まない限りそれは無いと思うわ。」

「守ってもらってる?」

「ふふふ、自分で言うのもあれだけどね。私達って美人でしょ?」

「ええ。」


確かに彼女達は美人だ。

一般的な美的センスを持つ人間であるなら誰に聞いても綺麗だと答えるだろう。

メリハリのあるボディを持つし、装備もそこはかとなくエロイ部分がある。

ボンテージ衣装の露出部分に布を当てた感じの服がリシュテルさん。

透けそうなほどに薄いローブを着て、ローブの隙間から出るニーソックスが色っぽいシンシアさん。

僕と近い形の服装で決めるマリーさん。ただ胸はぺったんこでそちらに視線が言ったのが分かったのだろう。マリーさんはちょっとむっとしつつも胸を張った。

・・・なぜに?


主な装備は魔道具としての加工が施されてるらしく、その露出や薄さに反してそこそこの防御力と、ヤマビルや蚊なんかは寄ってこない特注物でありさらにはシンシアさんが常に軽いバリア的な魔法を張っているそうだ。


「美人だと得することもあるけど襲おうとしてくる悪いやからが寄ってくるって言う難儀な部分もあるからね。

そうした人たちって大抵卑怯な手段、たとえば不意打ちだったり麻痺毒だったりで動きを封じてくるからそういう人たちに先手を取られないために状態異常を防御する魔法を常に張ってもらってるの。」

「なるほど・・・。」

「まぁ襲われるといっても普通に過ごしてる分にはあまり無いのだけど・・・念のためにね。実際に少なくても襲う奴は出てくるわけだし。」

「その魔法が・・・?」

「ええ、多分そう。

ローブで体を覆って顔を見せなければ極端に嫌われない、ていう程度なら大丈夫よ。」

「なるほど。」


その魔法をやまいに覚えてもらって常に自分の周囲に張り巡らせたらどうだろうか?と少し考えたが、現実はそんなに甘くない。

シンシアさんによるとこの魔法、外からは遮断するが中からは遮断できないらしい。

つまりおしっことか出来ないし、汗をかいても蒸発しないため、長時間やるのは危険になってしまう。

そうはならないように内側からは筒抜けである。

意味が無い。

友達になりたい人に毎日かけ続ければと思ったのだがそれも現実的ではない。

一日忘れただけで一気に好感度が逆転してしまう。

やまいを嫌った村人が終始、誰も味方しなかったことから一度嫌いになると戻らないと思われる。

さらに言えばこの魔法の効果は弱くは無いが強いほうではない。顔を覗き込んでしまえば忌避フェロモンが貫通する可能性もあると思われる。

そう簡単には行かないか。


「ところで今日はここに何しに来たの?

ダンジョンに行くなら私達と一緒にいかない?」

「ダンジョン?」

「あら?違うのね。」

「ここにダンジョンなんてあるんですか?」


この動く機械の山に?


「知らないのか。ここは元々ダンジョンだったんだよ。」

「はぁっ!?」

「ふふ。こんな街を人間が作れるはず無いじゃない。

この街の起源は動くダンジョンがあって、そこを攻略しようとした冒険者達がテントを張った。中に何があるかの探索で最大の問題になったのが食料や武器などの物資の補給。そこで考えたのがいっそのことダンジョンの上に本格的な休憩所をつくろうってのが一番初めの原型だって聞いたよ。」

「それが発展して・・・こうなったと?」

「そうなるわね。その辺はシンシアのほうが詳しいと思うわ。」


そういってリシュテルさんはシンシアさんのほうを向く。

僕も向いて続きを促す。


「そうね。まぁ知ってるけど・・・ええと確かその休憩所を作るに当たって一番の問題が移動手段。

最初はこの街の足をよじ登っていたそうだけど、物資の補給で荷物抱えてよじ登っていたらそれだけで死者が出るって事で、まずは物資の補給法を確立させることが重視されたって聞いたわ。

その発展形がトンボ場。当時メガトンボの魔力の使い道が分かっていないってことで色々な意味で有名な魔獣学者ロベルト・ワイズマンが―」


話が長引いてしまったのでまとめると、トンボ場を作った人間は偉大だよ!って話だった。

遠方の場所へ簡単にいける移動手段。

それがトンボ場らしく、そこに使われるメガトンボ農家は一般市民にとってちょっとした憧れの職業らしい。

ただ、メガトンボは国のさまざま場所へ行くことを可能とするが、仮に途中でメガトンボが野生に戻ったり道を忘れたりするとそれでもう人生が終わる。

メガトンボ農家は日本で言うところの飛行機のパイロットのような立ち位置であり、人の命を預かる職業であることからメガトンボ農家には専門の資格が無いと駄目で、最近は偽造してまでメガトンボを素人に売りつける人間が増えて困るとか何とか。

ちなみにメガトンボ一匹100万単位。子供のヤゴでも50万でも安いほうだという。


大手メガトンボ農家のとこの高品質メガトンボなんかは一匹2000万単位で取引されたりするという。

とんでもないな。


なんていう豆知識を聞かされながら僕達はダンジョンの入り口へ立ったのだった。

新たしい場所、新しい生物、もとい美味しい食材が、動物達が僕を警戒して待っているに違いない。





このとき僕はバルゴさんとやらのことをすっかり忘れていたことにまるで気づかなかったのである。







挿絵(By みてみん)


今回はそれとトンボに関しての豆知識でも。

トンボ。

昆虫の世界では最速とされるトンボの餌はハエです。

空中を縦横無尽に飛ぶハエを追っかけて捕まえるのがトンボ。

とんでもないです。

トンボは一箇所に留まっての飛行、もといホバリング飛行なんかも可能で飛ぶことに関しておそらくかなり上手い昆虫です。wikiによると羽が一枚無くても飛ぶとか。wikiはちょいちょい間違えてるのであまり参考にはしないんですけどね。

ちなみにトンボの成虫の飼育はあまり難しくないです。普通に「生かすだけ」ならなぜかは分かりませんがトンボは口元に餌である昆虫を持っていくと勝手に食べ始めてくれます。反射なのかな?

トンボの尻尾を口元に持っていくとこれもまた食べ始めます。小さなころそういう遊びをしていたんです。僕は。残酷だったなぁと思いつつ。

繁殖とかになるとクソ難しいらしいんですけどね。縄張り持ってたりしますし。

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