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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第四章 火遊びと潔癖症の上司

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第10話 結婚か死かという選択肢

「でもさっきかえでさんは僕一筋で生きるって言ってましたよ……少しは信じてあげても……確かに今聞いたことはどう考えても性犯罪者の行為にしか聞こえないですけど」


 その言葉にかなめの眉がピクリと揺れた。


「アイツがそう言う……神前。テメエは完全にロックオンされたな。もう逃げられねえと思え。アイツはこれまで『マリア・テレジア計画』の際に狙った24人の女に対してそのセリフを吐いたらしい。そしてその女達はきっちりかえでのクローンを孕まされた。ただ、そのセリフを吐かれた男はこれまでただの一人もいねえ。まあ、オメエは男だから子供を産むのはかえでだろうがな。間違いなくかえではオメエの子を孕むつもりだ。あの変態はどんな手段、時には犯罪行為に走ってまでもその目的を果たそうとするだろう。ただ安心しろ。アタシは今度の『殿上会』で関白太政大臣になる。甲武国民にとって関白は絶対だ。その夫であればいくらあの色魔があがこうが手が出せねえ。今からでも遅くはねえ。神前、アタシのものになれ。アタシと結婚しろ。結婚しなければ射殺する。死ぬか、結婚するか、選べ。今すぐ選べ」


 かなめは真剣な表情で誠に向けてそう言った。


「あのー、そういうセリフって普通男から言う物ですよね。僕は何時からお姫様設定の人になったんですか?それとなんでそれを選ばないと僕に死が待っているんですか?西園寺さんが勝手なのは以前から知ってますけどそんなに僕の命って軽いんですか?それは愛でも恋でも無いですよ……死にたくないから結婚って……いつからここは戦国時代のルールがまかり通る世界になったんですか?無茶苦茶言わないでください」


 傍若無人で自分勝手なかなめの台詞に完全に引きながら誠はそう返した。


「オメエが優柔不断で煮え切らないからだろうが!アタシにこんなセリフを吐かせたんだ!今日帰りにホテルに寄って……」


 筆を止めて舌なめずりをしながら誠を見つめて来るかなめの視線は調教する得物を見つけた『女王様』のそれだった。誠の背筋に冷たいものが走った。


「西園寺。仕事中にふざけた話をするんじゃない。それに神前は意思を持った東和国民だ。いくら甲武一の貴族と言っても西園寺の私有物では無いんだ。くだらない話はやめろ。それに銃で脅して結婚を迫る花嫁の存在など聞いたことが無い。まあ、貴様ならその初の礼になってもおかしくはないサディストであることは間違いない事実であることは否定できないが。それに結婚したとしても西園寺に気に入らないことが有れば神前にはその度に射殺される可能性が残されることになる。私から警告しておく。神前、西園寺との結婚はするな。結婚するぐらいなら今射殺された方がたぶん正解だ」


 不機嫌そうにそう言うカウラの視線が誠に向いた。


「カウラ、ちょっとしたお茶目も分かんねえのかよ。だからオメエは堅物でつまらなくてそのはけ口をパチンコに求めて依存症になるんだ。少しぐらい冗談くらい分かるようになれよ。まあ、アメリアの馬鹿は行き過ぎだがな」


 自分の暴言を棚に上げてかなめはそう言うと再び書状に視線を落とした。


『西園寺さんの冗談はいつも命の危険が伴うからな……その点アメリアさんの冗談にはそれが無い。その冗談を言われる相手の気持ちとか西園寺さんは考えたことは……たぶんないだろうな』


 誠はあくまで自己中心的な『女王様』の冗談に苦笑いを浮かべていた。

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