表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
Episode4 風の騎士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/89

第5話 ヒーロー

「いやぁ! 格好良いっすね! ヒーローって!」


 アリスに拾われた直後。相良は冬木家に居候していた。

 ユウキと一緒に、ヒーロー番組を見ながら。

 おもちゃを片手に、よく遊んでいた。


「俺もなりたいなぁ~。ヒーローに。海の巨人に」

「へへ! まだお前には、早いな」


 ユウキは悪戯笑みをしながら、おもちゃを持ってくる。

 どれもヒーローが使っていたアイテムだ。


「相良は直ぐに結論出すからな。まだヒーロ―になれないさ」

「ええ!? 単細胞だとヒーローに、慣れないんすか!?」

「そこまで言ってねぇよ! 自分で単細胞って言うのかよ!」


 まるで兄弟のようなやり取りをする二人。

 相良にとってユウキは、色々教えてくれる優しい先輩だった。

 戦い方は教えてくれなかったが。大事な事を教わり続けた。


「ほら。みんな悩んでいるだろ? 結論を出すまでにドラマがあるだろ?」


 ユウキはヒーローものが大好きだった。

 その影響で相良もヒーローに憧れるようになった。

 ユウキはヒーローを語る時、いつも楽しそうにする。


「あれが良いんだよ。悩まないヒーローなんて居ないからな」

「でも、主人公に芯があって。悩まない方が格好良さそうですけどね」

「お前にも分かる時が来るよ。ヒーローが、なんで戦っているのかがね」


***


 相良は柔らかい布の上で、目が覚めた。

 医務室で意識を失って、夢を見ていたようだ。

 目が覚めて起き上がる相良を、ダグマが心配そうに見つめていた。


「ダグマさん……。作戦はどうなりました?」

「失敗したよ。いや、失敗していたという方が正しいかな?」

「そう、ですか……」


 和平派の作戦は、既にジンにバレていた。

 裏を突かれて、誰も知らない秘密通路を利用された。

 暗殺がバレて、対談中の過激派を拘束されたそうだ。


「君が居なければ、私は殺されていた。そのお礼が言いたくてね」


 頭を下げたダグマ。相良は戸惑いながら、頭を抑えた。

 気絶する前に、声が聞こえた。

 彼を批判するような声。自分自身が放った声だ。


「作戦を立て直す必要がある。暫くはここにとどまるよ」


 医務室があるのは、遺跡の近くにある拠点だ。

 遺跡は過激派のものだったらしいが。

 今回の件で、彼らは撤退したらしい。


「よく頑張ってくれた。今は休んでくれ」

「あ、ダグマさん……」


 相良は頭を押さえながら、起き上がった。

 怪我をしていない。ジンが手加減してくれたからだろう。

 気絶したのは、また別の理由だ。


「過激派って、本当に悪い連中なんでしょうか?」

「どういう意味だね?」


 相良の問いかけに、ダグマは首をかしげる。

 相良もなぜそんなことを聞いたのか、自分でも分からない。

 目を開きながらも、喉を閉めて言葉を出す。


「ジンは、そんな悪い奴には見えませんでした」


 資料で見た限りだと、相当な悪人だった。

 だが実際に話してみると、彼は残虐なだけの性格ではない。

 相良が記憶喪失だと分かると、気遣う姿勢を見せた。


 彼がなぜ自分を知っていたのか、覚えていないが。

 対面した時、胸の中で何かがうごめく気がした。


「彼は事情があって。和平を邪魔している気がしました」


 相良の言葉を聞いて、ダグマは眉間にしわが寄る。

 明らかに良く思われていないが、相良は続ける。


「彼は本当に、冷酷な悪人なんですか? もしかしたら……」

「事情なんて、奴にはないよ」


 冷静で、少し突き放すような言い方をされる。

 初めて聞く声色に、相良は肩が跳ねる。


「奴はただ、暴れたいだけだ。戦争を初めて、殺しの優越に浸りたいだけだ」

「そう思うのは、早計ですよ」

「平和を拒む者を理解する必要はない。彼らは他者の不幸を喜んでいる」


 その物言いに、相良は黙り込んだ。

 何かが胸に引っかかり、彼との会話が空しくなる。


「争う事に意味などない。それを進める奴は、いかなる者も悪だ」


 ダグマは相良に、背中を見せた。

 彼の後ろ姿は、初めて見た時と印象が変わって見えた。


「民のため。平和を守ることこそ正義だ。それを破る者には、容赦しない」


 ダグマはそのまま、医務室から出ていく。

 相良は口を開くことが出来なかった。

 本当なら、過激派の第二陣の事を、伝えるべきだったのだろうが。


 その情報を伝える気分になれない。

 相良も医務室から出て、外の空気を吸う。

 既に夜になっている。星空が広がり、寒い風が身を貫く。


「ダグマさん。決めつけた様な言い方だったな……」


 言葉に憎しみや恨みは感じなかった。

 どちらかと言えば、怒りだろう。

 理解できない者へぶつける感情だ。


「まあ、俺も人の事言えなんだけど……」


 独り言をつぶやいて、壁にもたれかかると。

 一人の衛兵が、隣にやってきた。

 相良の言葉を聞いて、首を傾げている。


「あぁ……。なんでもないっす。ただのぼやきと言うか……」

「何でもない割に、悩んだ顔だよ」

「あ……。君は……」


 兜越しで顔は見えない。声も聞きづらい。

 それでも、聞いたことのあるものだ。


「俺にこいつを渡してくれたのは、君だったんだな」


 相良は腰に下げた、剣を握る。

 ダッティ―との戦いで、声と同時に剣が投げられた。

 少女の様な声で、何故か自分の名前を知っていた。


 少しイントネーションが違ったが。

 それはジンと同じような、言い方だった。


「それは、貴方が持っているべきものだから」

「君は俺の知り合いなんだな。記憶を失う前の……」


 衛兵は記憶を失ったというフレーズに、反応しない。

 その意味に気づいたが、なにも問う事は出来ない。


「ダグマに何か言われたの? 随分悩んだ表情だったけど」

「いや、大したことじゃないんだ。ちょっと、考え方に違いが見えたというか……」


 ダグマとの会話で、相良が抱いた感情を必死に探る。

 平和を願うのは同じだし、争いは嫌だ。

 共感していたはずなのに。少しだけズレを見た気がする。


「俺はさ。ヒーローに憧れているんだ。みんなを守る、強く優しい存在に」

「ヒーロー……?」


 衛兵が首をかしげる。この世界には存在しない概念だ。

 相良もユウキのおかげで、初めて知ることが出来た。

 だから記憶を失う前に、知らなかったのだろう。


「俺の先輩が教えてくれたんだ。悩まないヒーローなんていないって」

「それが、どうしたの?」

「俺、単細胞だからさ。過激派は悪だって、思っていたんだ」


 俯きながら、自嘲する相良。


「でもジンと話して。それが間違っている気がしたんだ」


 会話するまで、資料の情報を鵜呑みしていた。

 だから彼が悪人だと、疑う事はなかった。

 でも会話をして、資料とは違う人物像だと理解した。


「ダグマさんは彼らを、悪人だと決めつけている。悩まずにね」

「ソラ……」

「だから、彼の掲げる正義って奴が。嘘っぽく見えちゃったんだよ」


 彼の平和を望む心を見たから、和平派に力を貸した。

 でもそれは正しいことだったのか。

 相良は迷いが生じ始めている。


「まあ、先輩は正義なんて言う奴は、みんな外道だって言ってたけどね」

「ず、随分と極端な思考な人なんだね……」

「ハハ。仲良くなるのも時間がかかったよ。でもユウキ先輩には、色々教えてもらった」


 ユウキもこの世界に来ていたと、思い出す。

 彼は今、相良の事を見守っているのだろうか?

 それともまだ怪物を追いかけて、あちこち飛び回っているのか。


「俺はダグマさんほど割り切れないよ。彼らに事情があるなら、それを考慮したい」


 相良は拳を握りしめて、歯を食いしばる。

 言葉にしたことで、ダグマに感じた違和感を理解する。

 彼の理想と自分の目標が違う。


「そっか。それで今のソラの答えなんだね」


 衛兵は、少女は壁から腰を離した。

 兜を脱いで、薄ピンクの長い髪の毛を見せる。


「ここはもう直ぐ、戦場になる。ソラはここを離れた方が良い」

「やっぱり君は……。っ!」


 少女の顔を見た瞬間、相良は頭痛に襲われる。

 感情の波が、心をに襲い掛かって来る。

 記憶でなく心が、彼女を思い出そうとしている。


「ソラ? 大丈夫?」

「ダメだ……。シソ……! こんなのは、君のやり方じゃない……!」

「っ!? 思い出してくれたの!?」


 掠れるような声を、相良は捻り出す。

 心が必死で訴える。彼女を止めなければならないと。


「このやり方じゃ、上手くいかない……! きっとワールドイーターが……!」

「ワールドイーター? なにそれ? なにを言ってるの?」


 シソと出てて来た少女が、相良の肩を掴む。

 それと同時に、遺跡から炎が上がった。


「仲間が始めたようね……。私は行かないと……」


 シソは名残惜しそうにしながら、相良から離れようとする。


「なにか思い出したなら。後で聞かせて。今はダグマを……」

「それは、出来そうにない……!」


 相良はシソに飛びついた。彼女を押し倒した途端。

 二人の立っている場所に、光弾が飛んできた。

 壁に着弾すると、一瞬で崩れ去る。


「なっ! 私のことは、バレていたの?」

「違う。これは和平派の攻撃じゃない。断片的にだけど、思い出せたよ」


 相良は攻撃が飛んできた方向を、睨みつけた。

 ゆっくりと、地面に着地する怪物の姿が現れる。


「お前だったのか。アリス師匠が追っていた、怪物の正体は」

「ほう。やっと思い出してくれたのか? トゥリマルの代弁者。いや、蒼井相良」


 神器と融合した腕を、相良に突きつける。


「俺をこの世界に戻したのも、お前だな? ワールドイーター」

「その通りだ。君もリセットの対象だ。異世界で生き残ることは、許されない」


 戸惑っているシソを、庇うように相良は立ち上がる。

 剣を構えて、ワールドイーターと向き合う。


「君は一度、我らを受け入れた。その代償に、記憶を失わせてしまったがな」

「あの時は、それが最適だと思ったんだ。でももう少しだけ、待って欲しい」

「ダメだ。君のデータを入れても、結果は変わらなかった。世界は滅びる」


 相良は目線を、シソに送った。


「上位者らしい。五柱神より更に上の神だってさ」

「そんな存在が、なぜ私達を攻撃したの?」

「俺と君に託された力だ。トゥリマル様のね」


 相良の言葉を聞いて、ワールドイーターは『ふむ』と呟く。

 

「君はまだ、完全に記憶を取り戻せていないようだな」

「ああ。失う直前の記憶だけ、取り戻せた」


 直前の記憶で、ワールドイーターになにかされたのは覚えている。

 それが記憶喪失の原因なのかまでは分からない。


「悪いがこれは世界のルールなんだ。君達をリセットする」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ