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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
Episode4 風の騎士編

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第2話 蒼井相良

「ウェ! そんなことになっていたんですか!?」


 アリスに状況を説明された相良は、オーバー両手を上げる。

 アリスがこちらに着て、一カ月以上は経過してる。

 その情報を要約して、全て伝えた。


「でも、アリス師匠と俺が最後に会ったの、二週間前っすよ?」

「世界によって、時間の流れが違います。ここで一年経っても、向こうでは一時間とかありますよ」

「ふぇ~。勉強になります!」


 相良は両腕でガッツポーズをした。

 律儀にメモ帳を取り出して、書きこんでいる。

 彼は決してバカではない。寧ろ覚えては良い方だ。


「それで。お前はフードの人物に連れて来られた以外、何の情報もないのですか?」

「ないです! すんません!」

「何の役にも立たないですが。そこまで堂々と言われると、何も言えませんね」


 弟子と認めていないが、素直さと才能は認める。

 余りにも素直だからか、つい色々教えてしまう。


「それにしても困りましたね。傷は癒えましたが、トビーは体力が消耗しています」


 ダメージを受けた消耗は激しい。

 治癒魔法は傷は癒せても、体力は回復できない。

 結構な距離を飛んでので、歩いて人里まで戻るのは難しい。


 野宿する道具も持っていない。

 地形も分からない土地で、無暗に動き回るのは危険だ。


「ああ。それなら。ここから歩いて、一時間ほどの場所に、街があったはずですよ」


 相良は方角を指した。何の迷いもない動きだ。

 彼は嘘を吐けない性格だ。適当なことは言えない。


「お前、街からわざわざ、荒野まで歩いたのですか?」

「いやいや! 流石の俺も、街で情報を集めますって!」

「ふむ……」


 少し会話に違和感を抱きながらも、アリスは飛竜を背負う。

 街があるなら、怪物の情報も交換できそうだ。


「でも俺達みたいなのが珍しいから。ローブか何かで、顔を隠した方が良いかもですよ」

「フードで顔を隠すのは、怪しくないのですか?」

「ええ! 結構一杯いますから! あ! 俺が背負いますよ!」


 アリスは飛竜は気難しいから、断ろうとした。

 相良は慣れた手つきで、アリスより丁寧に飛竜を背負う。

 アリスよりも手慣れている。まるで体が覚えているかのように。


「それにしても、師匠も空から降って来るんですね!」

「まあ、お前の様に、記憶を失うポカはしませんでしたが」

「それ、俺がクッションになったからじゃないっすか?」


 冗談で誤魔化しているが。相良の記憶喪失は、衝撃が原因ではない。

 医者の話によれば、精神的な事が理由だ。

 無意識に記憶が、特定の情報に蓋をしているらしい。


「いや~、師匠にはこんないい名前つけてもらっちゃって! 世話までされちゃいましたね!」

「青い空から振ってきたから、蒼井相良です。適当ですよ?」

「それでも気にってますよ! この名前!」


 純粋な回答が続く相良は、迷いなく歩いている。

 まるでこの道を、知っているかのような足取りだ。

 方角だけでなく、歩きやすい道も知っている。


「ローブはどこで調達しましょうか……」


 その問題も相良が解決してくれた。

 彼は謎の人物から、ローブを受け取っていたらしい。

 その人物はどこかえへ消えたそうだが。アリスが来た方角だったらしい。


 一時間ほど頑張って歩き。アリス達は街に到着した。

 街と言っても、王都ほど栄えてるわけではない。

 いくつかの露店と、小さな建物が揃っているだけだ。


「人界と比べると、随分と……」


 街の発展が小規模だと思った。

 人界は村タイプの集落でも、もっと大きさがある。

 今いる街は、既には反対側の出口が見えている程度の広さだ。


「人界に比べると、資源が少ないんすよ。だから集落は、洞窟とか天然物が多いです」


 道の端っこを歩く相良。

 恐らく衛兵と思われ士ものが、真ん中を歩いているからだろう。

 これがこの世界の、ルールなのかもしれない。


「そのせいで、奪い合いが絶えない。土地は多筋ですけどね」


 相良は違和感なく、この世界の知識を話す。

 無意識に知識が飛び出しているのだろう。

 医者からもう一つ、重要な事を言われている。


 無理に刺激すれば、脳に負担をかけるかもしれない。

 聞きたい事はあるが、アリスはグッと堪えた。


「で、師匠。まずはどうするんですか?」

「そうですね。まずは半人前にも満たない、ひよっこの師匠発言を訂正しようかと」

「ひよっこ!? 俺達結構、長い付き合いっすよね?」


 確かに相良とは半年近く、交流している。

 でもアリスは一度も、彼を実戦に連れて行かなった。

 即死するだろうと考えていたからだ。


「聞き込みですか? 足を使う事なら、任せてください!」

「いきなり現れた、謎の人物に。答えてくれる人がいますか?」

「……。いませんね」


 こういう場に来た時、アリスはまず通貨の様な交換物を調べる。

 文化を調べていけば、その場所での自然な振る舞いが分かる。

 場所に溶け込めば、警戒心だって消えるものだ。


「余計な接触はしないように。お前はあくまで部外者ですから」

「えぇ……。それ言ったら師匠だって部外者ですよぉ……」


 相良が文句を口にしていると。

 街のどこからか、崩れる様な音が聞こえた。

 振り向くと、建物が崩れている。


 衛兵と思わしき者が数名、倒れている。

 事故ではない。戦闘が起きた時のダメージを負っている。

 一瞬、負っていた怪物が暴れているのかとアリスは身構える。


「ちんけな奴らめ! 和平など、腑抜けたことを言っているからだ!」


 崩れた建物から出てきたのは、三メートルほどの人型の生物だ。

 騎士だった頃、本で読んだことがある。

 暗黒界の住民だ。会話から察するに、身内同士での争いと言うことになる。


 アリスは柄に添えた剣を、下した。

 相良の肩を叩き、耳に顔を近づける。


「離れますよ。目立つのは避けたい」

「え? で、でも……」

「異世界の争いに加担しない方が良い。異なる価値観を、自分達の価値観で歪めないために」


 それは異世界に関わる、マナーの様なものだが。

 相良は納得がいっていない表情をしていた。

 暴れまわる大型の住民。種族名は『ダッティ』だ。


 会話から察するに、ダッティ側は好戦的思想なのだろう。

 街の人々は逃げ回り、衛兵が対処している。


「本部に応援を要請だ!」

「間に合うのか!?」

「何とか持たせる! 出来るだけ早めに頼む!」


 街の衛兵は不利を感じたのか、一人が報告へ向かった。

 たった一人に、街中の衛兵が歯が立たない。

 そこまで大きな戦力差がない、人間とは違う。


 種族によって、戦力差がある世界なのだろう。

 それが当たり前だから、兵士の判断が早い。


「アリス師匠……。俺……」

「耐えなさい。これはこの世界の住民が、解決すべき問題です」


 相良は暴れるダッティを見つめて、動かない。

 彼の性格を熟知しているアリスは、溜息を吐く。

 今度はそっと、彼の肩に手を置いた。


「っと言って、聞くお前ではありませんね。十分に注意しなさい」

「押忍!」

「推すじゃなくて、サムズアップでラジャー!」


 ハッとしながら相良はサムズアップをした。


「ラジャー! これ、何の意味があんすかね?」


 相良はローブで身を包んだまま、戦闘地域に走る。

 剣を抜刀して、戦っている衛兵とダッティを見比べる。

 衛兵は街の被害を抑えながら戦い。ダッティは被害を広げるように暴れる。


「どう見ても……。こっちが敵だよな!」


 相良はダッティへ走り、ドロップキックを食らわせた。

 乱入者に呆気にとられたのか、ダッティは蹴り飛ばされる。

 衛兵達が味方かどうか、判断に迷った素振りを見せる。


 アリスは近くに身を隠して、戦いを観察した。

 相良は誰もが持っている異能力を、何故か使う事が出来ない。

 これも精神的問題かと思ったが。アリスは別の可能性を既に考えていた。


「うおおりやぁ!」


 相良は猪突猛進が似合う走り方で、ダッティに突っ込む。

 アリスは思わず、舌打ちをする。


「ああ……。もう!」


 既に立て直していたダッティが、相良の攻撃を容易く跳ね返す。

 パワーが違い過ぎて、相良は壁に叩きつけられた。


「ブホォ!」


 背中を強打して、相良は壁にねじれ込む。

 衛兵の一人が相良に近づき、手を伸ばして引き抜いた。


「君が誰か後で聞く。味方なんだよな?」

「お、押忍!」

「その言葉の意味は分からないが……。頷いたのは分かった」


 衛兵と隣に立ち、相良はダッティと向かい合った。

 五人掛かりで挑んでも、ダッティに歯が立たない。

 衛兵の動きは悪くない。戦い自体には慣れている。


 だがダッティ側は、熟練者の動きだ。

 その上、基本的なスペックも上だ。


「倒せなくて良い。本隊が到着するまで、被害を最小限に抑えてくれ!」

「あの巨体を相手に、時間稼ぎか! 了解っス!」


 相良は気合を入れ直して、再び走り出した。

 今度は無策ではない。わざと目立つ動きをしている。


「なるほど……」


 アリスは相良の柔軟さに、感心した。

 相良の反対側から、衛兵が走っている。

 言葉を交わした様子はないが、お互い察し合ったらしい。


 確かにコンビネーションで攻撃するのは、有効だろう。

 だが、ダッティは知能が低い種族と言う訳ではない。

 残念ながら、二人の行動は既に読まれているだろう。


「徒党を組んでもその程度か? オラぁ!」


 ダッティは巨体を活かして、足踏みをした。

 僅かに振動した地面により、二人は体勢を崩す。

 飛べば回避できた技だが、相良はまだ経験が浅い。


 怯んだ相良へ、ダッティが容赦ない一撃を加えた。

 致命傷は避けられたが、体に直撃だ。

 彼は再び、壁に叩きつけられた。


「グハァ! 強ぇ!」


 アリスは諦めて、相良を回収しようとした。

 相良が使っている武器は、軍の支給品であるロングソード系。

 元々相良は、ロングソード系の武器に不慣れだ。

 

 記憶を失う前に、武器を使っていたか。

 明らかに体が上手く扱えないようになっている。


「ソラ!」


 アリスが動き出そうとした時。その呼び声が聞こえた。

 その直後、相良の目の前に何かが突き刺さる。

 三日月状のカッタータイプの剣だ。


「これは……」


 相良は咄嗟に、その剣を拾い上げた。

 その直後、彼は苦悩の表情と共に頭を抑える。


「なんだろう? 妙に馴染む……。これなら、戦えそうな気がする!」

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