第21話 市街地攻防戦、最終戦
ネガリアンは巨大ロボで、侵攻する。
真っすぐ宿敵が居るエリアに向かう。
「冬木ユウキ、はよ出てこんか! この街を焦土に変えてしまうぞ!」
右腕の銃から、ネガリアンはビームを発射する。
建物を貫通して、地面に着弾する。
「本当に変えるぞ! 良いのか!?」
進軍しながら街を破壊する、ネガフェイサー。
目当ての人物が現れず、ネガリアンはイライラしていた。
「やむおえない! ネガマキシマキャノンで、吹き飛ばしてくれるわ!」
ネガフェイサーは胸部のハッチが開いた。
中から巨大なキャノンが突き出す。
キャノンはエネルギーをチャージ状態にする。
「本当に撃つぞ! 良いのか!? ダメならダメと言って良いのだぞ!」
「じゃあ、ダメ」
近場で一番高い建物。その屋根に、ユウキが飛び乗った。
ニヤニヤ笑いながら、彼はその余裕を消さない。
「よう、ネガリアン。少しはマシなおもちゃが出てきたじゃないか」
「やっと現れたか! チャージ中断じゃ!」
キャノンのチャージを止めて、胸部に引っ込ませた。
ネガリアンは頭部のコックピットから、ユウキを見つめる。
「今日と言う今日こそ! 貴様をケロケロにしてくれるわ!」
「カエルみたいに鳴けば、満足か? ゲロゲーロ!」
「その口を聞くのも、今日が最後じゃわい!」
ネガリアンは左腕のアームを、建物に叩きつけた。
ユウキは瞬間移動で、攻撃を回避する。
ネガフェイサーの頭部前に出現。剣を振ってコックピットを攻撃する。
斬撃は鈍い音と共に、弾かれた。
ガラスが固く、筋肉が振動する。
「ニャハハ! これが天才三人の科学力じゃ!」
「知識は本物のようだな。他が友達になれない脳みそだけど」
「お前の命もここで終わりじゃ!」
ネガフェイサーは、背中についた砲台からレーザーを発射。
六本のレーザーが、ユウキとは別の角度に向かう。
次の瞬間、レーザー角度を変えてユウキに飛んできた。
瞬間移動しようとするが、超能力が発動しない。
咄嗟に剣で防御するも、地面に叩きつけられた。
「無駄じゃ! このロボ周辺は、異能力を封じる粒子が撒かれている」
「面倒なこと考えるぜ。まったく」
ユウキは地上を滑って、ネガフェイサーから距離を取った。
巨体故に小回りが利かないロボは、ユウキを追いかける事が出来ない。
「目の前に転移できたなら、範囲外の超能力を無効には出来ないってことか……」
ユウキは十分距離を取り、剣を素振りした。
転移剣。プロフェッサーにも使った、斬撃を転送する技を放つ。
ネガリアンの体に、斬撃を転移させた。
「痛ぁ! コラぁ! パイロットのダイレクトアタックは、マナー違反じゃ!」
「そいつは悪かった! 丁度良い的があったからさ」
「誰が的じゃ! お前に的当てをしてやろうか!」
ネガリアンは連続でキャノンを放ってきた。
地面に平行で動くレーザーは、ホーミングしているかのようにユウキに近づく。
回避してもレーザーが曲がる。取れる手段は防御しかない。
ユウキは分身を生成して、盾にした。
漏らしたレーザーは剣で切り裂いて、直撃を防ぐ。
「Hey、ネガリアン。いつになったら、利用されないようになるんだ?」
ユウキはレーザーを防ぎつつ、分身の剣を空中に作る。
分身剣を円形に並べながら、時計回りに動かす。
「お前は雪道玲子に利用されているだけだ。復讐の駒としてな」
ユウキは分身剣を投げとばした。
剣はホイールの様に地面を削りながら、レーザーを切り裂く。
距離を縮めた途端に空中へ飛び出し、ネガフェイサーの右腕に直撃。
ノコギリの要領で、右の関節を削り取っていく。
右腕を真っ二つにして、分身剣は空へ貫通する。
「今回ばかりは利用されても良いわい! 最終目的が同じならな!」
「Watt? お前は、この世界を征服するのが目的じゃなかったのか?」
「な~んにも知らんとは! 所詮は凡人じゃったか!」
ネガフェイサーは右腕の損傷を気にしない。
左腕のアームを動かして、地面に叩きつける。
ユウキは背後飛んで、アームを回避した。
「お前が味方している連中は! いずれワシらの世界を攻めて来るぞ!」
「この世界に次元移動の技術があるとは、思えないけどな」
「なら、あの金髪騎士はなんじゃ?」
痛い所を突かれて、ユウキも言葉に詰まる。
アリスの存在が、ネガリアンの言葉を否定しきれない材料だ。
「迫り来る脅威を先に排除して、何が悪い!?」
「さあ? 支持率でも下がるんじゃない?」
「黙れ! 貴様は侵略者に加担するのか!?」
ユウキは銃に念力を込めた。即座に瞬間移動をする。
ネガフェイサーの左腕に近寄った。
引き金を引いて、溜めたエネルギを衝撃波で放つ。
強い力が前方に発生し、左腕を吹き飛ばした。
範囲外で込めたエネルギーなら、粒子に無効にされない。
「ネガリアン。勘違いすんなよ。これは一時休戦だ」
ユウキはスナッチを使って、ロボの胴体を掴む。
素早く背後に周り、粒子を放出する砲口を切り裂く。
スナッチと斬撃を繰り返して、背後のキャノンと粒子放出を封じた。
「お前らを倒したら、彼らは敵になるさ」
ユウキはネガフェイサーの前方に、瞬間移動した。
サイコガントレットに念力を込めて、ブレイカーの準備をする。
巨大な腕の分身が、込めた力に比例して巨大化する。
「先手必勝は否定しない。けどお前らのやり方が気に入らない。だから先に潰す」
「ふん! ヒーローにあるまじき言葉じゃな!」
ネガリアンは最後の抵抗として、胸部のキャノンを出した。
ユウキの腕と同じように、キャノンにエネルギーを溜める。
「心配すんなって。僕はヒーローじゃないから」
ユウキは右腕を突き出した。ほぼ同時にキャノンが動く。
巨大な青い光線が、肥大化した拳とぶつかり合う。
両者の力はほぼ互角。時間が経てば双方の力が弱まる。
「僕は……。世界のことなんて、どうでも良い」
先ほどの余裕がある、軽口の口調が消えた。
明るさがありながら。どこか闇を感じさせる声色だ。
たった一言だったが。ネガリアンはユウキの雰囲気が変わった気がした。
「僕が守りたいのは、周囲の人だ。世界を守る気なんてない」
完全に凍結した声と共に、ブレイカーの威力が上がった。
光線を押し返し、拳がキャノンンを貫通する。
チャージしていたエネルギーが暴走し、ロボから爆発が起きる。
「その中には"彼女"も含まれている」
ユウキは素早く瞬間移動して、コックピット前に。
右腕でコックピットを掴み、腕を引く。
操作不能になったネガリアンに、抵抗する力はない。
コックピットを引きちぎられ、地面に叩きつけられた。
次々煙を上げるネガフェイサーへ、ユウキは右腕を伸ばす。
再びブレイカーを使って、巨大なロボを掴んだ。
「その為にも、アイツを潰してやるさ」
ユウキはネガフェイサーを、上空へ投げ飛ばした。
空中に向かったロボを、念力で押しつぶす。
その光景を見ていたネガリアンは、恐怖心を抱いた。
ユウキは表情こそ今までと同じ、余裕を持った笑みだ。
言葉遣いもあまり変わらない。だが言い方だ。
余りにも冷たい。どこか残酷さを感じる。
「ノウシスとの約束、守れそうにないな」
ユウキは膝をついて、拳を握った。
地面を殴りつけて、クレーターを作る。
「僕、アイツの事許せなくなっちゃったよ」
***
「ネガリアンもあの人も……。失敗したようね」
サムライ団の本拠地。モニターで戦いを観察していた玲子。
自分達の最強戦力である、娘が敗れた。
流石の玲子も、これは想定外だった。
都合の悪い想定外だったが、どこかホッとした。
そんな自分に気づいて、少し苛立つ。
「吹雪と玲奈は、強い繋がりで結ばれていたのね……」
残った戦力は自分だけだ。王都襲撃は失敗したうえ、損害も大きい。
それでも玲子は、戦いを止めない。
「娘の為に、息子に憎まれる気持ちはいかがかしら?」
背後から聞こえた声。玲子は咄嗟に銃を構えた。
振り返ると、空間を移動する渦が出現している。
この世界でも高位に位置する、空間移動魔法だ。
良く知った顔。かつて愛した少女の姿が、渦から現れる。
玲子は強い憎悪を込めて、少女を睨んだ。
「アルリズ……! 何故ここが分かった?」
「地上で私に関し出来ない場所はない。なら貴方達が見えないのは?」
教皇アルリズは窓から見える風景を指す。
「答えは簡単。地上に居ないからよ」
サムライ団の本拠地。それはスペースコロニーだった。
地上を監視できるノウシスも、宇宙までは管轄外。
それを見越して、玲子とネガリアンが共同で作ったものだ。
「まあ答えを教えてくれたのは、彼だけどね」
アルリズはモニターを見つめる。
そこにはネガリアンを倒した直後の、ユウキが映っている。
「決戦前。彼は貴方達の位置を薄々予測していた」
「それをカンニングしたのか。相変らず、セコイな」
「世界を動かすには、綺麗ごとだけじゃダメなのよ」
アルリズは敵地に一人で来たのに、余裕だ。
彼女を殺すことは、娘を殺すことになる。
だがこの後に及んで、そんな人質は玲子に通じない。
銃を構えて仇敵を始末しようとする。
そんな彼女に、アルリズは写真を投げた。
「ちょっとマズい事になって。貴方の元夫のせいで」
「ふん。敵同士を争わせて、疲労した双方を始末する予定だったのだろ?」
「そう言うの漁夫の利って言うらしいわね。彼女の記憶にあったわ」
アルリズは自分の頭を人差し指で突く。
日本語特有の言い回しを知っているのは、理由がある。
「手を貸してくれないかしら? 先にお互いのイレギュラーから排除しない?」
「私が応じるとでも?」
「勿論、それ相応の代価は払うわよ? 例えば、この体を返すとか?」
玲子は体を震わせた。そのせいで狙いが定まらない。
確かにリサを取り戻すことは、彼女の本望だ。
それでも彼女には、その取引に迷う理由があった。
「じゃあ、もう一つ条件。これでどう?」
教皇アルリズの投げた写真には、五人の少年少女が写っている。
そこには幼き頃の玲子の娘、リサの姿と……。
仲良く遊ぶ若き日の冬木ユウキ達の姿があった。




