第13話 上級騎士 アリス
タイトルとあらすじを変えてみました。
ダッセェっと思っているでしょ? 僕もそう思います!
「知らないねぇ……。なら退いてくれる? こっちには戦う理由がないんだぜ」
ユウキは剣を鞘に納めた。
ノウシスから何度も、聖騎士とは戦わないで欲しいと言われた。
命令ではなくお願いだ。頼まれると、叶えてあげたい気持ちになる。
だからサブには攻撃しなかった。
目の前の少女も、戦わずに済むならそうしたい。
個人的な感情を抜くとしたら、それが本心だ。
「異界人は全員捕らえよと命令です。善悪を問わずにね」
アリスと名乗った少女は、あくまで臨戦態勢だ。
だろうなと思いつつも、ユウキは溜息を吐いた。
「アンタも石頭かよ。大工に売り飛ばしてやろうか?」
「猊下の命令は絶対です。そのお言葉を疑う事すら許されない」
「大した忠誠心で。でもそれって。思考を放棄しているだけに見えるけどね」
ユウキはチラリと、窓の方を見た。
この階にはまだ、外に繋がる窓がある。
だがもう上の階に、窓は存在しない。
上階に向かいたいユウキは、もう内部を進むしかない。
下手に外に出れば、またサブに見つかることもあり得る。
「まあ、知らない人よりは潰しやすい顔だな。それに……」
ユウキはニヤリと笑いながら、目を瞑った。
顔だけでなく名前まで一緒。偶然とは思えない。
疑惑を確信に変える方法ならある。静かに剣へ手を添える。
「前からその顔。ぶっ飛ばしたいとは思っていたんだ。口うるさいし」
「お前、何を聞いていたのです? 私はお前のことなど……」
「ドッペルゲンガーかもしれないよ? そんな言葉あればだけど」
ユウキは剣を鞘から引き抜いた。
もしも、目の前のアリスが、記憶の失った姉なら。
戦ってみれば分かるはずだ。姉には体に染みついた戦い方がある。
「Are you ready? It's showtime!」
ユウキは剣を振り、斬撃波を飛ばす。
青く光る三日月の光を、アリスは冷静に見つめている。
彼女は軽く剣を振って、斬撃波を粉砕した。
「異界人は妙な言葉を使うのですね。それに技も興味深い」
「僕からしたら、日本語で喋るアンタらの方が奇妙だけどな!」
通用しないのは予想が出来た。ユウキは即座にバスターを放つ。
剣を振った直後なら、まだ構えに入れないはず。
でももし彼女がそうならば……。
「はあ!」
アリスは構えを取らず、そのままバスターに突進した。
即座に剣を突き出して、光弾を貫通する。
更に速度を上昇させて、ユウキに近づく。
「思った通りだけど、想定外に動いて欲しかったぜ!」
ユウキは突き攻撃を、剣で防御する。
防がれたと判断するや、アリスは無理に押し込もうとせず。
剣を下側に回して、上方向に振り回した。
ユウキを空中に吹き飛ばし、自身もジャンプする。
この行動も、ユウキは予測できた。
だから次の攻撃も分かる。これで自分の考えに確信がえられる。
「兜割りだろうな」
剣を振り下ろす際、落下の時の重力を加算する斬撃。
師である父、冬木光夜から教わった技の一つだ。
突き攻撃で相手に近づき、技と防御させて鈍らせる。
敵を空中に吹き飛ばし、自由を封じた後、兜割りで追撃。
これは冬木アリスが最も基本としていた連撃だ。
「セェイヤー!」
アリスは想定通り、兜割りを行った。
掛け声もその時の声色も同じ。これで決定だ。
今戦っている騎士の少女、アリスは自分が知っているアリスそのものだ。
「頭のネジを閉められたのかね?」
情報を得られたユウキは、もう攻撃を受ける理由がない。
剣を振り下ろしながら近づくアリスに、念力を使う。
本来なら人を持ち上げるのは難しいが、空中の相手は逆に持ちやすい。
ユウキの能力を知っている本来のアリスは、この基本戦術を彼に使ったことはない。
今戦っているアリスは、ふざけているのではない。
本当に自分に対する記憶がないのだ。
「くっ……。体が動かない……。お前、一体何を?」
「嬉しいね! やっと姉ちゃんに勝てる日が来たかもな!」
アリスを空中で吹き飛ばし、壁に叩きつける。
着地したユウキは、彼女が持ち直す前に銃に持ち替えた。
この世界に存在しない武器なら、十分意表を突ける。
サイコガンは本来念力波を、一点集中で出す技だ。
それ故連射が出来ない。でもここは一気に攻めたい。
この銃はベースがあるので、弾丸を込める場所がある。
「こんな締まらない場所で披露したくなかったけど、やるか!」
ユウキは銃の内部に、分身の弾丸を生成した。
殺傷能力はないが、銃の勢いでダメージは期待できる。
八発ほど弾丸を込めて、立ち上がろうとするアリスに一気に放つ。
銃声音と共に、分身弾丸が発射される。
アリスは銃の存在を知らないためか、呆気に取られて足元に被弾。
膝をついて、被弾箇所を抑える。
「悪いな、デートの約束があるんだ。君に構っている暇はない」
もう情報は得た。アリスの記憶に何があったのか、探る必要がある。
戦う理由がなくなったユウキは、再びネガリアン追跡を行う。
足を怪我したのだから、もう動けないだろうと油断していた。
「残念ですが、デートはドタキャンです。壮大に失恋しなさい」
足を抑えるアリスの手元が、光出した。
嫌な予感交じりに見守ると、被弾した怪我が塞がる。
「異界には治癒術が。いえ、術自体がないようですね」
「Oh my god……。一本返されたぜ!」
傷を癒したアリスは、普通に立ち上がった。
体力は回復していないのだろうが、そこまでダメージを与えていない。
――さて、どうしたものか……。
ノウシスの頼み。姉への思い。記憶を取り戻す方法が分からない現状。
戦いを躊躇させるものばかり、ユウキの背中に集まる。
そんな重責を外に出さず、ユウキはニヤリと笑って構えた。
「OK! Partyがお望みなら、御開きまで遊んでやるぜ!」
「先ほどから思っていましたが……。喋れば喋るほど、喉を切り裂きたくなりますね!」
「あ~。前に似たような事言われたぜ……」
アリスは口を開きながら、手を突き出した。
術式とやらを唱えているのだろうが、聞き取れない。
――すっかりこの世界に馴染んでいやがるな……。
胸の奥で走る何かを無視して、ユウキも剣を構える。
まだ本来の姉にも見せていない、新技がある。
術を放つ瞬間に、この技で蹴りをつけようとした。
「……。ぶつぶつ……。ぶつぶつぶつ……」
かろうじで聞き取れた単語が、それだった。
「あれ? もしかして術式唱えているんじゃなくて。ぶつぶつ言っているだけ?」
「ええ。何を盛大に構えているのだろうと、笑いを堪えていましたよ」
「ああ、そう。隠し事に挑発は有効だよな!」
ユウキはバク転をして、その場から離れた。
その直後、床が爆発する。ずっと前に唱えられた術が発動したのだ。
アリスは唱え終わったのを悟られない様に、ぶつぶつと誤魔化していた。
「発動時間の誤魔化しか。Coolじゃないか!」
「術も知らないお前に、回避されるとは思いませんでしたがね」
「そこはほら。経験の差だよ」
ユウキは厄介な相手だと、げんなりする。
強さは元々のアリスと、ほとんど変わらない。
ムカつく戦術も、剣のキレも、自分より力強い攻撃も。
唯一違う点があるとしたら、勝利への貪欲さだろう。
冬木アリスは勝つために手段を選ばない。
今のアリスは騎士らしい、綺麗な戦い方をしている。
「不意を突かなきゃ、攻撃が通んないな。こりゃ」
恐らく銃弾はもう、アリスに通用しない。
彼女が知らない技を使わなければ、通らない。
戦術的思考はあちらが上だ。心理戦だと負ける。
「蒼がもう一つ、コイツの技を説明していたな」
ブレイカー。ユウキの発想力次第で使えると聞いた。
正直技名だけでは、全く分からないが彼女を信じるしかない。
バスターはプライム戦で、活躍した。今度はブレイカーに賭けるしかない。
「頼むぜ、蒼。これでふざけた技なら、ぶっ飛ばすからな」
ユウキはサイコガントレットのレバーを引いた。
念力のエネルギーを、ガントレットにチャージ。
本来ならバスターとして、光線に変換されるエネルギーが別のものに変換される。
手の分身だ。でも普通に出す分身とは違う。
尚且つ悪魔の手の様に、鋭い爪がある。
力を込めるほど、現れた手が巨大化する。
「こういう技か……。気に入ったぜ!」
分身の手は、ユウキの手と動きが連動する。
まだガントレットと重なっている状態だ。
アリスには右腕が光始めたとしか、見えていないだろう。
「何か企んでいますね?」
「愚問だね! 戦闘中に企むのは当たり前だろ?」
「ユウキは考えなしに突っ込みますがね」
その顔で、その声で、"ユウキ"と名前を出さないで欲しい。
プライムの事だと分かりつつも、複雑さを隠せない。
「行くぜ。姉ちゃ……。アリスさんよ!」
ユウキはローラースケートで、滑り出した。
アリスと距離を縮めて、ブレイカーの一撃を叩きこむ。
倒す必要はない。動きを止められれば良いのだ。
「お前の思い通りにはさせない!」
「何をするか分からないのに、僕は止められねえぞ!」
アリスも剣を構えて、走り出した。
互いに向かって走り出し、接近して決定打を叩きこもうとする。
あと少し……。お互いが、一撃を放とうと決意した瞬間。
突如、壁が崩れ始めた。二人の間に、煙が発生。
土煙が目に入りかけたので、思わず二人共目を瞑った。
「Way、Way。何ごとだよ?」
煙が消えて、壁を壊したものの正体が現れた。
左右にドリルが着いた、丸い形の飛行型ロボットだ。
上部にカプセル状のコックピットがあり。内部で見知った顔が操縦している。」
「ニャーハハハ! 驚いたか! 我が永遠の宿敵、冬木ユウキよ!」
「ネガリアン。目的を思い出させてくれて、Thank you!」
巨大ロボットに乗っていたのは、Dr.ネガリアン。
ユウキが本来追っていた、倒すべき相手だ。
「目的を達したから、帰ろうと思ったが。お前が来たと聞いて、下りてきたぞ!」
「そのポンコツを僕に見せたかったのか? 夏休みの工作以下だぜ!」
「ロボットはデザインより。機能性とコストじゃ!」
ロボットの左右についた、ドリルが赤く光る。
ネガリアンはドリルを、アリスに向けた。
「ネガドリラー! 熱線ドリル発射じゃ!」
ロボット。ネガドリラーのドリルから赤い光線が放たれた。
状況の変化と、ロボットと言う存在に呆気に取られたのか。
アリスは回避も防御も間に合わず、光線に直撃。
「ひゃあああああ!」
アリスはそのまま吹き飛ばされる。
ネガドリラーが壊した穴から、外に放り出された。
「あ~あ、落ちちゃったよ。アイツ」
ユウキはやれやれと首を振りながら、外に飛び降りた。
~ユウキのスーパーナビ~
ユウキ「ここからは、僕と一緒に舞台やキャラについて勉強だ!」
蒼「今日はどんな情報?」
ユウキ「今回紹介するのは、この情報だ!」
『冬木アリス』
ユウキ「身長一六〇センチ。体重四九キロ。僕の姉にて軍に所属する、冬木家の長女だ」
蒼「単純な戦闘力やユウ以上。更に知略や敵に容赦ない決断力が強みよ。生物や無機物にエネルギーを当たる異能力を持っているみたいね」
ユウキ「ここだけの話だけど、あの人に悲しい過去なんてないからね」
蒼「まるでアンタにはあるみたいな良いかね」
ユウキ「その話は別の機会に!」
ユウキ&蒼「次回も、宜しくー!」




