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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
草月蒼編

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第5話 友達じゃなくて……

 一度だけ、青い鳥を見たことがある。

 幸せを呼ぶとおとぎ話で言われている鳥だ。

 種族も名前も分からない。でもその鳥がそうだと、蒼は感じていた。


 両親や周囲にそのことを話したら、信じてもらえなかった。

 中にはバカにする者も居た。

 蒼はムキになり、もう一度鳥を探して写真を撮ろうと考えた。


 子供が近づいちゃダメと言う、森に一人で入り込もうとした事がある。

 迷子になったら二度と出られないかもしれない。

 不安に思う蒼に、背後から話しかける少年が居た。


「よお! 見たら幸せになれる鳥を探しに行くんだろ? 僕も混ぜてくれ!」


 ユウキがニヤリとしながら、虫取り網を構えていた。


「鳥と虫は違う種族だよ?」

「でも同じように飛ぶだろ?」

「全然違う」


 ユウキが心の底から、自分を信じていたか分からない。

 ただ危険だから、ついてきてくれた可能性もある。

 それでも蒼は内心嬉しかった。


 

「ねえ。本気でそんな鳥、居ると思う?」


 それでも不安に思った蒼は、彼に来てみた。

 するとユウキは優しく微笑み。


「見てないから知らない。でも君が見たんだったら、信じるよ」


 その言葉は、今でも心に残っている。

 結局日が暮れるまで探しても、鳥は見つからなかった。

 そのうえ二人はすっかり道に迷った。


 夜になって大人が見つけてくれて、帰る事が出来た。

 二人共こっぴどく怒られた。

 蒼は申し訳なく思い、次の日に謝ろうとした。


「別に誰も君を責めたりしていないさ。君以外はね」


 ユウキはいつものように笑って、気にしていなかった。

 それでも信じてくれたお礼をしたかった。

 だから蒼は持てる知識を全て使って。彼の靴を作った。


 ユウキも靴をすっかり気にって、今でも履いている。

 足の大きさが変わる度に、ベースとなる者は変えてあげた。

 この時から蒼にとってユウキはただのクラスメートではなくなった。


 それから何年も経って、二人は中学生になった。

 数カ月前、ある犯罪組織が学校に爆弾を仕掛けた。

 軍に身代金をもらうため、生徒達を人質にとったのだ。


「私、爆弾解除してくる!」


 蒼は周囲が止めるのを聞かず、爆弾が仕掛けられた場所に向かった。

 学校の入り口はロックされている。避難が出来ない。

 爆発を阻止すれば、犯罪組織の目論見は外れる。


 解体の自信はあった。蒼は機械いじりのことなら、お手の物だった。

 幸い爆弾は、連鎖爆破を狙って簡易なものが複数仕掛けられただけだった。

 彼女はやすやすと解体を続けて、最後の一個になった。


 だが蒼は最後の一個の解除に、失敗をした。

 犯人グループに気づかれ、遠隔で爆破操作を行われたのだ。

 更に自身は反応が遅れ、爆発に巻き込まれるところだった。


「こっちだ! 早く逃げろ!」


 蒼は駆け付けたユウキに引っ張られて、爆弾から離されて。

 直ぐに爆発が起きるが、ユウキが盾になってくれた。

 更に爆風で吹き飛ばされながらも、体を動かしてクッションになる。


 ユウキは重症を負うが、一命を取り留めた。

 彼女の勝手な行動を、当然大人たちは咎めた。

 その一方で爆弾を解除しておかげで、犯人達の計画阻止に貢献した。


 だから周囲は必要以上に彼女を責めなかったが。

 それでも蒼の心は晴れない。


「私にとって貴方は友達じゃなくて……」


***


 蒼は瓦礫の傍で、目が覚めた。

 体が重たい。重力は元に戻っているようだが。

 幸い落下するまでそのままだったようだ。体に怪我はない。


「なんだか、懐かしい夢を見たな……」


 瓦礫を払いながら、蒼は立ち上がった。

 夢の中の自分は、随分素直だった。

 いつもいつも、ユウキには助けられてばかりだ。


 今回もどこかで、助けてくれる事を期待していた。

 でも彼だって、いつも傍にいてくれるわけではない。


「これからどうしよう……」


 蒼は不安になった。ユウキと逸れたうえ、浮遊遺跡も粉砕された。

 自分だけでリアクターを追うにも、障害があり過ぎる。

 周囲を見渡すが、アリスの姿はない。


 どうやら彼女は蒼と違って、無事に着地したようだ。

 蒼の持つリアクターには、気づかなかったようだ。

 そのまま立ち去ってくれて助かった。


「リアクターか……」


 浮遊遺跡にリアクターがあった。

 遺跡の浮遊とリアクターに、何か関係があるのかも。

 もしそうなら、蒼が開発中の機械を完成させることができる。


 蒼は空を見上げた。すっかり日が沈んでいる。

 月や星空を、ネガリアンの移動戦艦が隠している。

 もし彼の手にリアクターが集まったら、本当に世界征服されそうだ。


「放っておいても、軍が何とかしてくれると思うけど……」


 一層リアクターも両親に返却して、全てを軍に投げ出したい気分だ。

 でもユウキなら、途中で放り投げたりしないだろう。

 あの戦艦を見たなら、何とかしようとするはずだ。


「今出来ることを精一杯やる。そうだよね?」


 蒼は決意を固めて、電車にの乗り込んだ。

 自分の工房に戻り、奥の機械のシートを外す。

 奥から翼のある、青い車に近い乗り物が現れる。


「理論上はブレーキ以外は万全。でもリアクターがあれば……」


 蒼は作業着に着替えて、改造を始めた。

 設計上はほとんど完成している。

 蒼が趣味で作った、何の役にも立たない機械。


 昔見た青い鳥にも一度会いたくて。

 空を飛ぶことを夢見て作った、限界を超える飛行機体。


「ブルーバード……。私に力を貸して」


 蒼は願いを込めて、機械にその名前を付けた。

 徹夜で作業を続けて、リアクターからエネルギーを受け取る様に改造。

 膨大なエネルギーもあるが、蒼の推測が正しければ……。


 日付が変わるまで、蒼は作業を続けた。

 完成に辿り着き、試運転を開始する。

 地面にピッタリついていた機体が、浮遊を開始する。


「やっぱり。子のリアクターには反重力を作る機能があるんだ」


 それだけではない。Gを軽減する力もある。

 これなら速度を上げても、蒼が気絶することはない。

 

「予測の最高時速は二キロ。これなら、ネガリアンも妨害出来ない」


 蒼はブルーバードに乗り込み、ハンドルを握る。

 飛行機が離陸するには、速度と距離が必要だ。

 だが重力を利用するブルーバードにそんなもの必要ない。


 車庫だった工房から出るなり、ブルーバードは一気に高度を上げた。

 都会の空を駆けながら、巨大戦艦に近づく。


「あ……。ユウ!」


 どういう訳か、高速ビルの屋上でユウキの姿を見つけた。

 蒼は一旦ビルに向かい、コックピットを開く。


「蒼! 無事だったのか!」

「うん! 雪道君の容態は?」

「病院から消えちまったから、探していたところだ」


 その流れでなんで高速ビルに居るのか、不思議だが。

 蒼はコックピットに乗り込むよう、指で指示を飛ばした。


「ユウ、あの戦艦を目指すよ」

「OK! そうだ。レーダーでリアクターの反応を見てみろよ」


 蒼は言われた通り、レーダーを覗き込んだ。

 すると戦艦の位置に、他の六つが集まっている。


「どういう事? 殆どネガリアンに?」

「違う。みんな、あの戦艦に集まっているんだ」

「みんな?」

「吹雪に、姉ちゃん。エックスとかさ」

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