第5話 脱獄
蒼以外、デザインを変えています。これは出力出来なかったのではなく、以前のデザインは時間がなく妥協したもののためです。今回は妥協なく頑張りました。
蒼はネガリアンの置き土産、ネガガチャポンと向き合っていた。
見た目こそ大きいが、本当にガチャガチャだ。
カプセルをシャッフルしながら、体は微動だにしない。
「もう駄菓子屋でもみないよ。この古いタイプのデザイン」
蒼が呆れながら銃を向けると。
先ほどまで静止していたネガガチャポンが左右に揺れ出した。
「誰が古いデザインだ、コラァ!」
「フェ!? しゃ、喋った!?」
ネガガチャポンから、野太い男性の声が聞こえた。
どうやら自立型制御なだけでなく、意志を持つようだ。
チンピラの様な口調で、蒼を威嚇する。
「ワシだって、ドクロ頭のカニ味噌より! レオナルドのデザインが良かったわ!」
「じ、自分の主を随分悪く言うんだね……」
「下手に下手と言って何が悪い? 小娘が、ワシを舐めると痛い目見るぞコラァ!」
ネガガチャポンの声を共に、機械の作動音が聞こえた。
いつの間にか天井に装着されたクレーンが、動いている。
大きなコインを持って、そのままガチャポンの投入口へ入れる。
「本当にコイン入れないといけないんだ……」
ネガガチャポンの排出口から、大きなカプセルが出てきた。
ガチャポンは再び体を震わせて、中身をシャッフルする。
「今回の攻撃はこれじゃあ! ワシにも分からんが、行けぇ!」
「しかも攻撃は、ランダムで決まるんだ!? まさにガチャポン!」
カプセルが開き、天井に何かが放たれた。
蒼が目線で追うと、それは丸いシールだった。
ミサイルの絵が描かれており、一回転すると煙となって消える。
直後にネガガチャポンの背中らから、ミサイルが発射される。
八本のミサイルが、蒼に照準を合わせた。
蒼は背中から盾を取り出して、ミサイルを防御する。
「それ、ガチャガチャの意味ある?」
「運転じゃあ! ワシは常に予測不可能!」
「運を天に任せるを、略さないでよ……」
ミサイルを防いだ盾が、青く光る。
蒼の能力である、エネルギー吸収が発動したのだ。
最近はこの能力をキャッチ。エネルギーを放つ方をリリースと呼ぶことにした。
蒼はエネルギーを光線に変えて放つ。
ネガガチャポンは動けないので、良い的だ。
その一撃を受けても、ネガガチャポンには傷一つ入らない。
「意外と頑丈なんだね……」
「ワシはダイヤモンドの五九%堅い素材で出来ておるぞ!」
「そこに拘るのに、どうして無駄な機能を付けたんだろう?」
再びコインが、クレーンによって運ばれる。
蒼はクレーンに銃弾を放つ。
クレーンが開いて、コインを落とした。
「貴様、何をしている!?」
「なにって。コインがなきゃ、攻撃できないでしょ?」
ネガガチャポンはカプセルを出さないと、攻撃出来ない。
コインがないと、ガチャガチャすることすらできないのだ。
「夢すら詰め込めない、空っぽ頭め! 何故こんな欠陥機能にしたんだ!」
「それは同感だけど、創造主に対して酷いね……」
「みんな社会が悪い! 大人が悪い! 政治家が……」
ネガガチャポンは足がないのに、地団太踏んだ。
その揺れによって、排出口に何かが落ちる。
音がした直後、ネガガチャポンの内部で爆発音が聞こえた。
「ぎゃああ! 内部破損! はっ!」
ネガガチャポンは何かに気づいた声を出す。
色々察した蒼は、思わず汗をかいて冷ややかな目線を向ける。
「ワシ、ガチャガチャせんでも攻撃できるやん!」
「えぇ……。それは流石にコンセプト崩壊じゃない?」
「やかましい! 世の中結果が全てだ! 勝てば良いんだ! 勝てば!」
ネガガチャポンは、体勢を整えた。
もっともどっちが前で、どっちが後ろか分からないが。
「フィーバータイムじゃ! ラッキー、ラッキー、ブッキー!」
「それはスロットだよ」
ネガガチャポンは蒼の言葉をスルーして、ルールを無視した。
背中からミサイルを出し、排出口から爆弾を吐き出す。
更にレバーから光線を放ち、頭部?から火炎放射を出す。
「ワッショイ! ワッショイ! ワッショワッショワッショイ!」
「はぁ……。うざい」
蒼は同時に発射された攻撃を、盾で防ぐ。
ミサイルや爆弾の煙が、蒼の体を包み込む。
火炎放射と光線が同時に飛んできて、両側の盾に当たる。
「生意気な小娘が! ワシの力を思い知ったかぁ!」
勝ち誇った声を上げる、ネガガチャポン。
煙でこちらの様子が見えないのだろう。
蒼は溜息を吐きながら、キャッチの出力を最大にする。
「残念。私の盾は硬度も融点も高いの」
盾が周囲の煙さえも、エネルギーに変換した。
蒼が無傷な姿だったため、ネガガチャポンはイライラしている。
「チィ! しつこい! 本当にしつこいな!」
「舌がないのに、舌打ちできるんだ」
「やかましい! いい加減に……。はっ!」
イライラして左右に揺れたガチャポンは、気が付いた。
「ワシ、動けるやん……」
蒼は呆れを通り越して、言葉も表情も失った。
気づいているのに、ネガガチャポンは彼女の様子を無視する。
そのまま地面から体を浮かせて、空中で回転を始めた。
「くらえ! 必殺、ソロタイフーン! ライフのベルト!」
「もはやガチャガチャ関係ないし……。あと!」
蒼は盾を構えて、突撃するネガガチャポンに向けた。
先ほどよりも、一層激しい光を盾は放つ。
「名作を汚さない!」
蒼の盾から、強力な青い光線が放たれる。
「馬鹿め! その攻撃は通用せぬわ!」
光線を気にせず、ネガガチャポンは突撃を続ける。
青い光線は回転する胴体を貫通。そのまま爆発した。
胴体を破壊されたネガガチャポンは、頭部だけが地面に転がる。
「ば、バカな!? 何故……」
「フィーバータイムのおかげで、必要なエネルギーがすぐ溜まったわ」
「しまったぁ! おのれ! かくなる上は……」
ネガガチャポンは転がり、窓の傍に向かった。
そのまま窓を突き破って、外に飛び出す。
「戦術的撤退!」
ガチャポンは窓から外に落下した。
「ぎゃあああ!」
悲鳴と共に割れる音が聞こえてきたが、蒼は無視した。
溜息を吐きながら、次の階に続く階段を探す。
「無駄過ぎる時間を使っちゃったなぁ。早くユウを探さないと……」
周囲の騎士は、まだロボットと戦っている。
少々気が引けるが、この混乱はチャンスでもある。
ユウキを助けた後、追手をまける可能性が高まるのだ。
「地下牢の囚人が脱獄した! お前ら、なんとかしろ!」
上の階から下りてきた兵士が、慌てて指示を出す。
「無理だ! こっちだって、体一杯なんだ!」
「クソ……。上も同じだ。ドクロ頭はともかく、あの黒騎士と頭目が強すぎる……!」
指示を出しに来た兵士は、慌てて上階に戻った。
どうやら上の階でも、まだ戦いが続いているようだ。
「地下かぁ。そっちは盲点だったな」
蒼は『ごめんね』と呟き、下の階に戻った。
恐らく脱獄した囚人はユウキの事だろう。
出来るのもやるのも、彼くらいしかいない。
「そう言えば今、黒騎士って……」
気になるワードがあったが、ユウキとの合流を優先させる。
来た道を戻り、更に下の階に向かった。
外から分からないので、地下牢がどのくらい下にあるのか分からない。
地下は薄暗い。青い炎のロウソクで照らされているのみだ。
それが不気味さを出しているうえ、通路がやたら狭かった。
蒼がしばらく進むと、反対側から足音が聞こえる。
「ユウ! やっと見つけた」
「蒼!? どうしてここに?」
薄暗い中から、ユウキが姿を現している。
いつもの格好と違い、青いコートを着ている。
服も没収されたらしい。村で得た情報は本当だったようだ。
「助けに来たんだよ! 監視カメラに映っていたから」
「情けない所見せたな。でもタダで捕らわれたわけじゃないぜ」
ユウキは懐から、本を取り出した。
「なにそれ?」
「牢獄の中にあった。神器の事が詳しく書かれていたぜ」
蒼はユウキから、神器について聞いた。
ゴミガと名乗る騎士が、操っていた特殊な武器の事。
黒騎士も似た気配の武器を使っていた事。
「なんで牢屋に、こんなものが?」
「それは後で説明するよ。とにかく今は、太陽光を浴びたいぜ」
「あ、そうだね。チャンスは今だと思う」
蒼の方も、上階で起きている出来事を説明する。
ネガリアンが懲りずに、世界征服をしていることを。
そして黒騎士と言うワードを聞いたことを。
「なるほど。見張りが少ないと思った」
「あの騎士、ネガリアンの仲間なのかな? それなら色々説明着くけど」
「ドクロ頭に、制御できるようには見えなかったな」
二人は階段を駆けあがりながら、情報を交換した。
ネガリアンを放っておけないが、今は安全の確保が先だ。
一階に戻り、出入り口に向かう。
玄関フロアは悲惨な状況だった。
何人もの騎士と、ロボの残骸が倒れている。
その光景に目が行き、蒼は出入口に立つ騎士への反応が遅れた。
「わあ! 誰!?」
白い鎧を着ている少年。青白い短髪で、氷を想像する水色の瞳。
白いマントを身に着け、青く光る剣を地面に突き刺している。
剣が刺さった地面が、凍結していた。部屋の温度も下がっている気がする。
「本当に来やがったか! アリス様の指示を真面目に聞いて良かったぜ!」
騎士は青い剣を引き抜いた。
少年騎士の周りに、氷の破片が飛び散る。
「お前の脱獄を想定して、唯一の脱出経路を見張っていろって言われたぜ!」
「へえ。脱獄を想定するなら、脱獄されない様、見張るべきだったな!」
「へへ! 聞いた通り、根性の座った奴だ! 燃えてきたぜぇ! チェストォ!」
発現とは裏腹に、少年の周囲に冷気が発生。
蒼は少年の剣から独特の気配を感じた。恐らく神器だ。
自分達より年下に見えるが、彼は上級騎士なのだろう。
「俺はノウシス教団教皇直属兵! 聖騎士団対巨人族特殊飛行隊副隊長! ユウキ・プライムだ!」
「良い名前だな。格好良いぜ!」
「人界の安寧のため! お前をここで倒す!」
~ユウキのスーパーナビ~
ユウキ「ここからは、僕と一緒に舞台やキャラについて勉強だ!」
蒼「今日はどんな情報?」
ユウキ「今回紹介するのは、この情報だ!」
『Dr.ネガリアン』
ユウキ「身長一七五センチ、体重六十キロ。何度も世界征服をした、悪の科学者だ」
蒼「マヌケだけど、天才を自称するだけあって、その科学力は侮れないわ。戦闘力はないけど、機械工学だけでなく、生物学にも詳しいみたいね」
ユウキ「これで三度目だぜ。本当に懲りないよなぁ」
蒼「諦めの悪さなら、ユウも同じでしょ?」
ユウキ「それ、悪口だよね?」
ユウキ&蒼「次回も、宜しく~!」




