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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
Episode2 スペース編

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第14話 影を操るもの

 アリスと力は互いに、向き合っていた。

 力の能力は分かった。後はそれに対応するだけ。

 アリスは剣を構えたまま、相手の出方を待つ。


「いつまで棒立ちだ? 攻めなければ勝てぬぞ」

「隙を伺う事を知らない様で。私は敵を観察して、攻めるタイプなのですよ」

「なら私から、遠慮なくいくぞ」


 力は異能力を発動した。アリスの背後に影が現れる。

 アリスそっくりな影は、剣を振り下ろした。

 彼女は咄嗟に横に飛んで、剣を回避しようとする。


 影は彼女に追従するように、不自然に横に飛んだ。

 アリスは舌打ちしながら、剣で攻撃を防ぐ。


「影は人に付きまとうもの。お前達に逃げ場などない」


 力はバズーカに持ち替えた。


「まずいぞ! あの体勢じゃ、避けられない!」

「解説していないで、助けろ。壁」

「はい。盾よりワンランク下がった様な気がするなぁ」


 急に声にドスを聞かせたアリスに、吹雪は恐怖した。

 渋々氷の壁を生成して、バズーカの砲撃を防ごうとする。


「なら先に、壁から排除しよう」


 力は砲口を変えて、吹雪に狙いを定める。

 まだ発射前だったので、クールタイムはない。

 すぐさま発射されて、弾が吹雪に近づく。


 先ほどのダメージから、吹雪はまだ立ち直っていない。

 今度は自分が回避できない状況に追い込まれた。


「世話の焼ける壁ですね」


 アリスは剣で防御したまま、平行移動した。

 吹雪と弾丸の間に入る。

 弾が衝突する直前に、剣の滑らせて、影と位置を交代。


 影が盾代わりとなって、弾丸を防いだ。

 その直後、アリスは腹部を押さえる。


「影のダメージは、本人に還元されるのだ!」

「厄介極まりない能力ですね」


 影が直撃したことで、そのダメージがアリスに行った。

 吹雪も僅かに動けなくなるほどだ。

 あの直撃の威力は高い。


「畜生! なら能力を使う前にやってやる!」


 先に復帰したクロが、力に飛び掛かった。

 踏み込んだ直後、彼の動きが止まる。

 足元を見ると、影から伸びた腕が足を掴んでいる。


「遅すぎる。その程度で、よく完全生命体を名乗れたものだ」

「コイツ、本当に科学者か……? 強すぎる……」

「科学者であると同時に、小春道場の弟子なのさ」


 小春道場。両親からその名前を聞いたことがある。

 巫女の祖父。つまりアリスにとって、曾祖父に当たる人物。

 その名前が工藤小春。力は婿養子なので、母型の先祖となる。


 小春流と呼ばれる道場には、多くの弟子が通っていた。

 父と母の戦闘スタイルも、小春流が元だ。


「科学者としても、弟子としても二番手だが。お前達より強いはずだ」

「ちぃ! こんな影ごときで、僕を……」

「おっと。無理に振り払えば、お前がダメージを受けるぞ」


 クロはエネルギー吸収で、影を振り払おうとした。

 その効果は本人に還元する。

 影には迂闊に手が出せないのだ。


「お前達は影に阻まれ、私に触れる事すら許されない」

「影に阻まれですか。隙だらけの能力ですね」


 アリスは懐からCDを取り出した。

 剣にエネルギーを溜めて、輝かせる。

 溜まったエネルギーが、強い光となって放出される。


「カラス撃退CDフラッシュ!」

「ぐおおお! なんだこの光は!? 影が打ち消される!」


 強い光が発生して、周囲の影が消滅した。

 クロは自由を取り戻し、一気に力と距離を詰める。

 バズーカを握りしめて、エネルギー吸収能力を使う。


「一番厄介な武器を封じさせてもらうぞ!」


 バズーカが溶けて、使用不可となった。

 力はバズーカを投げて、クロを引き離す。


「やるな。だがこの能力の使い方には、工夫があるんだよ」


 力が指を鳴らすと、周囲の照明が消えた。

 真っ暗になった部屋に、何かが飛ぶ音が聞こえる。

 同時にスポットライトが光る。ドローンが飛んで、アリス達を照らす。


 影は丁度、彼女達から力に向かって伸びる様に出来る。

 力は壁の様に影を出現させた。


「これで私に迂闊に攻撃出来ない。だが私は一方的に攻撃できるぞ」


 影のダメージ還元を利用して、防御と攻撃を同時に行う。

 力はコンバットナイフを装備し、アリスの影を攻撃しようとする。


「この程度で調子に乗るとは。吹雪!」

「へへ! やっと新技を披露できるぜ! リフレクトアイス!」


 吹雪は周辺の空中に、コンタクトレンズの様な氷を生成した。

 アリスが氷に斬撃波を飛ばす。

 斬撃波は氷を反射して、力を背後から切り裂いた。


「ぐっ!」


 本体がダメージを受けた事で、影が消滅した。

 アリスは即座に剣を変形して、力の首に巻き付けた。

 剣を引っ張って、力を自分達に近づける。


「ほら。お前も少しは接近戦を経験したらどうです?」

「舐めるな! 私は剣術も習ってね!」


 力は大剣に持ち替えた。片腕で見事に操り。

 真っ先にアリスに飛びこんで、剣を振り下げる。


「ほう。習ってこの程度とは。小学生からやり直しなさい」


 アリスは剣を変形させて、ハサミの形を作った。

 刃の間に力の大剣を挟み、剣を戻してへし折る。


「クソ! 剣術もクソもねえ奴に、説教されるとは……」

「慈愛は持っても、戦いに慈悲はかけえるな。祖母からの教えです」


 アリスは剣を逆手持ちにし、屈んだ。

 足払いを行って、力の体制を崩す。

 倒れた力は拳銃を取り出そうとするが、腕をアリスに踏まれる。


「終わりですね。制御装置を渡せば、命は助けますよ」

「制御装置だと? そんなものは持っていないさ」


 この状況で勝ち誇った笑みを浮かべる力。

 アリスは見るからに不快を表情をした。


「私の望みは登市と同じ。世界の破滅なのだから!」

「裏切ったお前が、何故裏切った相手と同じ志を?」

「私は裏切ってなどない。定期報告をしていただけだ」


 力は自分の影を実体化させて、アリスを掴ませた。

 彼女を投げ飛ばして、拘束から解放される。


「研究の進捗を上層部に報告する。それはコロニー側で認められた職務だった」


 武器を全て失った力は、格闘戦を仕掛けてくる。

 筋肉がある人物だけあってい、肉眼戦も威力が高い。

 アリスは攻撃が当たらないように、パンチをよけ続ける。


「私は最高司令官が視察にくるから。案内を指示されただけだった」


 力は自分の影を実体化させて、攻撃を繰り返す。

 ダメージのリスクは増加するが、単純に手数が増える。


「だが現実は違った。やってきたのは視察団ではなく、襲撃者だった」


 力は影と本体で、アリスを挟み撃ちした。


「私は研究成果を持ち帰るという名目で、軍に拘束されたに過ぎない」


 アリスは力の話を、母から聞いたことは少ない。

 ただ連絡が取れないとだけは、伝わっていた。


「登市から接触があった時、チャンスだと思った。全てに復讐をするな」


 近づく挟み撃ち攻撃を、アリスは回転斬りで吹き飛ばした。

 ダメージが二倍入り、流石の力も膝をつく。


「名誉も信用も仲間も失い。私に残ったのは、復讐心だけだ」

「四十年我慢する根性があるなら。これを機に風香を切ればよかったのに」

「お前達は彼女の恐ろしさを知らないのだ」


 力は立ち上がり、両手を広げた。

 もはや小細工なしで、真正面から突っ込んでくる。


「ゼットになったアイツの思想。アレは元々草月風香のものだ」

「ああ。あのイカ過ぎた選民思考ですね」

「奴は完璧を求める。自分にも他人にも。世界にすらも」


 力のストレートを、アリスは剣で受け止めた。


「奴が求めた世界が完成する直前。全てを壊す。それが私の復讐だ」

「ポット出のチョイ役にしては、よく喋りますね」


 アリスは剣の柄を回した。

 刃が回転して、力の拳を削る。

 

「自分は可哀そうだから。同情しろ。理解しろとでも言うのですか?」

「貴様に私の何が分かる!?」

「当事者じゃないから分からない!」


 アリスは怯んだ力を、素振りの風圧で吹き飛ばした。

 投げ飛ばされた彼の足に、変形させた剣を縛り付ける。

 そのまま剣を振り下ろして、地面に叩きつけた。


「戦いに慈悲はない。生きる者と死ぬ者に分かれる」


 倒れ込んだ力を、アリスは引きずりながら近づけた。

 剣を構えて、刃を力に突き刺そうとする。


「でも母が可哀そうなので……」


 アリスは力の右膝に、剣を突き刺した。


「足の骨一本で、今日のところは引き下がりましょう」

「ぐふぅ! こ、これは慈悲なのか?」

「慈愛です。慈愛なのです」


 アリスは剣の柄を捻って、刃を回転させた。

 力の足に刺さったまま、剣がドリル状態になる。


「ぎゃあああ!」

「いや、愛も悲しも欠片もねえ! あるのは氷の様な冷たさだけだぁ!」


 吹雪のツッコミが、部屋を振動させた直後。

 静寂がやってくる。力が気絶したのだ。


「余計な体力を使わせやがって。ふてぶてしい野郎だ」

「やっぱりアリスさんはおっかねえぜ……」

「絶対に怒らせたらダメだな……」

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