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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
Episode2 スペース編

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第7話 祖母

「四十年間。私は地球の意志を聞く実験をしていた」


 戦艦から脱出した後、未来は過去を語り始めた。

 彼女への警戒心が、薄れない。

 何せ街一個を破壊しているのだから。


「意志の集合体、リアクターを最大限引き出せる子の力でね」

「それが完全生命体?」

「そう呼ばれるようになったのは、後年ね。私達は星の子と呼んでいたわ」


 話しながらユウキはどうでも良い事を考えていた。

 未来の精神年齢はいくつくらいなのだろうかと。

 四十年経過しているが、死んだときはまだ二十代だったと聞いている。


「でも当時の最高司令官は、その力を軍事利用しようとした」

「当時偉い人なら、今はもうご老人だな」

「特殊な薬品使っているから。二十倍は老化が遅いわよ」


 まだ健在と言う事は、影響力も大きいはずだ。

 未来は目的が復讐だと語った。

 当時軍を指揮していた、最高司令官への。


「でも研究成果が欲しいなら、何故皆殺し? データが欲しければ、生き残りが必要だろ?」

「簡単な話よ。研究員に裏切者が居た」


 最高司令官にデータを手土産にした。

 その結果、軍の中で地位を得たようだ。


「私達はその二人に、復讐をする。私が受けた絶望と同じものを与えてやるわ」

「その人達の名前は? 状況次第では協力するよ」

「やめておきなさい。人の復讐に巻き込まれると、ロクな事がないわよ」


 ユウキは話して分かった。

 未来にはまだ人間性が残っている。

 それならば、暴走を止められる可能性だってある。


「でも名前くらい教えてよ」

「はぁ……。最高司令は草月風香。裏切者は工藤力よ」

「知らなかった。世間ってこんなにも狭いんだね」


 ユウキは蒼を気遣い、表情を見た。

 祖母の名前が出ても、彼女は顔色を変えていない。

 祖父の名前が出たのは、ユウキ達も同じなのだが。


 工藤は母の旧姓だ。工藤力は母の父親でもある。

 時代遅れの政略結婚だったので、父親に良い思い出がないと語っていた。

 一方母親の工藤薫は、優しかったとユウキも覚えている。


「名前を聞いて確信したよ。貴方一人で、なんとかなる問題じゃない」

「だから私には、仲間居るの。クロと事前に地上に下した、私の子達が」


 コロニーから地上に落ちたカプセルは、二つだと聞いていた。

 だがそれは事件があった日にちの出来事だ。

 事前にいくつか、カプセルを投下していたのだろう。


 恐らくコロニーが襲撃されることを、察知していたはずだ。

 手際が良すぎるので、予感はしていた。


「リアクターを使えば、不可能ではないわ」


 確かにクロは経験不足だったが、力は本物だ。

 リアクターの力を引き出せるものが、数を揃えれば。

 言葉一つで軍を動かせる連中を、相手に出来るかもしれない。


「だから貴方達のリアクターを渡して頂戴。これは私の……」


 未来の言葉を、銃声が遮った。

 この音は聞き馴染みだ。無理な改造で、発砲音がデカくなっている。

 ユウキは銃声の聞こえた方向へ、首を向けた。


「父さん!? どうしてここに!?」

「俺は軍の人間だ。当然この戦いに召集された」


 冬木光夜。軍の中で最強とっても良い人物で、ユウキ達の父親。

 彼の武器は全て、持参品なので無理な改造が施されている。


「はぁい! 私も居るよ」

「まあ、母さんは居るだろ。救護班なんだから」


 光夜の背後には、母である巫女の姿が見える。

 治癒能力は今でも、重宝されている。


「そいつにリアクターを渡すのは、止めて置け」

「あら、光夜。随分と大きくなって……」

「コイツは四十年ぶりに目覚めたのに、お前が孫だと知っている。その意味は?」


 父親の意図を、ユウキは理解した。


「なるほど。監視してやがったわけか……」

「"奴ら"にとって、もう俺達は家族じゃない」


 光夜は青く光る弾丸を、未来にはなった。

 未来は衝撃波を発生させて、銃弾を弾く。


 父はブルーヒートと呼ばれる、特殊エネルギーを操ることができる。

 体に取り込めば、肉体強化にも繋がる。

 リアクターを使わなくても、ユウキよりずっと強い。


「復讐は本当だろが、隠している事はあるよな? 畜生ジョーカー」

「はぁ……。随分口の悪い子に育って」

「アンタらの育て方が悪かったからな」


 未来はクロを抱き上げた。

 直後、強い光を放ちユウキ達の視界を奪う。


「分が悪いので、引かせてもらうわ。私はまだ死ぬわけにはいかないもの」


 球体と同じ光を放ちながら、未来は飛び去った。

 去り際にこんな言葉を残しながら。


「この世の全てに復讐をするまで」


 素早い動きだ。リアクターを使ったユウキより、ずっと早い。

 あの球体の正体は謎だが、とんでもない力らしい。


「逃げられると思ったよ。だが行き先は分かっている」


 光夜は拳銃を回しながら、ホルダーに仕舞った。


「ユウキ。瑠璃から話は聞いてる。今までよく頑張ったな」


 光夜は労いの言葉を口にした。


「ここから先は大人時間だ。連中とは俺が蹴りをつける」

「あ~。それは良いけど。帰宅前の寄り道はダメ?」


 空に巨大な六本腕のついた球体ロボが現れた。

 その大きさは先ほどの戦艦より、遥かにデカい。


『おのれ! 二度もワシの戦艦を落としてくれたな! もう我慢の限界じゃい!』

「我慢なんて、したことないくせにねぇ」


 場違いと言っても良い、ネガリアンの声が聞こえてきた。

 どうやら今回も、利用される立場にあったようだ。

 反省能力のなさが、科学者としてしているなとユウキは皮肉った。


「美化委員なんだ。ゴミ掃除をしないと」

「了解。粗大ごみの始末は任せた」


 光夜はユウキの肩を叩いて、フッと微笑んだ。

 

「追うぞ、巫女」

「OK! Take it easy!」

「お前の怪しい英語が、息子に悪影響を与えているぞ」


 光夜と巫女は、未来が去った方向へ走る。

 追いかけるだけあって、かなり飛ばしている。

 

「ユウ、ご両親を行かせて良いの?」

「父さんが止めろというのは、本当に危ない時だけだ。つまりそう言う事」


 父親は子供は自由に動き、沢山失敗しろと言う方針だった。

 怪我をするようなことも、見守りを貫いてきた。

 子供に口出しするのは、本当に命の危機がある場合だけだ。


「それにドクロ頭とも、いい加減決着をつけないと」

『誰がドクロ頭じゃ! この天才の頭脳になんてことを!?』

「おいおい、拡声器で叫ぶなよ。脳も骨で出来てるのか?」


 ユウキ達の前に巨大ロボが、立ちふさがる。

 今までのロボットとは、迫力が違う。


 思惑はどうあれ、騒動の元凶はネガリアンだ。

 両親が安心して戦えるよう、後始末はしなければ。


「ユウはさっきの戦いで、疲れているでしょ?」

「いや、全然。鉄くずを壊す力は、残っているよ「」


 ユウキにはまだ余力があった。

 それでも蒼は銃を構えて、前に出る。


「良いから! ここは私とアリスさんに任せて、休んでいなよ」

「私も? え~。嫌だ」

「うん……。私一人でやるよ」


 ユウキはやれやれと、両手を広げた。

 蒼はいい加減、歯ごたえのある敵と戦いたいのだろう。

 エックス事件でも、結局殆ど戦えなかったのだから。


「OK! んじゃあ、僕は一旦休憩」

「ふふふ……。やっと新型の性能を確認できるよ」

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