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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
Episode2 スペース編

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第4話 再起

「うわ~。これはまた、こっぴどくやられているね」


 ユウキの装備品を見て、蒼が感想を漏らした。

 持ち込んだものは、全て破損した。

 携帯さえも壊れたので、遠距離会話は無線が頼りだ。


 ユウキが瑠璃との合流場所に指定したのは、蒼の工房。

 装備の修理は、蒼にしかできない。

 修理中に話を聞くために、文句覚悟で集合場所に指定した。


「修理にどれくらいかかる?」

「三時間もあれば」

「早いな!? 剣の修復も頼んでいるんだが」


 剣を修理するには、鍛冶屋の様な場所が必要だが。

 ユウキにとって、修理するだけではダメだった。

 クロに普通の剣は通用しない。


 相手の裏をかくためには、新しい機能が必要だ。

 その為には機械加工が必要だろう。


「靴の方は昔作った奴だから。短時間かつもっと良いものが出来るよ」

「頼もしい限りで」


 蒼は工房のテレビをつけながら、作業を始めた。

 どこもかしこも、街が崩壊したニュースばかりだ。

 ユウキは少々気分が悪くなりながら、椅子に座る。


「アレは君のせいじゃないよ。向かった時には、既に手遅れだったから」


 瑠璃が緑茶の入った、マグカップを渡す。


「分かっちゃいるけど、ただ装備壊しただけなのがね」

「あら? 君のおかげで、十分過ぎるほどデータが取れたけど?」

「ならそのデータで、作戦の立案お願いしますよ。今度は失敗しないやつ」


 瑠璃はユウキの向かい側に座った。

 ここに来たのは装備の修復もあるが。

 ある程度、頼れる人物と情報共有をしたかったのものある。


 ネガリアン自体は相変らずだが、事態は深刻だ。

 街一つ消し飛ばす生きている球体。

 エネルギーを吸収する、左手を持つクロ。


「それで。なんで四十年も前に生まれた存在が、貴方の姪っ子をやっているんだ?」

「そもそもお姉ちゃんは、結婚していないよ。弓穂は里子なの」

「答えになっていない。なんで二人はあんなに若いんだって話だ」


 クロも弓穂も生まれた時期は同じくらいだろう。

 だが四十年前に生まれたにしては、若すぎる。

 外観だけならまだしも、クロは中身もまだ幼さが残っていた。


「答えは簡単。二人共コールドスリープしていたから」

「真実はシンプルって奴か。コールドだけに、クールだねぇ」

「君は知らないだろうけど。研究が凍結されたのは事故じゃなくて……」


 瑠璃は完全生命体の凍結理由を、ユウキに話した。

 大方の内容は、以前の事件に知ったものと同じだ。

 研究を横取りしようとした、過激派が研究員を虐殺したこと。


 データを得られずに、四十年も完成にかかった事。

 その事件が原因で、祖母が死んだという事。


「事件の時、双子のプロトタイプを乗せたカプセルが。地球に落下した」

「そう言えば、前見た映像で……」


 何かに逃げられたかのような、反応をしていたとユウキは思い出した。

 あれはプロトタイプ二体の事だったのか。


「どういう訳か。今になってカプセルが開いたみたいなの」

「クロの方は、当時の記憶があったみたいだぜ」

「弓穂は何も覚えていない。自分が何者かさえも。だからお姉ちゃんが引き取ったの」


 大体の流れを、ユウキは掴めてきた。

 クロから情報を得たネガリアンが、弓穂を襲撃。

 その時瑠璃は彼女の秘密を知ったのだろう。


 より詳細を調べるため、冬木家を訪れたのが始まりだ。

 旧友であった父に、協力を要請するために。


「ネガリアン相手なら、もっと楽勝だと思ったんだがな」

「連中の居場所が分からなくなったから。後手になっちゃうよね」


 ユウキ達が今後の作戦を話し合っていると。

 テレビの映像が、突如変わった。

 黒い背景に見覚えある人物が、映し出されている。


『聞こえるかね、諸君! ワシは世紀の天才、Dr.ネガリアンじゃ!』

「そんなバカデカい声なら、昼寝も目覚めるな」


 ユウキはテレビに視線を動かし、皮肉を言った。


『突然じゃが、ワシはこれより軍に宣戦布告をする!』


 映像が切り替わり、空中を飛ぶ戦艦が映される。

 以前のものより小さいが、代わりに複数存在する。


『明日の十五時! 軍の本部がある街を攻撃する!』


 軍の本部は田舎と都会の境界線上にある。

 付近の街は、程々の大きさと言ったところだ。


『野次馬は勿論、抵抗をしなければ無事で済むぞ! ニャハハ!』

「アイツ、狂っているのか、変なところでまともなのか分からんな」


 わざわざ攻撃時間を宣言して、避難を促している。

 要するに街に居なければ、攻撃しないという事だ。

 ネガリアンの頭を考えると、時刻通り来るだろう。


『では諸君! このワシに支配される覚悟を……。照明が消えたぞ! レンツ!』


 最後の最後で暗転と共に、情けない声が聞こえてきた。

 映像が戻り、ニュースに戻る。

 もっとも、緊急速報で今の内容に変わっただけだが。


「目立ちたがりのおっさんで助かったぜ」

「宣戦布告って。迎撃準備を整える暇を与えるだけでしょ?」

「それを捻り潰す自信があるのさ」


 実際マヌケさを覗けば、ネガリアンは危険だ。

 現代の科学力を上回る技術を持っている。

 ロボットの大群で攻められると、軍も苦戦は必須だろう。


「まあドクロ頭はどうでも良いけど。クロの奴とはきっちり蹴りをつけないとな」

「う~ん。軍の人間として、民間人を巻き込んで良いものか微妙なところだけど」

「今更だろ。僕は始めたことは終わらせる主義なんだ」


 前にも言ったが、瑠璃がなんと言おうと続ける気だ。

 軍とネガリアン、本格的な戦いの最中に向かう事になる。

 今度は説教では済まなそうだが、それよりも大事なものがある。


「分かった。私も全力でサポートするよ」

「そりゃ、頼もしいですよ。貴方のナビは助かる」


 後は明日に備えて、準備をするだけだ。

 多少怪我はしたが、明日には回復するだろう。

 

「ユウ。話が終わったなら、手伝って」

「OK! 何をすれば良い?」

「そこにおいてある銃、ちょっと使ってみて」


 "そこ"がどこか分からず、キョロキョロすると。

 工房の机に青色の銃が置いてあった。


「使えって……。僕は銃器を扱ったことが……」

「弾は念力波。範囲は下がるけど、その分威力が上がる代物だよ」

「なるほどな。微調整のために、テストしろと」


 ユウキは銃を握って、的に銃口を向けた。

 弾丸を当てる自信はないが、念力波なら別だ。

 念力を中に込めて、トリガーを引く。


 反動と共に、衝撃波が飛んだ。

 壁に立てかけられた的に、穴が開く。


「ハハ! 良い代物だな。気に入ったぜ!」

「どうも。でも反動が強すぎるね。明日までに調整を終えるよ」

「あまり無理するなよ」


 蒼の事だから、機械を弄ると徹夜しそうだ。

 最高傑作であるブルーバードも、夜通しで完成させたらしい。


「勿論、今日は早く寝るよ。明日に備えてね!」

「ついて来る気かよ。止めないけど、危機感は煽っておくぜ」

「分かっている。私もネガリアンに借りを返したいしね」


 蒼は銃で的の中央を狙った。


「以前、浮遊遺跡から落としてくれた借りをね!」

「射撃の腕は負けているな。こりゃ」

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