プロローグ 新たな旅立ち
前回の反省から、戦闘やアクションを増やす予定です。
あと今回は群像劇を止めました。
エックスとの戦いから始まった事件が解決して、一週間後。
春休み中のユウキは、退屈を持て余していた。
休みが終われば、新たな学校へ入学する。
姉と同じ進路に向かう事にした。
父の背中を追いかけたいというのもあるが。
どうにも自分は誰かのために、動くことが性にある。
「ふわぁ~。また僕だけのけ者扱いっと」
ユウキは欠伸をしながら、ニュースを眺めていた。
姉は一足先に、入隊に向けた準備をしている。
両親は新しい任務が入ったと言って不在だ。
当然一般人に過ぎない、ユウキには情報が入らない。
一人で寂しく飴を舐めながら、報道を見る。
どこの局も、街の崩壊で話題が持ちきりだ。
ゼットは倒したが、被害がなかった事になるわけではない。
軍の発表では、狂人の発狂と言う事になっている。
早い話、臭いものに蓋をしたのだ。
「吹雪の奴も、忙しそうだしなぁ」
吹雪は傾の一件の他に。吸血鬼たちの新しい住処を探している。
種族の違いもあるが、彼なりに遺跡の崩壊に責任を感じているらしい。
主導したのは彼の父親なのだから。
「そう言えば、Dr.ネガリアンはどうなんたんだろう? まあ、流石に懲りただろうが」
逮捕されたという話題も、死んだという話も聞かない。
一時は電波ジャックまでした、世界征服宣言者がもう空気だ。
話題の移り変わりの残酷さを、ユウキは感じていた。
今日はどんな事をして、暇を潰そうか考えていた。
彼にとって、動かないというのは最大の拷問だ。
近所の手伝いをしたりもしたが、ネタが尽きてしまった。
寝ころびながら、漫画を読んでいるとインターホンが鳴った。
荷物か何かだろうと、軽い気持ちでカメラを見る。
「誰?」
予想に反して、カメラに映るのは知らない女性だった。
寝ぐせだらけの銀髪の髪をロングにして、緑のジャージを着ている。
ダルそうな目をしながら、ヘッドホンを装着。
『パソコン貸してくんない?』
開口一番がそれだったので、ユウキは首を傾げる。
確かに家には高価なパソコンがある。
両親が仕事用に使うものだ。
「どちら様ですか?」
『あれ? 光夜でも巫女でもない。誰?』
「重複なる問いかけをしないでください。僕はユウキ。二人の子供です」
結局自分が先に名乗る事となった。
父と母の名前を気安く読んでいるのだ。
知り合いか何かなのだろうと、ユウキは警戒しながらも話を続けた。
『あ! そっか! 子供が生まれたって何年か前にお祝いを……』
「もう十五年前のことですよ」
『まあ気にしない、気にしない! 基本リモートでしか話さないから!』
次の言葉が名前でなければ、速攻で切ろうとユウキは覚悟した。
女性はおっとりとした口調ながら、得体の知れなさを醸し出している。
『私は三日月瑠璃。二人の古い友人だよ』
「瑠璃……。Really!?」
その名前は父から聞いた事が、何度もある。
両親の幼馴染であり、優秀なハッカーでもある。
後方支援担当だが、父のチームのブレイン役でもあった。
ユウキにとっては、レジェンドと言っても良い。
そんな人が急に訪ねて来るとは……。
大慌てで玄関に向かい、鍵とドアを開ける。
「うわぁ~。大きい子供が居たんだね~」
「十五歳ですから。それより、パソコンを貸して欲しいとは?」
「姪っ子を助けたいんだけど。私のパソコンが諸事情で使えなくて……」
状況は掴めないが、緊迫していることだけは伝わってきた。
両親のパソコンを勝手に使わすのはどうかと思うが。
断るのも少々気が引ける。
「あ。でも僕、パスワード知らないですよ」
「大丈夫! 二人の行動パターンから、察しが着くから!」
「そりゃ、安心だ。セキュリティーが甘すぎてな」
ユウキは瑠璃を、自宅に招き入れた。
なんと言うか、格の割りに親しみやすい人だ。
凄腕なのは間違いないが、見た目からはそれを感じさせない。
「でも入れるのは、三日月さんだけですよ。お連れは、No thanks」
「瑠璃で良いよ。それにお連れじゃなくて……」
隣の住宅、その屋根から飛び降りる影があった。
人ではない。トカゲの様な怪物で、手の甲に針が装備されている。
「招待状のない押し売りだから」
「了解です。丁重にお引き取り頂こう」
ユウキは剣を引き抜き、怪物に刃を向けた。
飴玉をかみ砕き、テンションを上げながら威嚇をする。
「Are you ready? Go!」
ローラースケートで滑りながら、怪物に近づいた。
まずは様子見の一撃。剣を縦に振ってみる。
怪物は針でユウキの剣を防御した。
「パワーはないみたいだな」
ユウキは怪物の胸部に、手を当てた。
力を込めて念力波を発生させ、背後に吹き飛ばす。
怪物は一度転倒するも、直ぐに立ち上がる。
怪物は片方の針で、もう片方の腕を引きちぎった。
斬られた腕は直ぐに再生が開始される。
引きちぎった腕を、針ごとユウキに投げつける。
「ヒュ~! Crazy!」
ユウキは片手で、投げられた針をキャッチした。
「再生するんじゃ、どこから手を付ければ良いのかね?」
「脳は再生しないよ。脳に直結している、目ん玉を狙って」
瑠璃は家に入り、パソコンを開きながらアドバイスをしてきた。
ユウキは手に持った針を見つめて、ニヤリと笑う。
「R指定の絵面になるけど、大丈夫ですか?」
「ブイ! 慣れているから!」
「ぶ、ブイ? 意味は分からないけど、OKっという事で!」
ユウキは敵の眼球を狙って、針を投げつけた。
針はトカゲの頭を貫通し、緑の液体を吹き出す。
怪物は悲鳴を上げながら、もがき苦しむ。
「うへぇ~。思ったより酷い絵図だ……」
怪物は地面に倒れると、液状になって溶け始めた。
緑色の液体が、アスファルトに染みこむ。
「これ、僕が掃除するの?」
「大丈夫。雨と同じように乾くから!」
「自宅の目の前に、怪物の液体が染みこむのちょっと……」
少々引き気味で、怪物の溶ける様子を観察していると。
再び屋根から、飛び降りる影が現れた。
同じ怪物が、今度は二体現れる。
「そうそう! 追手は三体居るからね!」
「そりゃ良かった。これでAll Clear!」
ユウキはテレポートを使って、怪物の背後に周った。
剣を振って、針だけを破壊する。
破損した針が上空へ飛ぶ。ユウキは素早くキャッチして、念力で空を飛ぶ。
トカゲの頭上に向かい、針を投げつけた。
同時に指を鳴らし、新たな超能力を発動する。
針が二つに分身して、二体の怪物を貫いた。
「To Easy! 瞬殺成功だぜ!」
二体のトカゲは、最初の個体と同じように溶けた。
少し口角を下げながら、ユウキは剣を仕舞った。
「へえ。中々良い腕じゃない。こっちも丁度解析が終わったよ」
玄関から両親の部屋でまで、開いたままだ。
どう考えても見ない場所に、部屋あるが。
瑠璃はユウキの動きを、把握しているようだ。
「ねえ、君。お姉さんと仕事をしてみない? 報酬も出すよ」
「中身によるね。勿論、仕事の」
「女子高生の護衛なんだけど」
ユウキは溜息を吐いた。
「本当は光夜に頼ろうとしたんだけど。君の力なら問題ない仕事だよ」
「護衛が必要な時点で、絶対普通の女子高生じゃないですよね?」
「多分ね。Dr.ネガリアンって奴が、必死で狙うくらいだし」
その名前を聞いて、ユウキはいっそう深い溜息を吐く。
「OK。引き受けますよ」




