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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
スーパーユウキ編

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クライマックス 始まりの門

「Here we go! It's show time!」


 ユウキは崩壊した街を飛びながら、加速する。

 見境なく攻撃する、ゼットの光弾を全て弾く。

 十分速度を上げた後、体当たりを繰り出す。


 巨体と強靭さを誇るゼットの体を、衝撃で押し倒す。

 空を覆うゼットが、体勢を崩して地面に向かう。


「Hey! これ以上の損害は、破産レベルだぜ!」


 ユウキが素早くゼットに追いついた。

 サイコキネシスで胴体を掴み、空に向けて投げ飛ばす。


「ぐっ! な、なんだ、この力は……!」

「よう。少しは自我が戻ってきたか? 教育係さん」


 ユウキは周囲への被害を抑えるため、出来るだけ高度を取る。

 飛行機が飛ぶよりもずっと高く。

 宇宙に手が届きそうな場所まで、ゼットを吹き飛ばす。


「命だ! もっと命が必要なのだ! 魂を吸う事で、パズルは完成する!」

「全然だったな。いや、元々正気じゃないか」


 ユウキは再び加速。勢いを受けて、ゼットの腕に体当たり。

 掌を貫通して、腕の中に入り込む。

 回転しながら肩を貫通。右腕を封じた。


「この程度の痛みぃ! 我が欲望で、塗りつぶす!」


 潰れた腕に細胞片が集まり、再生する。

 

「吹雪から聞いちゃいたけど、再生持ちは厄介だな」

「奪いたい、悲鳴を聞きたい、絶望を与えたい! 全て命を奪う事で満たされるぅ!」

「コイツ、何が原因でこんな歪んだんだ?」


 ゼットは両手を街に突き出す。

 先ほど防いだ、光線を再び放とうとする。


「おっと! もうそれは通せないぜ!」


 ユウキは青いオーラを纏って、ゼットの前方に出る。

 放たれた光線に向かって、オーラを纏ったアタックを行う。

 ユウキの突進は光線を切り裂き、ゼットの両腕を貫通する。


「ぬおおお! 足りぬ! 欲望が足りぬ! 魂が足りぬ!」


 ゼットは翼から、紫の光線を無数に放った。

 ユウキが視界に入っていない。

 攻撃は全て街に、人々に向けられている。


 ユウキは分身を生成、自ら盾となり光線を防ぐ。

 ゼットは雄叫びを上げながら、攻撃を繰り返す。


「もっと叫びを聞かせよ! 諸君ら七十億の犠牲は、世界の礎となるのだぁ!」

「違う。今僕が戦っているのは、コイツじゃない」


 ユウキは気が付いた。ゼットが狂っているのは間違いないが。

 彼はリアクターの力を吸収した時。内部の意志も取り込んだ。

 想いは良きものだけではない。悪しき思想もリアクターは取り込む。


 自分の持つ欲望と、悪意を取り込んだ事でゼットは暴走したのだ。

 今対峙しているのは、リアクターが取り込んだ、負の意志そのものだ。


「七十億じゃないだろ? 全部壊すまで、終わらない」


 両腕を封じて、ユウキは一気にゼットに近づく。

 胴体に手をかざして、エネルギーを送り込む。


「ここで終わらしてやるぜ! パーティは御開きだ!」


 ユウキに注入されたエネルギーで、ゼットは膨れ上がる。

 体がエネルギーに耐えきれず、関節が崩壊を始める。

 崩壊した体から、エネルギーが溢れ出る。


「人の欲望は無限だ。でも体は永遠じゃない」

「七十億だ! もっと命を散らせ!」

「それに、完全で完璧な人生なんて、つまらないだろ?」


 ユウキは崩れていくゼットを、下側に放り投げた。

 行き先は街ではない。墜落した戦艦だ。

 凍結した傾の回収は、終わっている。


 無人の戦艦に、ゼットは直撃。

 大きな爆発と共に、体の大半が消滅した。


「まだだ! まだ奪い足りん! 私は……」

「残念だったな! ここで終わりだ!」

 

 空から急降下して、ゼットへ向かうユウキ。

 その姿はまるで、青い光を帯びた矢のようだ。

 半身を失いながらも、尚も抵抗するゼット。


 欲望の執念体へ、ユウキは剣を突き出して突撃。

 胴体に入り、ゼットの体を光らせて貫通。


「It's all your fault(アンタの詰みだよ)」

「まだ満たされぬ……。欲望が! 魂が! 心の穴が……」 


 執念の声を上げながら、ゼットは完全に崩壊した。

 いかに再生能力があれど、細胞が崩れたのだ。

 もう復活することはない。最後に大きな爆発が海を揺らした。


 ゼットの消滅を確認したユウキは、街に飛んだ。

 吹雪達の元へ戻り、元の姿に戻る。


「終わったぜ」


 ユウキはサムズアップをして、それだけ告げる。

 リアクターを取り込んだ反動か、体に痛みが走る。

 それを微塵も見せず、彼は微笑みながら帰還した。


***


「ニューヒーロー誕生ってところか」


 一部終始を見ていた光夜は、ふと呟いた。

 ユウキとの約束のため、敢えて見守っていた。

 被害を影で食い止めながら、表舞台には出なかった。


 隣で負傷者の救護を終えた巫女が立つ。

 疲れているのか、少々顔色が悪い。


「もっと子供達の成長を喜んだら?」

「いや。これは入口だ。素直に喜べねえよ」


 多くの戦いを得て、ユウキ達はスタート地点に立つ。

 彼らの物語は、ここから本格的に始まる。

 光夜はこれが、第一歩に過ぎない事を理解していた。


「門を抜けた先が、悪夢か希望か分からねえがな」

「もっと分かり易く言えない?」

「これなら満足か? この事件の裏には、俺のクソ親父が居る」


 完全生命体開発の主任であった者は、光夜の母。

 そのデータを受け継いだのは、生き残りの父のみ。


「元データがなければ、オメガもゼットも完成はあり得ねえ」

「つまり、貴方のお父さんが生きていて。二人にデータを渡したって事?」

「さあな。あくまで俺の予想だ」


 実は他にもデータを持ち去った人間がいる。

 それがゼットとなった人物であり、彼が傾を利用した。

 その可能性も否定できない。


「だが俺の予想通りなら。いよいよ奴が動き出す」

「冬木登市……。コロニーの管理者であり、研究の主導者で、アンタの父親」

「ああ。俺に完全生命体の因子なんか、組み込みやがった野郎だ」


 光夜の体内には、人ならざる因子が組み込まれている。

 それ故彼は、人並外れた戦闘力を手に入れた。

 彼の子供達にも、その因子は遺伝してしまった。


「ねえ。折角一区切りついたのに、茶々入れて良いの?」

「言ったろ。これは入口だって」


 光夜は予感していた。彼らの物語が続く事を。

 それは新たな戦いの始まりであり。この戦いの延長戦でもある。


『こちらストーンヘッド。君の探し物が見つかったよ』


 腕についた無線機から、司令官の声が聞こえてくる。


「了解。俺達はいつ動けば良い?」

『こちらの準備は一週間はかかる。更にその後だな』

「了解。ならしばらく、気の休まらない休暇を過ごすよ」


 エックス。その言葉には複数の意味がある。

 無限の可能性。未知なるもの。そして危険。

 エックスとの出会いから始まった、ユウキの物語はどこに向かうのか?


***


「知っているか? 人は生まれた時から不平等だ」


 ダークマター事件と呼ばれた騒動。

 それを解決した後、彼は問いかけた。


「子供の時から不幸が運命づけられたもの。恵まれたもの。様々だ」


 才能による差別もある。

 内向的か外交的かも生まれた時も生まれた時に決まる。


「生まれる前から人智を超えた力を持つ、彼は幸せだったのだろうか? 僕には分からない」


 その人物の手記を片手に、彼は語る。


「分かるのは、彼の生きざまと。最期だけだ」


 その人物の最期を見届けた彼は、今も悩んでいる。

 彼が人生をどう思い、幸福を感じていたのか?


「だから君の意見を聞かせて欲しい。彼の話を聞いた君が、どう思ったのかを」


To be continue.Next the episodeⅡ.

エピソード2は『 政略結婚の果てに──私に興味がないそうですが、私がいなくなったら困るくせに―― 』に繋がる話です。

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