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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
冬木アリス編

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第4話 浮遊遺跡の死闘

『あの状況で全員、無事帰ってきたことは驚きだ』


 再び輸送機の中。アルファ隊は別の場所に移動していた。

 ストーンヘッドの指示のもと、ワイの追跡に入る。


『君達の戦闘中、最近見つかった遺跡が突如浮遊を始めた』


 携帯端末に画像が送られる。

 そこにはムー大陸の様に浮遊した遺跡が映される。

 以前ニュースで見た、縄文時代の遺跡だろう。


『中央に高エネルギー体の存在を確認した。アルファ隊はこれを調査せよ』


 司令官は浮遊のタネが、高エネルギー体だと思っている。

 アリスはふと思った。リアクター。

 もしそれが遺跡にあるなら、それくらい出来てもおかしくない。


『なお、付近は低重力エリアが発生。その影響で、航空機を飛ばすことは不可能だ』

「了解した。低重力エリアに侵入後、歩兵で進軍する」


 重力が低下しているなら、ジャンプも高くなっている。

 映像から見ると、遺跡に周囲に足場が広がっている。

 地上から飛び移ることは不可能ではないだろう。


『恐らくワイや傾による、妨害が予測される。健闘を祈る』


 雪道傾。基地の自爆によって、彼の関与は有耶無耶になった。

 確かなことは、あの基地で生物兵器が作られていた事実。

 用済みになったという事は……。完成したという事なのだろう。


 完全生命体の完成形。オメガも傾の傍にいるだろうか?

 完全な生命体を相手に、人間は勝てるのだろうか?


「ああ、もう! 人使い荒いな! 雪山で戦闘したばかりだぞ」


 任務の伝達が終わるなり、アルファ13が愚痴っている。

 確かに戦闘直後の次の任務は、正気の沙汰ではない。


「それだけ評価されているという事だ。喜べ、13番」


 隊長のアルファ11が、愚痴を宥める。


「どう考えてもバカにしているだろ。雑な扱いにもほどがある」


 アルファ13の愚痴は、アリスにも理解できた。

 休憩も居れず、連続で任務を言い渡すなど普通はあり得ない。

 先ほどの任務と言い、何か違和感を感じる。


 それにワイが伝えた浮遊遺跡。

 このタイミングで調査任務が来たのは偶然なのだろうか?


「まもなく作戦地域に入る。全員私語は慎め」


 今回は町中での任務になる。

 アリス達は輸送機から、飛び降りて。

 パラーシュートで地上に着地する。


 無理難題な任務に、内心愚痴りながらアリスは遺跡に向かった。

 幸いと言うべきか、遺跡内部には妨害はない。

 またロボット兵とでも戦うのだと思っていたのだが。


「静かだな。不気味だ。無線も繋がらねえ」

「逸れたら一発アウトだな。13番。30番。逸れるなよ」

「嬢ちゃんはともかく、なんで俺まで子供扱いなんだよ」


 緊張感のないやり取りをしながら、アルファ隊は遺跡の中を進む。

 五人で周囲を警戒しながら、反応がする。


「妙だな……。携帯の電波は通るのに、無線が入らない」


 アルファ11が不審に思った。

 確かに司令部との回線はおろか、部隊同士の無線も塞がれている。

 電波自体が通っていないはあり得ない。


 アルファ隊が警戒を強める中、遺跡の奥から振動音が聞こえた。

 全員そちらに銃口を向けて、ゆっくり進む。


「何だこの音は? 俺達を誘っているのか?」


 不気味な振動音が聞こえた位置に、銃口を向ける。

 直後、爆音が聞こえて壁が崩れた。

 煙に紛れて何者かが出てくる。髪型の影だけで、察する事が出来た。


「ワイだ! あの野郎、奇襲を仕掛けてきやがった!」


 ワイは煙から飛び出して、すぐさまアリスに斬りかかった。

 咄嗟に剣で防御したものの、押し返される。

 速い。それに力強い。以前戦った時よりも、ずっと。


「やっと貴方を殺して良い。劣化品」

「後だしジャンケンで勝って、嬉しいの?」


 アリスは吹き飛ばされながらも、空中で立て直す。

 全体を視認すると、ワイの胸に今までなかったものが。

 光る石が装備。いや、取り込まれている。


「私はリアクターの制御に成功した。もはや私に勝てる生物など、どこにもいない」

「リアクターか……」


 以前より戦力が上がった理由は、納得できた。

 前より冷たい瞳をしている訳も。


「30番! 一人で戦うな! 隊列を整えて……」

「遅い!」


 ワイは方向転換して、一瞬でアルファ11に近づく。

 動きが見えない。地上で音速を超えているみたいだ。

 彼女が動くたびに、爆音が遺跡に鳴り響く。


 アルファ11も刀で防御するが、やはりパワー負けする。

 不意を突いかれても防御したのは、流石と言うべきか。


「野郎!」


 アルファ13がライフルを発射した。

 精密射撃で隊長に当たらぬよう、ワイだけに弾丸が向かう。

 彼女は僅かに体を動かした。被弾した様子を全く見せない。


「おい! ライフルの弾を回避とか、ありかよ!」

「この戦力では勝てないな……」


 恐らくフルスペックのアルファ隊なら、対処可能だ。

 だが彼らは先ほど、消耗している。

 弾薬の補給もなく、この場所にやってきた。


 この状況では、撤退も難しい。

 誰かが囮にならなければ……。


「石頭偽物野郎。こっちです」


 最初の一撃から、アリスは察していた。

 ワイは彼女を狙っている。

 見た目の相違から、対抗意識があるのかもしれない。


 挑発をすれば、自分を追いかけて来るだろう。

 アリスは遺跡の奥に走り、ワイをおびき寄せた。


「乗っかるのは癪だが、私の相手はお前だ」


 ワイはアルファ11を押し返して、アリスを追う。

 あの速さから逃げ切るのは不可能。

 直ぐに追いつかれるだろうが、出来るだけ味方から引き離す。


 幸いなことに、遺跡の構造は複雑だ。

 分かれ道を上手く使えば、時間は稼げるだろう。


「30番! 単独行動は控えろ!」

「んな事言っている場合か、隊長! このまま全滅するより、マシだろ!」

「くっ……。離脱する!」


 背後からそんなやり取りが聞こえ、アリスはホッとする。

 アルファ13が止めなければ、隊は全滅していただろう。

 自分が助かる道がないか、アリスは考えるが望みは薄いだろう。


「いつまで鬼ごっこを続ける気? 私は飽きっぽいよ」

「そんなところは、そっくりなのですね……」


 アリスは遺跡の最深部に辿り着いた。

 調査対象の高エネルギー体がある場所で。

 最悪な事に行き止まりである。


「今日の運勢、占っておけば良かった」

「こんな状況でも、そんな口が利けるとはね!」


 アリスは壁に背を向けて、振り返った。

 ワイは既に、目前まで迫って来る。


「恐怖を見せないことだけは、褒めてあげるわ」


 アリスは後ずさりをした。その時何かを踏みつける。

 見下げてみると、地面に光る石が転がっている。

 ワイが胸に取り込んだものと、似たような石だ。


「なるほど。やっぱりこれが正体だったのですね」

「それは……。リアクター」


 アリスはリアクターを拾い上げた。

 石からエネルギーを感じ取れる。

 確かにこれは凄まじい、高エネルギー体だ。


「形跡逆転ですね。ワイ」

「逆転だと? 同じ条件になっただけだ!」


 ワイは再び高速移動で、アリスに近づく。

 不思議なことに、今度は目で動きを追う事が出来た。

 アリスはつばぜり合いに持ち込む。


 力は均衡している。リアクターの力は凄まじい。

 ワイと違って、まだ力の引き出しはアリスには分からないが。


「同じ条件なら、より優れた私の勝ちだ!」

「やっぱり。頭の方は劣化品みたいですね」


 アリスは待っていた。ワイの動きが止まるのを。

 この状況を彼らが見逃すはずがない。

 大きな銃声と共に、壁を貫通した弾丸がワイの体に直撃する。


 力が弱まった瞬間を待って、アリスは押し返した。

 崩れたところをすかさず斜め切りで、体を切り裂く。


「なっ……。対物ライフルで、壁越しから狙撃だと……」

「本来人に向けたら犯罪らしいけど。お前は人じゃないからセーフですね」


 恐らくモニターで、壁の向こうを見たのだろう。

 モニター越しに正確に狙撃できるなんて、一人しかいない。


「前の私になら勝てたかもね。でも今日、チームワークを学んだものでね」

「貴様ぁ! 劣化品などに、この私が……!」

「他はともかく、自惚れない私の方が、頭脳は上だったようですね」


 アリスはありったけの力を込めて、斬撃波を放った。

 負傷したワイは、剣で防御しても徐々に後ろに下がる。


「私は負けん! あの人の願いを叶えるまで! 負けんぞ!」


 ワイは斬撃波を、天井に逸らした。

 凄まじい執念だが、その影響で天井が崩れる。

 降り注ぐ瓦礫が、彼女の頭上に。


 アリスは一瞬だが、上に向かう線を見た。

 どうやらまだ撃破したとは、言えないようだ。


「30番! 撤退だ! 所属不明の大型戦艦が現れた!」


 壁に空いた僅かな穴から、叫び声が聞こえる。


「どうやら、決着はまたしても、お預けの様ですね」

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