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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
冬木ユウキ編

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第5話 高層ビルでの戦い

 飛ばして走ったはずが、すっかり日が暮れていた。

 さくっと終わらせるつもりが、上手くいかないなぁ。

 ユウキは人生感に浸っていた。


「また姉ちゃんに叱られるな」

「いつもの事だろ」


 吹雪と軽口を叩きながらも、足は急ぐ。

 出来ることなら、今夜中には蹴りをつけたい。

 田舎は止まる電車が少ない。渋々二人は足で向かう。


 都会を通ると、ユウキはどうしても頭が痛くなる。

 騒がしさや人込みに慣れないのか。

 或いは単純に走り辛いからなのか……。


「でもユウキ。空飛んでいる戦艦に、どうやって乗り込むんだ?」

「お互い飛べるだろ。迎撃されたら、やり返せば良い」

「そうだけど。絶対エンジンを壊すなよ?」


 あんな戦艦が都会に落ちたら、大変レベルではない。

 ネガリアンはそこまで計算して、わざわざ戦艦を飛ばしているのだろう。


「待て、ユウキ」


 前を走る吹雪が、不意に止まった。

 ユウキはローラースケートなので、ブレーキに時間がかかる。

 吹雪はビルの陰に隠れた。視線の先に誰かいるようだ。


 リムジンだ。見るからにバカでかいビルから、出た男性が乗り込む。

 ユウキは見上げてビルを見ると、吹雪が隠れた理由が分かった。

 桃色グループと呼ばれる会社のビル。


 軍に兵器を提供する、武器商人の会社だ。

 良くない噂は、ネットでいくらでも流れている。

 その会社から出て、VIP待遇を受けるのは大抵軍のお偉いさんだ。


「重役が危険な戦艦の方へ、向かうよ」

「今から追えば、クソ親父が乗り込む前に蹴りをつけられるかもな……」


 ユウキからは姿は視認できなかったが。

 リムジンに乗ったのは、雪道傾だろう。

 確かに早急に蹴りを付けるに、越したことはない。


 ユウキは吹雪の顔を見つめ、見やりと笑った。

 吹雪も同様に口角を上げている。


「Are you ready?」

「Go!」


 ユウキと吹雪は同時に飛び出して、リムジンを追いかけた。

 常人なら車に追いつけないだろうが、二人とも普通ではない。

 高速で街を駆けながら、リムジンの後を追いかけた。


 通行人にぶつかると危ない速度なので、車道を通る。

 それでも遅い車には追いついてしまうので、脇道を通った。

 バイクを巻き込まぬよう、リムジンを必死で追いかける。


「Stop! 駐車したぜ!」


 リムジンは別のビルの前で、止まった。

 男性が再び外に出て、ビルの中へ。

 大分走ったので、戦艦が大きく見える位置に辿り着いた。


 ユウキ達はこっそりビルの中を覗く。

 男性はエレベーターに乗り込んだ。

 門前払い去れるから、ビルに入らない。


「ユウキ。垂直は好きか?」

「of course!」


 ユウキ達はビルの裏側に向かった。

 ビル同士の間で、目立たぬことを確認する。

 二人で頷きながら、助走をつけて壁に向かう。


 二人は高層ビルの壁を、突っ走った。

 少しでも速度を緩めれば、地面に落ちる。

 一切の気を抜かず、ビルを駆けのぼり、屋上へ。


「Hey! look at! 分かり易くて助かったな!」


 屋上には二人の人物が、戦艦を見上げていた。

 一人は白い髪の毛の、初老男性。

 顔にシワがあるが、体幹が良いので十分強そうだ。


「一応友達の父親としては、初めましてだな! nice to meet you!」

「ほう。誰かと思えば、英雄の子か……」


 写真で見ただけだが、間違いない。

 男性は雪道傾だ。対面すると、吹雪とも似ている。


「そっちは久しぶりだな! ブラッドアリス!」

「そんな名前じゃないし、昼間に会ったばかりだし」

「Sorry! 名前を知らないもんでな!」


 アリスが昼間に追いかけていた、偽物も一緒だ。

 そっくりだが、ユウキには区別がつく。

 本物よりずっと冷酷な目をしているから。


「今は貴様らの相手を知れいる暇はない。エックス!」


 傾の呼び声と共に、地面から生える様に白い怪物が現れる。

 完全生命体のプロトタイプ、エックス。


「子供のお遊びに付き合ってやれ」

「待て!」


 吹雪が傾に駆け寄ろうとするが、エックスに阻まれる。

 六本腕に捕まれて、吹雪は投げ飛ばされた。

 その隙に傾と偽物は、ヘリに乗り込んだ。


 ヘリが発進して、屋上に風圧が飛ぶ。

 ユウキも体勢を崩し、ヘリが飛び立つのを眺めるしかなかった。


「武装していないヘリで向かうのか? アイツらグルなのか?」

「そんなことは後で考えるぞ! 早く追わないと!」

「待て、吹雪。どうやら、遊んでやらないと通してもらえなさそうだぜ」


 エックスが通せんぼの様に、腕を広げている。

 ユウキは改めて、エックスの全身を観察した。

 発声器官が見えない。言葉は理解できても、喋れないのだろう。


 人間と同程度の知性があるのは、命令を受けているから明らかだ。

 その瞳は般若の様な印象を、ユウキは受けた。


「ちっ……。コイツを倒さないと、先に進めそうにないな」


 吹雪は能力を発動して、氷の剣を作った。

 冷気に耐性があり、氷を自在に生成できるのが彼の力だ。

 ユウキも同じように、剣を構える。


「僕は人の人生に口出しできる年齢じゃないけど……」


 エックスは二つの手に、紫の球体を作った。

 腕を振り回して、ユウキと吹雪にそれぞれ光弾を飛ばす。

 二人は左右に分かれて回避。一斉にエックスに飛び掛かった。


「君はそれで良いのか?」


 ユウキはエックスに問いかけながら、剣を振った。

 六本ある腕によって、二人の剣は受け止められる。


「どうして君は、いつも悲しい目をしているんだ?」


 ユウキ達は一斉に、エックスにはじき返された。

 

「ユウキ。なにをぶつぶつ言っている?」

「生まれた意味に悩む事がさ。僕にも経験があってさ」

「あったな。らしくない時期が」


 中学に上がった時くらい。ユウキは本気で自暴自棄になった。

 なにをしても自分の上に行く、姉への劣等感。

 自分の上位互換が存在する感覚。全てへ無気力になる気持ち。


 エックスはあの時の自分と、同じ目をしている。

 分かる気がする。彼はプロトタイプ。

 完成前に作られた、いわば生まれた事で意味を終えた存在なのだから。


「誰かに勝手に生み出され。他人に操られた人生で良いのか?」


 ユウキは一人で駆け出し、エックスに近づいた。

 彼を近づけまいと、エックスは連続で光弾を放つ。

 左右にステップを踏みながら、距離を詰めていく。


「僕は嫌だね! 自分の人生は、自分で手綱を握りたい!」


 ユウキは剣を突き出して、突進する。

 エックスは全ての腕を掲げて、頭上にエネルギーを溜める。

 人の二倍は直径がある球体が、エックスの手に集まった。


「あの野郎……。ビルごと俺らを潰す気だ!」


 吹雪も剣を突き出し、ユウキと並走する。

 投げ出された巨大光弾を、二人で防ぐ。

 剣先で必死に押し返そうとするが、威力が高すぎる。


 二人掛かりでも、押し返される。

 このままではビルが倒壊する。


「吹雪……。Let's do it!」


 ユウキは懐から、リアクターを取り出した。

 吹雪も意図を察して、同じようにリアクターを取り出す。

 正直って、ユウキはまだリアクターの使い方が分からない。


 でもコイツなら、何とかしてくれる。そんな気がした。

 必死で念じてリアクターの力を解放する。


「行くぞ、ユウキ! 二人合わせれば……」

「火力MAX! ダブルソードブースト!」


 二人の持つリアクターが、赤い光を放った。

 光は二人の剣を包み込む。赤いオーラとなり、剣が光弾を押し返していく。

 リアクターは互いに共鳴し、力を高める。


 強度を増した二人の攻撃が、光弾を切り裂いた。

 貫通した二人は、そのままエックスに突撃する。

 エックスは六本の腕で防御するが、直ぐに吹き飛ばされた。


 ビルのフェンスを越すほど高さがあがり。

 そのまま向こう側に、落下を始める。


「やっべ!」


 ユウキは攻撃が終わるなり、直ぐに飛び上がった。

 フェンスを越して、落下するエックスを掴む。


「持ち主の人、ごめんなさい!」


 剣をビルに突き刺して、落下を止めようとした。

 だが重量を支えられず、速度を緩めるだけだ。


「バカ野郎! 二人分の重さに耐えきれるか! これに捕まれ!」


 吹雪は氷の鎖を作り、ユウキの腕に巻いた。

 二人の落下が止まり、ユウキは一息吐く。

 足の力でよじ登り、エックスを屋上に戻した。


「ひやひやさせやがって……」

「悪かったって! Thanks!」


 息を切らす二人は、エックスへ振り向く。

 敵意が消えている。目を大きく開いている。


「なんで助けられたのか、自分で考えな」

「……」

「だけどこれだけは教える。親にも教師にも。誰にも自分を縛る権利はない」


 ユウキは戦意喪失したエックスの、肩を叩いた。


「Take easy! 人生って、意外と難しいもんじゃないぜ!」

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