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ユウキサーガ ~ 悪を撃ち抜くCheckmate!~  作者: クレキュリオ
冬木ユウキ編

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第3話 リアクター争奪戦

「おい! レベル三隔壁を突破されたぞ! 見張りは何をしている!」

「精一杯応戦しているよ! 奴ら強すぎるんだ」


 銃声が飛び交う中、兵士たちが怒声を浴びせ合う。

 非常事態を告げるアラートが聞こえる。

 軍の研究施設が襲撃を受けている。


 施設内が混乱しているのか、セキュリティが機能していない。

 アリスは身分証で通れたが、ユウキは顔パスだった。


「姉ちゃんの偽物は、なんで軍の施設を狙うんだ?」

「それは私が知りたいよ。まだ所属もしていないのに、出世に響く」

「そもそも姉ちゃんの真似をしても、得なんかしないだろうに」


 ユウキ達は施設の奥に進んだ。

 周囲には負傷した兵士がいるが、彼らに手当する事は出来ない。

 襲撃者の正体を暴く為、追跡が優先だ。


 襲撃者は次の隔壁に手間取ったようだ。

 最終隔壁ギリギリのところで、ユウキ達は追いついた。


「うわ! 本当に姉ちゃんそっくりだ。正直ドン引き」


 襲撃者はアリスに酷似している。服装まで全く一緒だ。

 持っている剣も同じ。見たところ能力も同一だろう。

 それだけでも十分驚きだったが、更にユウキへのサプライズがあった。


「Hey! 市役所での一戦以来だな」


 偽アリスの隣にいたのは、市役所前で戦った怪物だ。

 名前も知らず、どこから来たのかも分からないが。

 偽物と共闘関係にあるのは、見て取れた。


「エックス。お前はリアクター回収を」


 偽物が白い怪物に指示を出す。

 エックス。それが奴の名前かと、ユウキはニヤリと笑う。

 偽アリスが剣を構えて、行く手を塞いだ。


「見た目はそっくりだけど、瞳が冷たいね。冷酷で、残忍で極悪人に見えるぜ!」


 偽物は舌打ちをしながら、ユウキに剣を振る。

 本物と同じ強さなら、自分では受け止められないだろう。

 まずは敵を知ること。ユウキは敢えて受け止めて、力加減を調べた。


 両者力が均衡し、つばぜり合いへ。

 脅しだ。これは本気じゃない。

 つまり全力を出せば、自分は押し切られると言う事になる。


「名前教えろよ! ブラッドアリス? それてもコピペリス?」

「こいつ……。細胞レベルで、ぶちのめしたくなるな!」


 偽物の背後から本物のアリスが、斬りかかる。

 偽物はユウキを押しのけて、攻撃を回避。

 同士打ちを狙い、体勢を崩したユウキへ本物を誘導。


「トリックショット!」


 地面に倒れながらも、ユウキはアリスを念力で掴んだ。

 生物を掴むにはパワーが居るが、抵抗する気がなければ掴める。

 アリスを攻撃姿勢のまま、偽物に投げつける。


 これは偽物も予想だにしていなかったのだろう。

 対処できず、アリスの剣が服を掠る。


「エックス、行かせない方が良かったんじゃない?」


 ユウキはローラーで、周囲を高速移動。

 パワーならアリスに負けるが、スピードには自信がある。

 一撃の重さより手数で攻める。それがユウキのスタイル。


「姉ちゃんと互角なら。二人居るこっちが有利じゃない?」

「ユウ。考え方は別なのよ。相手が素直に戦ってくれるとは限らない」

「なるほど。なら不利になる前に、一気に決めようぜ!」


 アリスもその言葉に頷いた。

 ユウキは一度、立ち止まる。

 腕に緑色の光を溜めて、目を瞑る。


「It`s show time! ready go!」


 ユウキは溜めた力を一気に解放した。

 緑色の光を纏いながら、一瞬で偽物との距離を詰める。

 そのまままず一発。直ぐに離れて、放物線上に二発目。


 一切の直進をせずに、連続攻撃をお見舞いした。

 偽物は始めてみる技に、対処するのが精一杯だ。

 自分を超能力で操り、高速移動する。この技を、ブーストと呼ばれていた。


「がら空き!」


 アリスが素早くユウキの軌道外から、攻撃を仕掛ける。

 偽物は対処できず、まともに胴体を切り裂かれた。

 体に傷口が出来た。そこから緑色の液体が、地面に垂れる。


「なんだ? 最近の血は赤くないのか?」

「悪魔なんでしょ。人の血が流れていないって言うし」

「二人そろって、ムカつく奴らだな!」


 偽物の背後が、爆発した。

 壁に空いた穴から、エックスが姿を表わす。

 そこには赤色に光る石。以前市役所で見たものと、同じリアクターが握られている。


「Watt? どうして僕が渡したリアクターが、ここに?」

「十分時間は稼げました。ここは一度引くとしましょう」


 偽物はエックスが開いた穴から、脱出する。

 エックスが彼女を掴むと、リアクターは強い光を放った。

 二人は高速移動をして、あっという間に視界から消える。


「へえ。リアクターって、あんな使い方もできるのかぁ」

「感心している場合じゃないでしょ! 逃げられちゃったよ!」

「Way、Way。想定の範囲内だ」


 ユウキはある機械を、アリスに投げ渡した。


「ブースト中に、発信機を仕掛けてやった。カチューシャの上に」

「……。なんでこんなものを?」

「友達に作ってもらった。姉ちゃんにつけるために」


 アリスからの鉄拳制裁を、ユウキは甘んじて受け入れた。

 彼女を避けるために用意した発信機が、役立つとは思わなかった。


「奴らには黒幕がいるだろうし。わざと逃がして、ぶっ潰すのが手っ取り早いだろ?」

「ええ。奴の血液を分析すれば、何者かも分かるだろうし」


 冷ややかな目線をしながらも、アリスは同意した。

 

「どうする? 家族総出で、殴り込む?」

「いいえ。黒幕は薄っすらと、分かっています。これで確信が持てますが……」


 発信機の反応が止まった。

 偽物はアジトに辿り着いたようだ。


「恐らく黒幕は、"雪道傾"。軍の参謀で、過激思想の男よ」

「なんだって?」


 雪道……。吹雪と同じ苗字だ。彼の父親の名前とも一致する。

 何度か会ったことがあるが、とても気のいい相手ではない。

 ユウキが吹雪と遊ぶことを、快く思っていなかった。


 吹雪からも何回か悪口を聞いたことがある。

 彼は絶対に、自宅に友達を呼ばない。

 それを家系のせいだと、言っていた記憶があるが……。


「近いうちにクーデターを起こすつもりでしょう。隠す気もないですし」

「軍のお家騒動なら、僕の専門外だな。勝手に戦って、結果だけ教えてくれ」


 ユウキはエックスが明けた穴に、足を駆けた。


「協力はここまでだ。用事を思い出した」

「少しでも戦力が必要なんだけど……。大事なことなの?」

「Of course! 友達の事なんだ」

「そう。ならしょうがないね」


 ユウキは軍の研究施設から、飛び出した。

 携帯で吹雪に呼び掛けてみるが、応答がない。

 どうにも嫌な予感がする。


 それにリアクターを、蒼の工房で見た事を思い出す。

 あの時は何も思わなかったが、多くの存在がリアクターを狙っている。

 ネガリアンはどうにかなるだろうが、偽物達は危険だ。


「こんな時に限って、どっちも電話に出ねえんだよなぁ」


 ユウキはまず蒼の家に向かう事にした。

 吹雪の居場所は分からないし、家も知らない。

 ここを襲撃したばかりなら、まだ気づかれていないだろう。


「全く、退屈させてくれないぜ!」


 ユウキはローラースケートで、ひたすら滑った。

 空は既に赤く染まりかけていた。

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