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いつもの 2

作者:

帰宅中に隣の住人に会った。

明日はゴミの日だ。ゴミ袋を持っている。

「こんばんは」

声をかけると相手はちょっとびっくりしたようだった。ちょっと会釈して「こんばんは」と小さな声で言うと

「金魚が死んじゃって。子供達が可愛がっていたんですけどね。金魚ってちょっとしたことで死んじゃいますよね。まさか動物病院に連れて行くわけにもいかないし。調子が悪そうだって思ってたんですけど、どうしていいかわかんなくて迷ってるうちに水面に浮いてたんですよね。」


ゴミの日は明日なのに夜出していることに後ろめたさがあるからなのかわからないが、言い訳をするように言った。別に気にしないのに。

それより持っているゴミ袋に金魚が入っていることは明白だ。アパートだから埋めるところは無いが、可愛がっていた金魚を生ゴミで捨てるのはいかがなものかと思ったが、努めて顔に出ないように

「そうですか。残念でしたね。それじゃ、おやすみなさい」

そう言ってその場を離れた。


玄関を開けると美味しそうな匂いがした。魚料理ではなさそうな匂いにほっとして、隣の金魚が死んだことを告げると晶はびっくりした顔をした。


俺が近所付き合いをしていることにびっくりしたのか、金魚が死んだことにびっくりしたのか、多分前者だろう。そもそも晶は隣の住人が金魚を飼っていることは知らないはずだ。


晶はほとんど家から出ない。仕事は在宅だし、買い物はネット中心だ。この美味しそうな匂いの素となる食材たちもネットで注文しているようだ。


あまり外に出たがらないが今度の休みは外に連れ出そうかな、そもそも俺としか会話してないんじゃないか?と考えていると、


「へぇ、そうなんだ。アパートだし埋められないね。どうするんだろうね。」

そう言うので

「さぁ?やっぱり生ゴミかな?」


そうだよ生ゴミだよ。知ってるんだけど言いにくかった。自分が捨てたわけじゃ無いけど何か罪悪感を感じてしまった。晶はそいう時悲しそうな顔をする。口では言わないが目が入っているのだ。実際ペット霊園だと言い出した。

そんなわけない。金魚だぞ。と思ったがあえて否定はしない。


美味しそうな匂いはしているが食卓には何も出ていない。聞くと、とんかつとアサリの味噌汁らしい。


一気にテンションが上がる。早く食べたい。


「おぉご馳走じゃないですかぁ。手洗って着替えてくる」


そう言って洗面所に向かうと、晶は鼻歌を歌いながら食卓の準備をし始めた。

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