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なろうラジオ大賞

復活するベランダ

作者: 地野千塩

 妻が死んで三年がたった。私は元々社交的ではなかったが、今は引きこもる事が多い。病院とスーパーしか行っていない。もっとも定年退職後のサラリーマンはこんなもんかもしれないが。


 マンションの二階の窓からは、冬の空が見える。薄い水色の上には雲もなく、綺麗に晴れていたが。


「あなた、ミントがこんなに増殖して困ってるわ」


 空を見てたら、妻の明るい声を思い出す。妻は土いじりが趣味でベランダにもハーブや花をたくさん植えていた。


 今はその全てが枯れ、ヒビの入ったプランターやジョウロが転がっているだけ。手入れをする者がいないと、あっという間に植物は枯れる事を思い知った。


「でも、あなたも何か植物植えてみたら? いつまで引きこもってグズグズしているつもり?」

「は?」


 どこかで妻の声が聞こえた。


「は?」


 幻聴だろう。死んだ妻の声がするはずないが、そこまで病んでいた事に私は戸惑う。


「そっか。なんかベランダに植えてみるか」


 確か妻は豆苗やネギ、小松菜などの再生野菜も植えていた。あれなら自分でも出来るかもしれない。


 特に豆苗はあっという間に育ち、私を驚かせた。


「おぉ、けっこう大きくなるもんだな」


 少し緑が復活したベランダを眺めながら、私は目を細める。もう妻はいないが、新しい一歩は今からでも踏み出せるはず。


 緑が復活したベランダを想像しながら、もう暗い気持ちは消えていた。

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