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盲腸で入院してみた話  作者: のろろん
6/22

1日目-⑥


 思った以上に時間がかかったがようやくそれらが一段落して病室に移動することになった。


 この時ふと気づいた。病室に移動する前にないと困りそうなものを売店で買っておこうと思った。病院の中にはコンビニがある。看護師さんに買い出しにいきたいと伝えると、すぐ戻ってくるならと了承してもらえた。


 行きがけに何を買うかいろいろ考えた。コンビニ内でもいろいろ探し回ってみたが、結局買ったものはシャンプー、整髪料、ボディソープくらいだ。


 他にもいろいろ売っていたが、この時はあまり深く考えず目についた物を数点購入しただけにとどまった。


 その後は案内係の看護師さんが連れて行ってくれるらしい。荷物、といっても病院にくるときに持ってきた小さなカバンと先ほど買ったシャンプーなどを手に持って立ち上がった。


 では行こうかなと思うと車椅子が用意されていた。


 普通に歩いて階段も登れると思うが、病室に移動するには乗ったほうがいいのか?


 車椅子初体験がこんな急にくるとは思わず、なんとなく照れもある。もちろんいりませんというのも大人げない気がして、遠慮しながらも座った。


 もっとしっかりした車椅子をイメージしていたが、パイプに薄いが丈夫そうなナイロン生地の座る部分がついただけの簡単なものに見えた。ついでに少し動かしたりブレーキのかけ方も見てみたりする。


 勝手なことすると危ないという目で見られる。すぐに看護師さんがやってきて、後ろから押される形で廊下に出た。


 病室の場所は2階らしくエレベータで移動する。


 人通りは少ないがそれでも数人すれ違う。そのまま車椅子を押されてエレベーターに乗り込みすぐに2階についた。


 病院は数年前に建て直されていたらしく、とてもきれいでチリ一つ落ちていないように見える。この病院は何度か来たことがあったが、2階以上に上がるのは初めてだ。


 今は患者以外は立入禁止の注意版が階段などに置かれており、一般の人は立ち入れないエリアだ。


 少し気恥ずかしい気持ちもあったが、座りながらの移動だからか診療が終わってほっとしているからなのか、右下腹部の痛みを強く意識するようになった。


 虫垂炎で間違いないと確信できたこと、そして、普通に歩けて我慢できる痛みでここまでこれたことを感謝した。




 この時点で16時を回っている。


 入院決定からもけっこう時間が経ち、すでに日が落ち始め窓の外は夕日で赤くなっていた。


 そのまま案内され病室に移動した。割り当てられた病室番号は211、2階だから頭が2なのだろう。200番台の病室が並んでいる。


 再度このフロア以外の階に移動してはいけないと念押しをされる。感染対策のためだが売店もいけない。


 このフロアは『井』の形に通路があり、中央がナースセンター、周辺は病室や検査室、薬剤室などがあったが、これが行動可能範囲のすべてのようだ。


 病室は大部屋で他の病院とそう大差ない。


 個人のスペースはカーテンで区切られ、台車のついたベッド、椅子とテーブル、カード式のテレビと冷蔵庫があった。


 とりあえず指示のもと荷物を整理する。着替えてTシャツになると、さっそく血圧体温などの検診があり、すぐ痛み止めか抗生物質か何かの点滴があった。


 血圧はずいぶん下がっていた。横になると上がると言われたが上が110くらい。ずいぶん体力が弱っているのだろうか。


 次に点滴だ。こういうまともな、じっくりと受ける点滴は初めてかも知れない。


 献血は何度もしてきたが、抜かれることは何度もあったが入れる経験はない。不思議な感覚がするし、一気に病人らしくなった気がする。

 

 それに手の甲に差しっぱなしですむ点滴の挿し口、これもカテーテルと言うのか。


 何度も思っていたがこれを考えた人はすごい。きっと画期的なものだろう。いつ頃からあるのかはわからないが、ずいぶん前からあるのだろうか。

 

 これができる前は毎回刺し直したんだろうか?


 そんなことを思いながら横たわっていた。


 もちろん明治時代より前だと虫垂炎が致命傷ということもあったのだろう。死ぬまで増していく痛みのことを考えるとぞっとする。


 改めて感謝する。


 一方で痛み止めももらっているが、右下腹部がずいぶん鈍い痛みが強くなっていることに気づいた。する ことがなくなると意識が向かうのか痛みが増す気がする。


 そして痛みがあるにもかかわらずグーっとお腹が鳴っている。


 よく考えたら朝から飲み物も食べ物もほとんど取っていない。


 だが薬品や点滴で水分を取ったからか喉の渇きはなく空腹感もなかった。腹が減っていないのにお腹がぐーぐーとなる。そんな状態が続く。



 しばらくすると自宅が近いこともあり、自宅から荷物が届けられた。


 先ほど買いそびれたため連絡しておいたティッシュや洗剤なども入っている。当面の着替えやタオル、そして暇つぶしに欠かせないスマホの充電器などだ。コップやタオルなども用意してあった。



 点滴はまだ続いているがトイレに行きたくなった。点滴されながらでも普通に歩けるし、トイレも点滴を持って歩いていける。ザ・患者という感じだ。


点滴を持ち運びながら往復するとまた看護師さんが様子を見にきていた。


「痛くないですか?」


「いや、痛み止めのせいかそれほどでも。でも昼よりは強くなってきました。他の人はどうなんですかね?」


「人それぞれですねー。昨日の人は七転八倒してましたよ」


 やはりそれが一般的なのか。


 痛みは少ないに越したことはないが、当初はそのせいで食中毒や便秘性の症状も視野に検査された。間違いのない診断するのは難しいと思う。


 先生側からすると想定される病名はどのくらいあるんだろうか?


 間違いができないだけに、想像するだけで難しさがわかる。そんなことを考えたが時間は30分と経っていなかった。焦る必要がなく仕事のように追われることもないからか、時間はゆっくりと過ぎていくように思えた。


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