憧れ
あの時の記憶は、とても曖昧だけれど。
難しいことなど何も考えず、
ただその日を生きることが楽しくて。
扇動してくれる彼等の姿が、
とても頼もしく思えた。
そんな事だけ、良く覚えている。
あの時の記憶は、掠れつつあるけれど。
新たな自分に出会おうと、
不慣れな事に挑戦し。
容易くこなす彼等の姿が、
目指すべき存在だと気付いた。
そんな事だけ、良く覚えている。
あの時の記憶は、薄れゆくものだけれど。
真に自分と向き合いながら、
何をするのも自由だと。
指標を持った彼等の姿が、
違う人間なのだと実感させた。
憧れの存在なんて所詮、自分とは別物だ。
手の届きそうな所から、一向に進まない。
いいや、きっともっと遠い所にある。
二年も、五年も、十一年も前の――あの時の彼等には、どう頑張ろうともなれやしない。
そして、ふと考えてしまう。
私は誰かにとっての“彼等”になれたのだろうか。