表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/46

そこに触れちゃダメ!

「「「「はぁ……」」」」


 四人同時に溜め息が出た。


「「「「……」」」」


 な、なに?


 なんで急にこんな雰囲気になってんの?


 さっきまでのバカ騒ぎはどこに行ったの?


「な、なに?」

「う、ううん。何でもないよ?」

「そうそう、何でもない、何でもない」


 絵里ちゃんと裕二はなんでもないって言うけど、同じタイミングで溜め息って……。


 と、そんな疑問を持ったとき、淳史が恐ろしいことを口にした。


「……やっぱり、課題は見せるべきじゃなかったかと思ってな」

「「今さらそれはひどい!!」」

「あ、安心して! 私は見せてあげるから!」

「絵里ちゃん、マジ天使!」

「あっくんは悪魔だ! このインテリヤク……」

「あ?」

「いえ……なんでもありません……」


 あーあ、馬鹿だねえ裕二。それは禁句なのに。


 それはともかく、裕二と淳史のせいでみんなの溜め息の理由を追及しそびれた。


 あ、でも、それを追及すると、あたしの溜め息の理由も話さないといけないし……でも気になるし……。


 ああ、もう!


「……冗談だ。ちゃんと見せてやるから」

「あっくぅん……」

「だあっ! 気持ち悪い目でコッチ見るな!」

「ひどいよ、あっくぅん」

「ふふふ」


 なんか、いつの間にか元の雰囲気に戻ってる。


 なんだかなあ、最近こういう微妙な雰囲気になることが多いんだよねえ。


(なんともまあ、青春だねえ)


「っ!!」


 唐突に聞こえた呟きに、あたしは思わず身体を硬直させた。


「ん? 今なんか聞こえなかった?」


 げっ!


 裕二のやつ、頭悪いくせに耳はいいんだから。


「え? 別に聞こえなかったけど……」

「裕二お前、幻聴が聞こえるって……なにかヤバイことしてないだろうな?」

「してないよ! あっくんひどい!」


 ナイス淳史!


 淳史のツッコミのお陰で、裕二に聞こえたのは空耳ということで収まりそうだ。


「麻衣は聞こえたよな!? なんかビクッてしてたし!」


 なんでコッチに振るのよ!?


 っていうか、よくそんなとこまで見てたわね?


「し、してないわよ。幻聴だけじゃなくて幻覚まで見えるって……」

「裕二……やっぱりお前……」

「だあっ! 違うから! おっかしいなあ……確かに聞こえたと思ったんだけど……」


 良かった……。


 どうにか裕二の気のせいで終わりそうだ。


 ホッとしたあたしは、思わず自分の鞄を睨んでしまった。


「あれ? 麻衣ちゃん、そんなぬいぐるみ持ってたっけ?」

「え?」


 あたしの視線を追ったのか、絵里ちゃんが鞄に付いているものに気付いた。


 やばっ。


「おお、本当だ。へえ、結構可愛いじゃん」

「そういえば、ちょっと前からつけてるよなそれ。どうしたんだ?」


 他にも色々と鞄に付けてるからバレてないと思ってたのに、淳史は気付いてた?


 そのことはちょっと嬉しいけど、この場はなんとか誤魔化さないと。


「え!? あ、景品! UFOキャッチャーの景品だよ!」

「へえ、どこのゲーセン?」


 なんで裕二はそこ突っ込んでくるかな?


 いいじゃん、どこでも!


「え、駅前のよ」

「ああ、あそこかあ。私も行ってみようかな」


 絵里ちゃんまで!


「ど、どうかな? あそこって結構景品の入れ替わりが激しいから、もう無いかも」

「そっかあ、残念」


 ほっ……なんとか引き下がってくれた……。


「それは自分で取ったのか? それとも……」


 なんで淳史まで乗っかってくるのよ!


「自分で取ったに決まってるでしょ!」

「本当か? お前、そういうの苦手だったろ」


 ああもう、こういう時なんでも知ってる幼馴染って面倒くさい!


「た、たまたま取れたのよ」

「そうか」


 あ、あれ?


 意外とあっさり引き下がったな。


「でも、本当に可愛いよね、これ。なんてキャラクターなの?」

「え? えーっと、なんだったかなあ……あはは、忘れちゃった」

「そっか。でもいいなあ、私もどっかで見つけたら絶対取ろ」

「み、見つかるかなあ……」


 見つけたら見つけたで、とても面倒なことになるよ?


 なんせこれ……。


 ぬいぐるみじゃないから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ