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ああ、女王様

 な、なんで? なんで女王様が高笑いあげて皆の注目を集めてんの?


 近くにそんな店でもあるんだろうか?


 突然現れた女王様に混乱し、そんなことを考えていると……。


「とうっ!!」

「「はあっ!?」」


 女王様は突然、ビルの上から飛び降りた。


 あまりに突然のことで、あたしとNINJAは固まって動けない。


 と、飛び降り!?


 いやあっ! 生で飛び降り見ちゃった!!


 思わず目を背けようとしたそのとき。


 女王様はくるくると回転し、スタッと軽やかに地面に着地した。


 え……今の動きは……まさか……。


「ね、ねえ、ネル……」

「う、うむ。どうやら彼女も適合者のようだ」

「はああっ!? あれが適合者あっ!?」


 あんな、いかにもSMの女王様みたいなのが!?


 一体、どんな奴なんだ?


 そう思って顔を確認しようとしたけど……。


「くっ! こいつも顔を隠してる……」


 あれは……なんて言ったらいいのか、蝶の形をしたマスクで目元を隠している。


 目元だけとはいえ、顔の一部を隠されちゃうと人の顔って分からなくらるもんだな。


 なんてことを考えていると、いつの間にか女王様がこちらに向かって歩いてきていた。


「あら御機嫌よう。あななたちがせんぱ……い……」


 一応先輩であるあたしたちに挨拶しにきたみたいだけど、その途中で目を見開き言葉が止まってしまった。


「な、なによ?」


 やっぱりコイツも、あたしみたいなのがこんな格好をしているのが驚きなのだろうか?


 自分はもっと恥ずかしい格好してるくせに!


「ま、ま……」

「ん? なに?」


 コイツといいNINJAといい、声が小っさいのよ。


 なんて言ったんだか分かりゃしないわ!


「い、いえ、なんでもありませんわ。それより、あなたがたが先輩ですわね?」

「そうよ」

「うむ」

「そうです!」


 女王様の問いかけに、三者三様の返事を返すあたしたち。


「わたくし、本日がデビューとなっておりますの。申しわけありませんけれど、今回はわたくしに譲って下さらないかしら?」

「え? それは別に構わないけど……」

「ふふ、ありがとう。魔法少女さん」


 女王様はそう言うと、悪魔憑きになったお兄さんに向き直った。


「さあ……わたくしが折檻して差し上げますわ!!」


 女王様はそう言うと、右手にあるものを呼び出し握りしめた。


 あ、あれは!?


「ムチ!?」


 女王様にムチって……なんてお似合いなの!


 あまりに相応しい装備に目を奪われていると、女王様はそのムチでパシンと一度地面を叩いた。


「さあ……覚悟はよろしくて?」


 女王様はそうお兄さんに問いかけるけど……


「あ、あああっ!」


 悪魔憑きになった人とは会話できないからね?


 思ったような返事が返ってこなかったというのに、女王様は気にした素振りも見せずにムチを振るった。


 って、悪魔憑きの人には物理攻撃は効かな……。


「それっ! それっ!!」

「あうっ! おうっ!」


 え? うそ! 効いてる!?


 あれって物理攻撃じゃないの!?


「ね、ねえネル。あれって……」

「ああ……具現化した装備による攻撃だから、ギデオンに取り憑かれた人間にも効果があるみたいだ……」


 そういうネルは可愛らしい顔を凄く歪めながらそう言った。


 ネルの顔は、ものすごく苦悩している感じだな……。


 いや、気持ちは分かるけども。


 あたしとネルが会話を交わしている間も、女王様によるムチ攻撃は止むことはなかった。


「おーほっほっほ! おーっほっほっほ!!」

「あっ! あっ! ああっ!!」


 ……なんだろう……だんだん、見ちゃいけないものを見ている気分になってきた。


 隣を見ると、NINJAも微妙な顔をしているのが覆面越しでも分かった。


 そりゃ、あんなの見たらそうなるよね……。


「わ、わあ……すごいです」


 ところが亜里砂ちゃんは、女王様のムチ捌きをみて純粋に感動しているように歓声をあげていた。


「え? なんですかお姉さん。なんで目隠しするんですか?」

「い、いや……なんか見せちゃいけないような気がして」

「なんでですか? 私もみたいです!」

「あっ!」


 思わず亜里砂ちゃんには見せちゃいけないと思って目隠しをしたけど、本人の抵抗にあって目隠しが外れてしまった。


 こ、これは教育上よろしくないのでは?


 そう思っていたのだが、どうやら戦闘は次の局面に移行したらしい。


 さっきまで悪魔憑きのお兄さんをムチ打っていた手を止め、力を溜めだしていた。


「ほどよく弱ってまいりましたわね。それでは、トドメですわ!!」


 女王様はそう言うと、再びムチを振るった。


 だが、今回振るわれたムチは相手を打つことなく、悪魔憑きのお兄さんをグルグルと巻き取っていった。


 あ、新しいプレイ?


 これからどんなプレイが繰り広げられるのかとドキドキしていると、野次馬からこんな声があがった。


「お、おい。なんかあのムチ、長くなってねえか?」


 あー、そうか。


 野次馬たちはあれが精神力を具現化させた装備だって知らないんだったな。


 あのムチは多分、巻きつけたいって思ったら長さが変わるんだろう。


 知らないと不思議な光景に見えるよなあ。


 説明する必要もないので言わないけど。


「さあ……いきますわよ?」


 あたしが野次馬の言葉に耳を傾けているうちに、女王様は力をため終わったらしく、最後の攻撃に移っていた。

 妖艶に口元に笑みを浮かべた女王様が、巻き付けたムチに力を流すとムチが光り出し……。


「そうか!」

「な、なによ!?」


 急に声をあげるんじゃないわよNINJA。


 ビックリしたじゃない!


「アリーサと一緒だ。あの細いムチだけでは決定打に欠ける。だからああして巻き付けることで効果を増しているんだ!」

「な、なんか、急に解説役みたいになったわね」

「でも分かりやすいです! あれって、私と同じなんですね?」

「そうだ。見てみろ」


 NINJAの言葉に、あたしはムチを巻き付けられた悪魔憑きのお兄さんを見た。


 すると……。


「ぐっ……おおおおっ!!」


 おお、メッチャ効いてる。


 ムチが放つ光が強くなればなるほど、お兄さんが苦しんでいるのが分かる。


 これは、もう決着するのも早いだろう。


 あたしがそう思ったのと同じように女王様もそう思ったのだろう。


 さらに力を込め、こう言った。


「昇天なさい!!」

「あ、あ、ああああああっ!!」


 ……女王様がお兄さんを昇天させた……。


 い、いやいや!


 やっぱりこれはお子様には見せちゃいけないものでしょう!?


 あたしは恐る恐る亜里砂ちゃんの方を見ると、亜里砂ちゃんはキラキラした目をして女王様を見ていた。


 これって、絶対あの女王様に憧れちゃってるよね!?


 マ、マズい。


 娘さんに変な知識を植え付けちゃったらご両親に合わせる顔がない!


「ア、アリーサちゃん?」

「凄い! 格好良いです! ところでお姉さん。昇天ってどういう意味ですか?」

「うえっ!?」


 しょ、昇天って、あれでしょ? そ、その……い……イッちゃ……。


「昇天とは。霊魂などが浄化され天に昇っていくという意味だ」

「あ、そっか。ギデオンも悪霊みたいなものだからピッタリですね!」

「うむ」

「そ、そうそう! そういう意味よ!!」


 あ、あっぶな……。


 あやうくあたしが亜里砂ちゃんに変な意味を教えるところだった。


 っていうか、昇天ってそういう意味だったんだ。


 あたしが一人で納得していると、隣から視線を感じた。


「な、なによ?」

「ん? いや、お前はどういう意味で捉えていたのかと思ってな」

「なっ! あ、あたしだってアンタと同じ意味で捉えてたわよ!」

「本当か? その割には随分と慌てていたようだが?」

「そ、そんなことないわよ!」


 なにコイツ!? あたしの心でも読めるっていうの?


 NINJA……格好はふざけてるけど、侮れない奴だわ……。


 あたしがNINJAからの追求を躱していると、そこに女王様がやってきた。


「ふう……男性を昇天させるのは気持ちが良いですわ」

「やっぱりそういう意味だったんじゃないのよ! っていうか、そういうことを子供のいる前で言うな!」

「あら? 男性に取り憑かれたギデオンを女性のわたくしが浄化する。女性が男性に力で勝るのが気持ちいいという意味ですわよ? それ以外になにか意味がありまして?」

「ほら、やっぱりそう意味で捉えていたんじゃないか」

「グルか!? アンタたちはグルなのか!?」


 なんだ!? この流れるような連携プレイは!


 あっという間にあたしが変な意味で捉えていたことになっちゃったじゃないか!


 いや、確かにそう思ったけども!


「お姉さん、どうしたんですか?」

「え? い、いえ。なんでもないのよ?」

「ふーん。ところで、別の意味ってなんですか?」

「なんでもありません!!」

「えー? 教えて下さいよお。お姉さんたちだけ知ってるなんてズルいですよ」

「ズルくないの! お、大人になったら分かるから。それまで待ちなさい」

「ちぇー」


 ふ、ふう……。


 どうにか丸め込めたみたいね……。


 安堵の息を吐いていると、二人が必死に笑いを堪えている姿が見えた。


「ア、アンタたち……」

「おっと、いつまでもここにいるとまた面倒な輩に絡まれてしまうな。早々に離脱するとしよう」

「そうですわね」


 なんで笑っているのか二人を問い詰めようとしたら、そう言ってこの場から離脱された。


「ちょっ! あたしも!」


 あたしたちだけ取り残されてはたまらないので、あたしと亜里砂ちゃんも二人の後を追って離脱した。


 そうして抜け出した先は、今回もどこかのビルの屋上だ。


「アンタたちねえ……」

「ちょっと待て。先に私の用件を済まさせてもらおう」


 今度こそ二人を問い詰めようとしたとき、ネルが割り込んできた。


「マル! マル! いるんだろう、出てこい!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 女王様の正体が明かされた時が怖い。
[一言] この痛いSMの女王様は‥‥まさかw
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