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ごめんね

 麻衣ちゃんが泣いてる。


 私を抱きかかえて、私のために泣いてくれている。


 ああ、私はなんて馬鹿なんだろう。


 麻衣ちゃんをこんなに悲しませるなんて。


 大事な親友を、一番大事な幼馴染を泣かせるなんて。


 そう言葉にしたいのに、身体が動かない。


 言葉が出てこない。


 そうしてる間も、麻衣ちゃんは私をずっと抱きしめてくれていた。


 ずっと私のために泣いてくれていた。


 抱き締められていた私の心に、温かいものが流れ込んでくる気がした。


 心が、温かいもので満たされる気がした。


 麻衣ちゃん。


 私の大好きな麻衣ちゃん。


 ごめんね、ありがとう。


 私の心を救ってくれて。


 私の心を温かいもので満たしてくれて。


 本当にありがとう。


 そこで目が覚めた。


「……夢?」


 ……なんて夢を見たんだろう。


 麻衣ちゃんを泣かせるなんて。


 でもきっと、あれは夢だけど夢じゃない。


 私の勘違いだったとはいえ、麻衣ちゃんを拒絶してしまった。


 それなのに、麻衣ちゃんは私の心配をしてくれた。


 あれは夢じゃなくて、本当に麻衣ちゃんは私のために泣いてくれたんだと、不思議とそう思えた。


 謝ろう。


 拒絶してしまったことを、恨んでしまったことを謝って、また仲良くしてと言おう。


 そう思って身体を起こそうとしたら……。


「ひぎゃあっ!!」


 全身を焼けるような痛みが襲った。


「い、痛いい!!」


 なにこれ?


 全身が痛い!


 私の声を聞いたお父さんとお母さんが、慌てて襖を開けて部屋に入ってきた。


 襖?


 え? なんで? ここ客間なの?


「絵里! 気が付いたのか!」

「大丈夫!? 絵里!」

「だ、大丈夫じゃない……なにこれ? 全身が痛い」

「えっと……あのね……」


 それからお母さんから聞いた話は、とても信じられないものだった。


 私が悪魔憑きになってしまったこと。


 その際、部屋の窓を壊してしまったので私の部屋が使えないこと。


 そんな私を、世間で魔法少女と呼ばれる人が助けてくれたこと。


 悪魔憑きになった人は、その後地獄の筋肉痛に苛まれることを教えてくれた。


 え、じゃあこれ筋肉痛なの?


 尋常じゃないくらい痛いんですけど?


「魔法少女さんは、明日になったら病院に行くようにって言っていたから、明日は病院に行くぞ」

「う、うん」

「本当にもう、心配させて……」

「ご、ごめんなさい、お母さん」

「それで? 筋肉痛以外は大丈夫なのか?」

「うん。特にそれ以外は」

「そうか。それなら今日はもうこのまま寝なさい」

「はーい」


 お父さんに言われて私はそのまま布団に横になった。


 お母さんの話を聞いて、私はちょっとだけ残念に思っていた。


 そっか、私を助けてくれたのは魔法少女さんなのか。


 麻衣ちゃんじゃなかったのかと。


 それでも、私はなぜか確信があった。


 私の心は今、前みたいな苦しい感情ではなく、温かいもので満たされている感じがしている。


 なんだか、心が救われたような気になっている。


 身体を救ってくれたのは魔法少女さんかもしれないけど、心を救ってくれたのはきっと麻衣ちゃんだ。


 そんなはずはないのに。


 お母さんは、魔法少女さんが私を抱きかかえて連れて帰ってきてくれたと言っていたのに。


 なぜか私の心を麻衣ちゃんが救ってくれたのだと、信じていた。


 なぜだろう。


 分からないけど、そんな確信があった。


 あ、でも、ちょっと待って。


 魔法少女さんは、なんで私の家を知ってたんだろう?



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