テレビ、怖い
今までは、ギデオンに取り憑かれた悪魔憑きの人を浄化したらすぐに立ち去っていた。
けど今日は、突如現れたNINJAと言い争ってしまい、長くその場にとどまってしまった。
この機会を狙っていたんだろう、リポーターさんたちが全力で走ってきたのが分かる。
めっちゃ息乱れてるもん。
カメラマンさんとか、吐きそうな顔してるし。
そんな、息が切れ鬼気迫る表情のリポーターさんから向けられるマイクと、息の荒いカメラマンさんから向けられるカメラのレンズはめっちゃ怖くて、あたしと亜理紗ちゃんは、咄嗟にNINJAの後ろに隠れた。
「お、お前ら……」
NINJAはあたしたちに非難の目を向けてくるけど、こういうのは大人の仕事でしょ!
年齢知らないけど。
あたしと亜理紗ちゃん二人で首を横にフルフルと振ると、NINJAは諦めたように溜め息を吐いてリポーターに向かって言った。
「我らは、とある機関のエージェントだ」
とある機関のエージェント!!
どんな中二病設定だ!
必死に笑いを堪えてプルプルしていると、NINJAがこっそり後ろに手を回しあたしの頭を掴んだ。
ちょ、い、痛……。
「そ、その機関とは……」
「極秘任務なのでな、これ以上のことは言えない」
ご、極秘任務を遂行してるエージェントが、こんな堂々と表に出てきてどうすんのよ!
「ぎょわ!」
「え?」
「なんでもない」
またも笑いの発作が起きたあたしの頭を、NINJAはギリギリと締め付ける。
ちょ……マジで痛い……。
「そ、それでは……アレは一体なんなのでしょうか? 警察でも自衛隊でも対処できなかったのですが……」
リポーターのお姉さんは、倒れている男三人を見た。
その男の人たちは、駆け付けた救急隊員の手によってストレッチャーに乗せられているところだった。
一瞬そちらに目をやったNINJAは、再度リポーターのお姉さんの方を見た。
「あれは、ただ操られているだけだ」
「た、確かに、日本中……いえ、世界中で同じような事件が起きていますが、犯人は口を揃えて『覚えていない』と言っています。その辺りと関係があるのでしょうか?」
「その者たちの言う通りだ。操られているときの記憶はない」
「し、しかし、操られているとはいえ、暴れている姿は尋常ではありません。もしかして、何かの人体実験ではないかとの声もありますが?」
「極秘事項だ」
「で、では、アレを鎮めた手段については……」
「極秘事項だ」
「そ、その格好には、なにか意味が?」
「……」
矢継ぎ早に質問してくるリポーターのお姉さんに辟易してきたのか、NINJAはこちらを見ると、また顎をクイッってやった。
「もう行くぞ、お前たち」
「「「え?」」」
唖然とするアタシと亜理紗ちゃん、そしてリポーターのお姉さんを置き去りにして、NINJAは突然ビルの上に飛び上がった。
アイツ、逃げやがった!
「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよ!!」
「置いて行かないでください!!」
あたしと亜理紗ちゃんは慌ててNINJAを追い、その場から飛び去った。
どさくさに紛れて、あたしたちも逃げる!
飛び去ったあたしたちの足元では、リポーターのお姉さんがこちらを見てなにかを叫んでいた。
「待って下さーい! 忍者さん! 魔法少女さーん!!」
だから、魔法少女って呼ぶな!!