その誤解はいけない!
「はい、はい。いえいえ、そんな! 全然迷惑なんかじゃないです!」
あたしは、亜理紗ちゃんのキッズ携帯を借りて、亜理紗ちゃんのお母さんと電話していた。
「はい、では亜理紗ちゃんは責任を持ってお預かりします……はい、はい、失礼します……ふー」
電話を切ったあたしは、思わず息を吐いた。
大人の人と電話するの、すっごい緊張する……。
「ありがとうございますお姉さん。これで、一晩中一緒にいられますね!」
「あー、それはいいけど……うちのママにも言っとかないと。ご飯、ウチで食べるでしょ?」
あたしがそう言うと、亜理紗ちゃんは、あっ、と今気付いたという顔をした。
「ご、ごめんなさい……そこまで考えてませんでした……」
そう言ってシュンとしてしまった亜理紗ちゃん。
その様子は、本当に迷惑をかけてしまったと反省しているようだったので、項垂れる亜理紗ちゃんの頭に、あたしは手を置いた。
「全然、迷惑なんかじゃないよ。でも、急にお泊りとかビックリするから、事前に言っておいてくれるとありがたいかな」
あたしがそう言うと、亜理紗ちゃんはバッと顔をあげた。
「おねえさん……」
そして、あたしに抱き着いてきた。
「おねえさーんっ!」
「おっと」
こうして亜理紗ちゃんと交流を図っていると、横からネルが割り込んできた。
「それで、ずっと一緒にいたいということは、もしギデオンが現れたときは、一緒に行くということでいいのか?」
「はい!」
ネルの質問に、亜理紗ちゃんは元気に答える。
「そうか。それで、昨日教えたことはちゃんと復習したか?」
「はい先生!」
亜理紗ちゃんはそう言うと、装備を起動し魔法少女の姿になった。
「昨日、家に帰ってからも練習しました! 見て下さい!」
生み出したステッキに、ごく少量の光を生み出す亜理紗ちゃん。
そのときだった。
「姉ちゃん、ちょっと漫画貸して」
突然、光二がノックもなしに部屋の扉を開いた。
「うわああっ!!」
「ひゃあっ!?」
なんでこのタイミングで光二が入ってくんのよ!?
あたしは大急ぎで亜理紗ちゃんを抱き抱えると、ベッドへ放り投げた。
そして掛け布団で包み、光二からは見えないようにする。
どうか、亜理紗ちゃんの魔法少女姿、見られてませんように!
そう願いながら扉を見ると、そこには呆然とした顔の光二がいた。
ちっ! 見られたか!?
あたしはマズイことになったと思ったが、違った。
「ね、姉ちゃん……亜理紗となにやってんの……?」
「え?」
光二のその台詞で、あたしは今の状況を振り返ってみた。
今のこの部屋には、光二の目からはあたしと亜理紗ちゃんの二人しかいないように見えている。
つまり、密室に二人きり。
そしてあたしは今、亜理紗ちゃんをベッドに押し倒し、上からのしかかっている。
えーっと……。
「ち、違うのよ?」
あたしはそう言うが、光二は涙目になりながら後ずさり……。
「ね、姉ちゃんに……姉ちゃんに亜理紗、獲られたー!」
「人聞きの悪いこと言うな!!」
あたしは、不名誉なことを叫びながら走り去る光二を必死に追いかけた。