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お姉さんぶっても良いじゃない

「あ、あれって、まさか……」

「ふむ。君以外の適合者のようだな」

「やっぱり? こんな近くにいたんだ……」

「そのようだな。それにしても……また魔法少女か……」


 現れた適合者がまた魔法少女だったことに、ネルの声のトーンが下がる。


 この魔法少女というものは、他の星々では見たことがないらしく、この地球で次々と魔法少女が生まれていくことにネルは頭を抱えていた。


 強ければいいと思うんだけど、なにが気に入らないんだろう?


 落ち込んでいるネルを見ていると、その間に魔法少女が口上を述べていた。


「暗黒面に囚われたお姉さんの心。今すぐこの、魔法少女アリーサが救い出してあげます!」


 ……うわ、なりきってるなあ……。


 魔法少女アリーサって……。


 後ろ姿だから顔は分かんないけど、体型とか声の感じからすると多分十代前半の少女だ。


 この歳の頃は、まだこういう格好をするのが恥ずかしいとかあんまりないんだろうなあ。


 むしろなりきってるし。


 あたしがそんなことを考えているうちに、少女は魔法のステッキを生み出し悪魔憑きのお姉さんに突き付けた。


「またステッキ……」

「もういい加減諦めたら?」


 少女が生み出したステッキを見て頭を抱えるネルをよそに、少女の動向を伺う。


 ステッキの先端に光が集まっていき、そして……。


「悪霊たいさーん!!」


 そう叫ぶと、ステッキの先から光が迸った。


 その光は、真っ直ぐにお姉さんの胸の辺りを撃ち抜いた。


 ……。


「あ、あれ? あの子の光、随分細くない?」


 なんというか、普通のレーザー?


 そんな感じだった。


 撃ち抜いたのも胸だけだったし。


 そう言ったら、ネルが呆れたようにこっちを見た。


「君のが太すぎるのだよ。なんなんだあれは? 身体丸ごと包み込んでしまう光なんて、私も見たことなかったよ」

「そ、そんなこと言われても……」

「別に咎めてるわけじゃないさ。君の浄化の光は、ほぼ一撃で決まるからな。それは凄いことなんだ」

「へえ」


 そうなんだ。


 ……ん?


 ってことは……。


「ふう。みなさん、もう安心です! 悪魔憑きはこの私……」

「馬鹿! まだ終わってない!!」

「え?」


 ネルが今言った『一撃で決まるのは凄い』という言葉。


 ということはほとんどの装備者は、一撃では悪魔憑きを倒せないということだ。


 案の定、あたしが叫んだあと、お姉さんはすぐに起き上がった。


 そして、そのまま真っ直ぐ少女に向かう。


「……あ」

「ぅあぁぁあああっ!!」


 想定外の事態に、少女は固まってる。


 そこに復活したお姉さんが迫る。


「きゃああっ!!」


 お姉さんの振り回す自転車が少女を打ち込まれる寸前。


「だはあっ!!」

「げふっ!」


 あたしは、少女に体当たりをかまし、そのまま抱き抱えてその場を離れた。


 なんかお腹にタックルをしかけた感じになって、少女から変な声が漏れてたけど……。


 お姉さんの攻撃をモロに喰らうよりはマシだったと思ってもらおう。


「何やってるの! 油断しちゃ駄目でしょ!」

「えふっ……あ、あなたは……?」

「あなたのお仲間……ってところね」


 あたしはお姉さんを警戒しているので、地面に降ろしたあと苦しそうにしている後ろの少女の方は見ない。


 決して罪悪感からではない。


 後ろから少女の視線を感じながらも、あたしはお姉さんに自分のステッキを向けた。


「え? あ、え?」


 あたしのステッキに集まっている光を見て、少女が驚きの声を漏らす。


 さっきの少女の光より、随分大きいからなあ。


 ネルから、他の適合者に比べて格段に強いとか言われ続けてたけど、比較対象がなかったから今まで実感はなかった。


 だが実際にこうして見てみると、違いが分かる。


 それに、少女はあたしより随分年下だ。


 ここはちょっと、お姉さんぶらせてもらおう。


「よく見ておきなさい。これは……」


 あたしはそう言うと、お姉さんに向けたステッキから……。


「こう使うのよっ!!」


 光を放った。


 あたしのステッキから放たれた光は、さっきの少女とは比べ物にならないほど極太の光。


「ご、ごんぶと!?」


 背後から驚いている少女の声が聞こえる。


「てぇああああっ!! 改心しなさあーいっ!!」


 その少女の声を聞きながら、あたしは全力で浄化の光を放ち続けた。


 そしてその光が収まったとき、ギデオンに憑りつかれた者特有の黒いモヤのようなものは無くなり、お姉さんは気を失って倒れていた。


「ふう。改心完了!」


 ギデオンも浄化できたし、お仲間の適合者も助けられたし、結果は上々かな?


「大丈夫? ごめんなさいね、手荒な真似しちゃって」


 あたしは、お姉さんぶったまま後ろを見ずに少女に声をかける。


 無事に事態を収められたことと、ちょっとした優越感からお姉さんぶった態度は継続中だ。


「あ、あなたは……」

「あなた、ひょっとして戦うの初めて? 駄目よ、油断しちゃ」


 くぅ~、魔法少女のピンチを救う先輩魔法少女。


 こういうのやってみたかったのよ!


「ほら、立てる?」


 そう言いながら振り返って少女に手を差し伸べようとした、そのとき……。


「……お姉さん?」

「……ん?」

「コウちゃんのお姉さん?」


 ……。


「はい?」

「やっぱり! コウちゃんのお姉さんだ!」


 こ、この声……まさか!?


 あたしはこのとき、ようやく少女の顔を正面からしっかりと見た。


 実はこの装備に備わっている認識阻害の装置は、同じ装備をしている者には効果がない。


 そうしないと、味方同士も分からなくなるから。


 あたしは、認識阻害がかかっていない少女の顔を見て目を見開いた。


 う、うそ……この子……。


「あ、亜理紗ちゃん?」


 新たな魔法少女は、光二のクラスメイト、亜理紗ちゃんだった。


 ……マジ?


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