黎明の章 星海からの探索者 設定
ペルシウスと呼ばれる島宇宙の辺境星域でひとつの惑星が超兵器を駆使した自滅的な戦争で滅亡した。星の名はその住人の多くから地球と呼ばれ、宇宙社会からはサラスと称せられる未開惑星である。
当時、滅びゆく母星の同胞を見捨てるように密かに宇宙に脱出していたその星のエリートたちはすでに数多くのスペースコロニーを建造して子供を生み、育て、億を越える規模の宇宙社会を形成していたにもかかわらず、その運命は一気に悲惨なものとなった。
サラスを新時代にふさわしい新世界へ生まれ変わらせる作戦計画「オペレーション・フェニックス」はその前段階である「骸作戦」の思わぬ暴走で、人類の人口は予定の30%どころか0.3%以下へ落ち込み、地上社会の再建は一気に困難なものとなった。
さらに超兵器の影響により、地脈を流れるマナの暴走が引き起こされた結果、急激な天変地異が引き起こされて地上の生態系すら壊滅してしまう。
策源地でもある母星の実質的な滅亡は、恐るべき事態を引き起こした。それまで親密な協力者だった異星人勢力がその姿勢を一変させて、混乱の収拾を名目に宇宙活動計画の本部でもある月司令基地を制圧するや、スペースコロニーや各惑星都市に居住する”サラス系宇宙人”に対し、これまで行ってきた支援の継続中断を宣告し、母星に代わる天体領域の提供と引き換えに徹底した隷属を要求し始めたのである。
完全に独立した経済システムを構築する直前に母星を失い、衝撃と不安で動揺する元サラス人達は回答の期限切れを理由とした電撃的な奇襲の連続と超時空ナノマシンを駆使した管制システムへの巧みなハッキングで抵抗する間もなく次々と制圧されると、強制的な精神改造措置を受けて奴隷にされ、次々と過酷な環境での労役従事者として星々の彼方へ散らされるように宇宙の彼方へ消えていき、サラス人の歴史は悲惨な終幕を迎える事となった。
その中で、異星人の意図に不穏なものを察知した最高司令部職員の献身によってかろうじて脱出したごく一部の人々が居た。
しかし、故郷の星を失い、当ての無い逃避行を強いられた人々の船は、”故郷の星を滅ぼした愚かな種族の遺民”としてあらゆる異星人勢力から亡命受け入れを拒絶され、恒星間航行に用いられるポータルの使用さえ禁じられてしまい、進退窮まったまま、敵の追撃を受けて宇宙船の生命維持機能は大きく損なわれ、最寄の恒星系への漂着すら不可能となる。どうせ死ぬならば故郷の星を見て死にたいと覚悟を決めて地球近辺に戻ったものの、母星サラスの生存者は無傷な地下都市内のわずかな数でしかなく、しかも、母星滅亡の責任を巡って殺し合いさえ始めるという有様だった。
あまりの惨状に同士討ちをやめるよう通信による呼びかけを始めたものの、その動きを敵に察知され、周囲を追跡部隊に包囲されてしまう。しかし、その矢先に奇跡が起こった。未知の巨大宇宙船がポータルに拠らず、自力で時空転移を遂げて出現。状況を問うテレパシーに応えるや彼らの受け入れを承諾し、そこに亡命を果たす事が叶ったのである。
一方、追跡者側は驚愕した。その巨大宇宙船ははるか古代にペルシウス銀河を席巻し、滅び去った宇宙国家の軍艦に酷似していたからである。
その見かけにたがわない性能を持つその船は驚異的なロストテクノロジーを駆使して追跡部隊を容易くあしらうと、到着した増援部隊の攻撃をものともせずにその場で時空の彼方へ転移していった。
それこそがサラスと呼ばれるラー星系第三番惑星のみならず、アルカタ星団の歴史を大きく覆す事となる事件の始まりでもあった。
主な舞台
ペルシウスと呼ばれる島宇宙の一角に存在するマヤート渦状肢内、アルカータ星団の中心部に近い多重恒星系ラーの第三惑星サラス(サラとは”涙”を意味し、”悲劇の絶えない涙星”という意味を持つ)
宇宙の仕組みと魔法科学
物質宇宙は潜在宇宙と呼ばれる領域において、大いなる意志から発された現象化エネルギーが分岐した多次元世界へ流入していく時にその次元世界の潜在宇宙領域において、ある種の意志による導きで様々な出来事が現象化していく。これを事象確定現象といい、潜在宇宙領域において決定された現象化の発生によって、現れる”事象の方向性”次第で、宇宙は他の宇宙へと分岐するか、他の宇宙と融合を遂げており、そうしながら無数の多次元宇宙同士が繋がりあって存在している。その意味では表層宇宙の物理法則は潜在宇宙の物理法則の影響下にあると言える。
表層宇宙ではプラズマを媒介とした電気や磁気によって天体の運行や自然現象が左右され、渦状の電磁場をより広い領域に展開している電磁場と共振させるように展開することで反重力場や重力場が生成され、それが物質のもつ質量を決定し、これに天体固有の電磁重力現象(サラスの衛星グーンのように死んだ星にはこれが無い)による重力場と反重力場の均衡によってその星の総引力が決定されいる。(よって、ラー星系の主星ラーや第五惑星バレイラスのようにサラスの千倍以上の引力を持つはずの星であっても、数十G程度の引力しか発揮しないといった事態も普通に存在する。)
光の速度は通過する時空領域に存在する物質の磁気的特性によって変化し、いわゆる絶対的な光速はありえない。(それでも、速度の上昇が慣性質量の増大を引き起こすことは確かであるがそれはあくまでも正比例の関係にある)
あらゆるエネルギーの大元として、意志によって発現する精神エネルギーが存在し、それが物理的世界に影響を現す過程で光、熱、電気、磁気、重力へと変遷し、諸現象の物質化を促すと言うのが物理上の根本原理である。(なお、重力の正体は質量ではなく、原子の持つ電磁場によって固有の重力場が生み出された事による。)
魔法も精神エネルギーの効率的かつ効果的な技法として存在しうるが、発想の根本において物質科学とは異なる方向性を有するため、その行使を前提とした利器には多くの場合、精神感応、もしくは擬似的な精神感応力を持つインターフェースを必要とする。
なお、魔法の根幹となる魔力とは精神エネルギーの特性によって発現する潜在宇宙に満ちている現象化(物質化)エネルギーのことであり、光(創生)と闇(破壊)の方向性によって発現する効果が異なる。この潜在エネルギーがより物質次元に変移したものが虚数電磁場であり、これを効果的に引き込んで電力化する装置は、しばしば永久機関と誤解されている。
種族
天体生命
大気や核を備えた惑星規模の生命体で人間をはるかに超える知性と認識力を持つ。なお、彼らの1秒は例えるなら人間の10年や100年に相当する為、膨大な時空領域を霊的認識範囲内に収められる霊的知覚能力者でない限り、まともなコミュニケーションは不可能であるが、それが成立すれば、契約を結ぶことで国土や民族単位の加護を受ける事が出来る。(ヘブル民族の第一救世主・モーゼスもその一人)
平時は穏やかだが、緊急時に行使する力は絶大で、いざともなれば恒星系の運行に支障をきたすような異物に対し、重力的な衝撃を送り込んで破壊することさえやってのけるほどの力がある。
人類
宇宙のシステムを整備し、メンテナンスをする為の手段としての技術文明構築の為の能力を与えられた生命として、天体生命の意志によって生み出された知的生命体。サイズは様々で小人や巨人の類もそれに含まれる。
様々な星星の環境次第で普通の人間のみならずエルフや魔族、ドラゴニュートやリザードマン、人魚、獣人、昆虫人間などが多種多様に存在し、サラスにおいても地下空洞や海底洞窟を含めればそのような存在はわずかづつであっても存在する。
魔力が強い人間はオーラも大きく、稀な場合は太陽のように強大なオーラを持つものもおり、そういう人間は魔術の鍛錬無しでも並みの魔術を超える超能力や常識はずれの強運を持っている。
人種的な区別で見ると、人間そっくりの者は少数派であり、特にラー星系で見ると、攻撃的な外来者の内、武断的な恐竜系のドクラス人、策略に長けた爬虫類系のヴァルシア人が目立つ存在でイルカ系のアトー人や蟷螂に酷似した頭部を持つメイラ人などもいるがその大半は概ね人型であり、例外的に一部のドクラス人のように尾がある者や、第四惑星バルムスのミュルドン人などのように4つの腕を持つ者やポー(天狼)星系のニャヌスのノンモ人やオアンヌ人のように半人半魚型の水棲人もおり、実質的に多種多様と言える。
知能は脳の覚醒を促す医療技術や技能しだいで違いが生じやすく、同じサラス人であっても、一般的な環境で過ごした場合と、異星人の支援で脳の機能開放措置を受けながら鍛錬された場合では知能が何倍もの開きが生じてしまう。
この極端な現象は他の異星人種にはほとんど生じておらず、その意味ではサラス人は優れた潜在能力の持ち主が多いと言え、ごく一部ながら異星人によって宇宙社会へ連れ出されたことで、奴隷や漂流者の身分から銀河連邦の高位の軍人になりおおせたユーリ・ゼフロスやミスロン提督のような者もいる。
動物
そのほとんどは人類よりも知能は低い生き物。
哺乳類は感情が豊かな分、思考活動も活発で、単純な人間の会話は理解するし、人間で言えば日常会話程度の情報交換は吠え声等で行える。
爬虫類は総じて聡明だが感情が乏しく、本能的な衝動性の高いものが多く、総じて暴力的な傾向があり、人間や同族を捕食するものさえいる。
総じて霊感は高いため、魔力の検知能力も優れている。
なお、脳機能の亢進措置によって、常人をはるかに超える高知能を獲得することも可能。
昆虫
虫。惑星の重力次第で巨大なものも存在しており、特に巨大なものは多くの場合、ミミズのような姿をして、水中や地中に生息している。サラスのような生態的な実験場として用いられている惑星では異星人類の遺伝子実験による品種改良が逐次施されている影響で、ほぼ毎日、新たな種が発生している。
精霊
古代から妖精や霊的な妖怪などと認識されている霊的生命で特定の霊的、エネルギーパターンに呼応して次元転移によって3次元空間に現出するとき、プラズマ状の姿を現出させるという特徴がある。
その種別によって行動様式や形態は異なり、下等な存在は”火”のように単純な行動しかしないが、高等なものは”魔神”や”神霊”として語り伝えられているものさえ存在する。
宇宙人類の中には生命の高次元化を遂げることで精霊化したものもおり、そうした存在の中には自分の肉体を物質次元へ変移させて行動できるものも居るが、その場合、普通の物質次元生命体並みに物理的な破壊による死にさらされやすい脆弱な存在になる。
多くの場合小人に近く、単純で子供っぽいが、中には一般的な人間を凌ぐ博識な存在もいれば、山のような巨岩を空中へ浮揚させたり、時空転移を行えるものもおり、高度な魔法文明は目的に合わせて彼らを人工的に生み出し、使役もしている。サラスにおいても魔法文明が全盛を極めていた時代に生み出された精霊がおり、信仰等による慰謝の念を利用して得られる人間の精神エネルギーを糧に活動している。
特別な例を除いて、彼らは異なる時間の流れの中を生きているため、人間が彼らと会話レベルの接触を実現する場合は彼らと精神的な同調作用を引き起こすことで精神的に彼らの時間の流れに入り込まなければならず、その結果として時空を超えた認識能力を備えていない人間が彼らと接触しても、元の時間の流れに戻る際にその時の記憶を失う傾向にある。
時折、人間の中に、ふと気付くと自分が何をしていたか覚えていないという経験をする人間は多くの場合、彼らと接触していた疑いがある。
霊(人霊/動物霊)
プラズマ体である霊体をまとった状態の魂。魂の起源は元々、神霊から派生した分霊体であり、その中でも高い知性や強固な意志を有する者が人間として生きると名将や能吏などの英才となる事が多い。
生きている状態では霊体は神経組織による同調作用により多細胞生物の肉体に定着する事となり、脳による時間軸調整作用で物質次元の時間的経過を心理的時間軸にほぼ同調させている為、人間のように思考の複雑な生き物ほど本人の性格や心理状態次第で自分の本質が霊である事に気付く者も多いが、気付いても頭から否定しているために表面意識的に察知できないものも多い。
神霊
霊の本体的な存在で、多数の霊の起源的存在である。
能力的にも際立っており、その多くが滅び去った古代超宇宙文明のかつての有力構成員だったもの達の霊で、転生を繰り返すことで人類社会を牽引する役目を負うことが多く、歴史的に見ても天才や英雄や賢者として知られる存在も多い。逆に邪悪な英雄や悪魔的存在もほとんどが彼らである。
惑星サラスにおいても神霊は多数存在し、その頂点はヘブル民族の第二救世主として語り継がれるヨシュア・イマヌエルと呼ばれる大神霊である。
アルカータ星団
サラスの人間にとって恒星の中でラーを除けば、肉眼で見える最も明るい恒星ポー(一部のサラス人からは天狼星と呼ばれている)を中核とした恒星系が数十の恒星系をほぼ従えた状況にある星域で、実は数十億星間単位の遠い恒星系や別な宇宙へと通じるほどの高度な異界門と連動した存在でもあり、第一次銀河帝国エルディアの辺境領域の中核であり、軍事に長けた才幹を持つ皇族が総督として総督府を置くほど重要な地域だった。
現在、そこは旧総督府が残した第一次銀河文明の遺産の所有権と高度な異界門領域の制宙権を巡って、周辺の宇宙国家が競って押し寄せ、睨み合う緊張状態にあり、地元の知的生命体に由来する高度宇宙文明による一極支配が成立し得ないゆえの不安な状況にある。
恒星ラー
アルカータ星団の一部を構成する恒星系の主星。
銀河中心部から伝達されるビルケランド電流によって生み出される磁場によって空間からエネルギーを呼び出して星全域を覆うプラズマを形成して発光する天体で、この世界では標準的な恒星。実はその内部には巨大な異世界門が存在する。
なお、従える12の惑星の他にいくつかの多次元漂流惑星が周回している。
第一惑星 ゼラス
ラーに最も近い惑星で、昼の面と夜の面の温度差が大きい。
昼の面は脆弱な生き物の生存を許さない60度を越える高温にある為、大地は大きくひび割れた岩肌が多く、主に重水で構成された海が、常に夜の面に位置しつづけることで、夜は赤道面を中心とした広範囲が時速100kmを超える濁流に晒される事で大地が冷却され、朝方はかなり涼しくなるという特徴がある。
大気はサラスと比べて希薄なために、空は濃い紫色で極地方は蒸発した大量の水蒸気が方々に虹を描く美しい景色でも有名である。
自然の荒々しさのために地上にはほとんど文明社会は構築できず、駐留する異星文明人の基地も地下に多く存在する。
第二惑星 エーニス
大きさも重力もサラスとほぼ同じで、サラスほどではないにせよ広大な海洋と熱帯樹林に大半を覆われた惑星。
大気中の二酸化炭素量が多く、大気圧も10倍近く、気温も40~50度で湿度も高い蒸し暑い環境である。
過去に異星からの避難民や宇宙戦争に敗れた亡命勢力が移り住んでおり、主要な人種はサラス人に似ているが黒目が極端に大きいという特徴がある。
大気上層は分厚い雲に覆われているが、これは亡命勢力が追跡者の目を逃れるために設けたステルス技術の一部である。
第三惑星 サラス
人間型の知性体が支配権を確立して以降、3億年以上にも及ぶ興亡盛衰の歴史をつむいできた惑星。前半期には第一次銀河帝国の一方面を預かる総督府が置かれるほどの文明社会の中心に位置していたが、”大戦”の敗北により崩壊後は、文明が再建されても自滅的な行為による居住環境の崩壊や、衰退による野蛮な勢力による侵略を引き起こしてしまい、その度に文明水準も原始人並みにまで後退するなどの苦難を経験してきた。
サラスの自然環境もその文明の攻防盛衰に伴う環境の激変で大きく変遷しており、その大きさも度々変化するなど天体として並外れた生命力を持っている。
自然環境は起伏に富む地形と広大な水圏によって多種多様で変化に富んでおり、生命工学上の実験場としても極めて利用価値の高い条件を備えている。
1万2000年近く前に星間旅行も可能な水準に達していたパ・ムーとアトラスの両大陸の文明が崩壊して文明的な衰退の後に、その2000年後に勃発した世界規模の核戦争や、その後、度々繰り返された戦乱を経て1万年後の現在、その地上の大部分が地域国家に区分けされた政治情勢にあり、惑星規模での紛争や政治抗争が絶えない状態。
又、一部の地域住人が爆炎で進む丸木舟のような船を用いて様々な機器を周回軌道へ投げ込む程度の宇宙活動を実施するなど、稚拙ではあっても宇宙社会へ移行する前段階へ進んでいる状況でもある。
ただ、住人の多くは自分達の住む星系はおろか、居住している星にさえ固有名詞を与えておらず、宇宙社会へ参加する意志も覚悟も認識能力も無いものと見なされており、一部の異星人種族から”土人”と陰口を叩かれているが、一部の聡明な者たちは初歩的ながら優れた設計の船を密かに飛ばして、宇宙人社会へ参入しており、徐々に宇宙人化しつつある模様であるものの、その活動は徹底的に隠蔽されているため、ほとんどのサラス人は自分達の同胞が宇宙へ進出している実態を知らない状況にある。
第四惑星 バルスムス
直径がサラスの半分近い荒野の惑星。
大気は0.7~0.8気圧でレーリー散乱も十分あるおかげか、空も明るく青い色だが、地上は大半が荒涼としており、多くの場合、サラスの砂漠地帯のような光景が広がっている赤茶けた荒野の惑星である。
海こそ枯れてなくなっているが、まだオアシスが方々に存在しており、条件の良好な場所には森林地帯さえ広がっており、主としてコケ類を食する動物やそれを捕食する肉食動物もいる。(密かに宇宙へ進出したサラス人が持ち込んだねずみやゴキブリも環境に適応して生きている。)
かつては広大な海に支えられた豊かな自然を有する惑星だったが、大異変後の荒廃で、海洋の消失と大気の減衰によって生き残りを図った人類は主に地下に居住し、4本腕、二足歩行の昆虫人類と赤色の肌を持つ人型人類がその居住区域を分けるように生活していたが、地上を異星人に占領され始めたばかりか、ある日を境に大挙して押し寄せたサラス人にまで地上を好き勝手に荒らされ、その過程で昆虫人類は主要な居住地区諸共核攻撃で滅ぼされてしまう事件まで発生してしまう。結果として、高度な科学力を盾に生存圏を防衛しぬいた赤色人類はサラス人(白人)を無節操で冷酷非情な野蛮人と見なすようになっており、実質的な冷戦状態にある。
第五惑星 サームス
直径がサラスの11倍近い大型の惑星だが、自転速度の速さによる遠心力と強力な反重力場による重力場中和作用により引力はかなり低減され、赤道地帯ともなるとサラスと比べても0.95倍程度しかない。
惑星環境は極めて特異で、各所に存在する火山による噴煙で大気はほとんど太陽光をさえぎっており、火山の噴煙光が星明りのように周囲を照らすほど薄暗く、大気に大量に存在する硫黄分や希薄とはいえ刺激性の強い亜硫酸ガスにより、耐腐食性の弱い物質は急速な劣化を余儀なくされるため、例えば大気中にむき出し状態の電気装置や精緻な鉄製機械は短時間で機能低下を起こしてしまう。
火山が多いため、露天掘りの可能なレアメタルの鉱脈が方々に存在しており、重工業国家の運営に有利な環境にあるが、火山の爆発による災害の危険も大きい。
特に最大級の火山バランはサラスを飲み込むほどの火口を持っており、かつてそこからの噴火で誕生した新惑星が太陽系を荒らしまわった程である。
さらに広大な海洋を持つが、その表面は比重の軽い不飽和脂肪酸の液体で覆われており、軽い風が吹いただけで大波が発生するため、少し前の時代のサラスに多く見られた水上船舶の類はほとんど発達せず、変わりに反重力による飛行船の技術が伝統的に発達した。
広大な分、各所に様々な動植物の生息する地域があり、(異星人の保護政策により)サラスから運び込まれた恐竜までいる。
元々、サームスに生息していた生命は紫外線に対する耐性に欠けているものが多い反面、大気に含まれる硫化水素を喰らう硫黄細菌を体内に大量に住まわせており、大気中に含まれる酸素と合わせて莫大な活動エネルギーを得られるようになっており、硫化水素が多く含まれる大気中でも元気に活動できるという特徴がある。
人間型の知性体も生息しており、かつては(紫外線の脅威が無い分)皮膚が透明な不気味な外観のモーゴル民族や、金属汚染の過酷な地域に適応したことで青い肌となったサファトール民族などがおり、かつては惑星間旅行をなしとげるほど高度なモーゴル民族が他民族を奴隷化しながらサームスの過半を征したものの、結局はバルスムス文明圏との衝突によって生じた混乱を付いて勃発した内乱で衰退し、現在はサファトール民族がダル王朝時代にモーゴルの文明の重要施設や技術を奪って継承する形で高度近代国家としての枠組みを整え、後に発生した国家分裂による内乱を乗り越えて成立したディウスラ王朝が民族の統一と近代化を成し遂げてバレイラス帝国を築き、サイクラノス人の支援を受けて本格的な宇宙進出を始めつつある。
バレイラスの文明はサラス同様、機械文明が主軸となっているが、硫化水素分の多い大気のため、電子工学の発達が大幅に遅れる一方、生物工学を利用した制御システムを利用した利器が電子機器の代わりに文明の発展を支えてきたという経緯がある。
第六惑星 サイクラノス
サームスに次ぐ巨大惑星で直径はサラスのほぼ9倍。
外観的に惑星周囲を巡る巨大な輪が最大の特徴であり、ラー星系で最も強大な力を持つ宇宙文明の母星で、防衛に徹しているとはいえ、100万隻もの宇宙艦隊を保有しており、近隣の恒星間異星文明からも畏怖されるほどの実力を持つ。
惑星表面の10%程度を占める陸地の大部分が赤道地帯に帯状に分散して広がる海洋惑星でもあるが、その海はサームス同様、表層に負飽和脂肪酸を主成分とする油に分厚く覆われた状態にある。
空は乳白色の雲に覆われている為、大気圏外から可視光による視認だけでこの惑星表面状況を察知することは出来ない。
惑星は快適な居住環境にあり、幾種類もの人種が生存しているが、支配的な立場に居る種族は元はサラス人に酷似した種族で、はるか昔、自らの意識を人工的な肉体に転写する事で永続的な寿命を得た機械人である。
高度な科学力を有し、並みの星間国家の軍事的干渉を撥ね退けるだけのハイテク軍事力も有しているが、勢力圏の拡大に意欲を持たず、一部の宇宙国家代表団を除いて来航を禁止した準鎖国状態にある。
なお、惑星周囲に存在する輪は実は一種の標識であり、これは宇宙国家としてペルシウス銀河の国際法に認められた文明国家の所在惑星である事を示している。
実力的には周辺宇宙国家から敬意を払われるほどの力を持っているものの、実は機械化した事による不死化で輪廻転生の法則から外れてしまい、高次元世界の霊的メンテナンスを受けられなくなったことで、潜在意識レベルで生きる気力となっていた転生目的をほとんど喪失してしまい、その為に無気力化症ともいうべき精神病が蔓延して文明圏の発展が停滞してしまう。最後の希望として、古代人のサイクラノス人の異伝素因子をサラス人の生体データを元に作り上げた肉体に組み込んだ新生人類の体に戻る者が出始めており、その者達は意気軒昂さを取り戻しており、社会の指導的立場に立ちつつある。その中の長老格となる人物がタルー・シアという女性で、惑星サームスの対バレイシア問題を含む星系間外交でかなりの影響力を発揮している。
第一次銀河帝国の遺産が散逸し始めた6千万年前に遡るほどの歴史を持ち、第一次銀河帝国に関する伝承記録や軍事技術を隠匿している。
第七惑星 リアノス
第八惑星 ノルデンス
第九惑星 イウゴス
古代世界編
ヒタ・カ人
紅海からインド洋方面に時折姿を見せる海の民で、大元の拠点をヒタ・カと語っている。
彼らの船は中央の帆が4角だが、前と後ろの帆が三角形という特徴を備え、風上に向かって進むことが出来ると噂されている。
人物
ハリウス・セルディノス