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一周忌を前に

作者: 葵枝燕

もうすぐ一年なんだと

ひっそりと

そんな思いを(いだ)いた


あの日生まれた感情は

あの日心に拡がった感情は

今ではもう跡形もないほどに

薄れて溶けてしまったようで


それでもふと

思い出しては芽を出すのだけれど


思い出すのは

元気だった頃のあなた


思い出すのは

連れ添った相手を亡くした直後の

憔悴しきったあなた


それなのに


顔も

声も

温もりも

私の中には何一つ

はっきりとは甦らない


ああ そうか


私は知らなかった

私は知ろうともしてこなかった


あなたと私

その本当の繋がりのことを


そして今も

知ることを避けている


私はもう 知ってしまったのに


深く 強く

自分へ刻み付けることを

頑なに拒んで避けている


私の中に

あなたが一滴も流れていないこと


二十年余りの間

私は何も知らなかった


そして今も

知ることをおそれている


それでも


私の中に

あなたが流れていないとしても


あなたのことを

何も思い出せないとしても


語れるほどの思い出が

私の中にないとしても


二十年余りのその間

あなたに愛されてきたと

私はそう信じていたい


かかわりを持とうとしなかった

それゆえの薄い喪失感を

抱き続ける私でごめんなさい


何も知らない

何も知ろうとしない

こんな私でごめんなさい


こんな私が

あなたの冥福を祈ること

烏滸(おこ)がましいとわかってる


温もりを思い出せないのは

触れたことさえないからなのに


それでも

ふと思い出しては

願ってしまうから


あなたがいなくなって

一年が経とうとする今も


私の中にないあなたを

思い出せないまま思い出して


薄くおぼろげな喪失感を

ここに抱えて


私は今を生きている

 こんばんは。葵枝燕です。

 『一周忌を前に』のご高覧、ありがとうございます。

 この詩は、二〇一九年六月七日(金)、父方の祖母の一周忌を四日後に控えていた頃に書きました。本当は、一周忌当日に投稿する予定だったのですが、それが叶わなかったので、今さらながら投稿に踏み切ってみました。

 さて。ここで、私と、亡くなった父方の祖母について、お話ししましょう。

 私はずっと、この一年前に亡くなった祖母を、“祖母”だと信じて生きてきました。その祖母が、父の生みの親ではなく育ての親だと私が知ったのは、祖母が亡くなってからです。つまり、私の中に、一年前に亡くなった祖母の血は一滴も流れていません。それまで、そんな事実を知らなかったし、そもそも知ろうとすらしてこなかったことに、私はそのとき初めて気が付いたのです。自分の親の過去にすら、私は興味を持っていなかったのです。

 そもそも、父方の親戚に会うのは、年に数回程度——正月、清明祭、お盆、法事やお祝い事など——で、父方の祖父母にも、年に数回しか会うことがありませんでした。会う度に、ぎこちない反応しかできなかったことを、憶えています。私が何となく、父方の親戚に対して苦手意識があり、会うことを極力避けたいとさえ思っているのも、反応がぎこちないものになる要因のひとつかもしれません。

 とにかく、祖母が亡くなってからやっと、私は父の過去に触れたのです。父を生んだ母親は、父が中学生か高校生の頃、病気で他界したそうです。未成年だった父に加え、まだ幼い叔父がいたため、後妻として迎え入れたのが、私の知る祖母だった——そう、父から聞きました。一番身近な家族、自分の父親の過去を、私は二十年余り経ってやっと知ることになったのです。

 私の中に、あの祖母の血は一滴も流れていない——そんな事実は、あのとき確かに私を揺らしました。でも、そこから先を知るのがこわくて、私は未だに詳しいことを知ろうとしません。父を生んでくれた女性がどんな人なのか、もっと知りたいと思っているところもあります。けれど、知るのがこわいし、父の過去にこれ以上踏み込むのもどうなのかと思うし、そもそも、自分はもっと深く知りたいのかさえ疑問に思えてきます。

 そんな私が、祖母の冥福を祈るのは、烏滸がましいと思っています。それでも、私は、この二十数年、あの祖母に愛されていたと思っています。顔も声も温もりも、何一つはっきりとは甦りません。でも、そう信じていたいのです。

 何が書きたいか、よくわからなくなってしまいましたが、このへんで。

 拙作のご高覧、ありがとうございました。

 長々と失礼いたしました。

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