絶望の道時
もしかしたら……
僕がこれまで生きてきたことは間違いだったのかもしれない……
そう思ったのはいつ頃だったからだろう……
特に夢もなく。かと言って楽しくないことがないわけじゃなかった。
でも……僕には味方がいなかった。
琴吹 幸音、この名前がそもそも本当に自分の名前なのかすら分からない。
両親は交通事故で亡くなったということになっているがそもそも僕の記憶には両親の姿はなく、
施設で育った、いわゆる孤児だった。
そもそも僕は戸籍上に存在しなかったらしい。
というのも、ほとんど大破した車に乗っていたのが僕で、なんとその車、ナンバープレートも何もかもなかったらしい。
その車にあったのは泣いている僕とガラス片と1つの紙だけ。
その紙には琴吹 幸音と書かれていた。らしい。
そうして僕はこの名前で名付けられた。
ちなみに車に僕以外の誰かが居たような痕跡は全くなかったそうだ。
今となれば分かる。捨てられたのだ。
だけどどうでもいい。僕は覚えていないのだ。
ならそれでいい。いいのだ。
そして、僕はどんどん成長していくが周りは粗暴な奴らが多かった。
多分僕がいた孤児院はそういう所だった。
厄介な者はそこに入れる。そんな場所だったのだろう。
勿論そんな場所だったから、大人は僕と1人の女の子の世話を一生懸命していた。
僕ともう1人の女の子はとても可愛いと人気だった。
確かに可愛かったと思う。
粗暴な奴らばかりの場所で、1箇所だけ優しさが溢れる場所があった。
幼い僕は彼女に憧れか恋かも分からない感情を抱いていた。
彼女は僕に優しくしてくれた。
僕が怖く見えなかったのだろう。何しろ中性、いや、女顔だったから。身体は華奢でとても他の奴らと比べると女みたいだったから。
だけど、それに嫉妬した奴らは、いつも、いつも、僕の居場所を無くした。
やがて彼女は何処かに引き取られ、
前よりもさらに居心地の悪くなった場所で過ごすことになった。
人は、環境に育てられると聞いた事がある。
どれだけ親が愛情を注ごうが、関係ないと。
そういう意味では僕は異様だったのかもしれない。
僕は、人を殴ったことがなかった。
……そして、僕は高校生になった。
このまま卒業して、金を返し、こんな場所とはおさらばする筈だった。
突然、黒い車が目の前で止まった。
嫌な予感がした。
車のドアが開いた。
中からは男が3人ほど出てきた。
一番小柄な男は口を開き……
「病院への道……教えてくださいやせんか?」
僕は、嫌な予感を感じながらも、
「すみませんが、お役には立てません。何しろ僕は最近ここに来たばかりでここには詳しくないんです。」
と、笑顔で返した。
少し、時が止まったような気がした。
1番大きい男は笑った。
「ほらなぁ?駄目だろ?最近の子供は防衛本能が高いんだよ。ほら、さっさとやろうや」
僕は逃げ出した。でも、前だけじゃなかった。
後ろにも、いた――――――。
ドガッ……。
そして、僕は意識を手放した。
更新頻度はとても遅いです。
ご了承ください。
感想、アドバイス等いただければ嬉しいです。