久しぶりの訪問
そんな話し合いは決着がつくわけもなく、まずは明日に持ち越しとなり、全員が仕事に戻ろうとした。
その時、お店のドアが開く音がした。
一番に気づいたマヤは小走りでお店に戻る。
そして、毎回欠かさずやることをする。
「いらっしゃいま・・・」
マヤは全てを言い切る前に口が大きく開ける状態となった。
「お、マヤちゃんか?
お手伝いえらいねぇ」
「え、エアリアさん!」
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仕事場を父親とナバーに任せて、母親とマイはエアリアの相手をお店の奥でしていた。
「いつから帰って来ていたのよ、エアリア」
「ウィリー、苦しい・・・」
マイの母、ウィリーはエアリアの服をたぐり寄せるようにしていた。
それに、エアリアはウィリーの手をパンパン叩く。
「あらあら、ごめんなさい。
なにぶん、久しぶりだから」
「久しぶりだからと言われてもなあ。
昔からウィリーは手加減というものを憶えようとしない」
「だから、ごめんなさいって」
二人はマイを忘れてじゃれあう。
エアリアは元々、この食堂の隣に住んでおり、小さい頃はウィリーとよく遊んでいた。
今になっては、エアリアが帰ってくると、お店に顔を出すという感じになっている。
二人のじゃれあいが終わり、次はマイの話となった。
「それにしても、成長期の子って、本当に大きくなるのが早いね」
「それはそうですよ。
エアリアさんと最後に会ってから、もう二年経ちますから」
「二年!?
私も老けたもんだね」
エアリアは大きく笑って、マイとウィリーも続いて笑う。
その後も近況的な話が始まり、先程の家族での問題も出てきた。
その事情はマイがエアリアに話すと、エアリアはある提案を出した。
「うちの船員たちで庭に地下空間を作って、そこに冷蔵庫を置くか?」
「そんなことできるんですか!?」
マイは立ち上がる。
しかし、彼女の隣にいたウィリーは落ち着いていた。
「お願いできるかしら?」
母の変わらない態度に、マイはさらに驚く。
そして極めつけの会話が。
「でも、エアリア。
それが完成するのって、意外と掛かるんじゃない?」
ウィリーからの質問に、エアリアは首を横に振って答える。
「大体、二日程度で済むぞ。
冷蔵庫もうちの在庫にあるから直ぐに持ってくる」
マイは腰を抜かしたかのように座るしかなかった。
(ここの世界、凄すぎる・・・)
今更のようなことだが、このようなことがマイによく起こるのだ。
彼女の前に座っているエアリアによって。
こうして、市場近くの料亭は少しの改造が始まるのだった。