表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

市場の料亭

なみかぶベイラージ

 

今日の海にも波が立っている。


潮風が港町に吹き渡り、市場では多くの人が買い物をしていた。

日曜日の朝となれば、皆が外に出かけている。


町は緩やかな坂があるところに広がっており、年間を通して温暖な気候だった。

とても陽気で幸せのあふれる町だ。

その町の市場に隣接するように一つの料亭があった。


名前は『ダクタリア亭』。


市場が一段楽する頃が一番大変な時間となり、調理場は多くの食材と、調理器具、お皿が並んで、または使われていた。

調理場は夏でもないのに、むしむしとした空間となっており、換気が追いついていない状態だ。


「お父さん!

刺身の盛り合わせ・贅沢を二つ入ったよ!」


調理場の入口から少女が顔を覗かせる。

朱色の髪色は輝いており、額には汗が出ていた。


そんな少女の注文を聞いて、料理長が苦笑いした。


「今日はお客さんが多いなぁ。

そろそろ追いつかなくなりそうだ。

いろいろな意味で・・・」


「父さん。

空調の修理、そろそろやる?」


同じ調理場にいる少女の弟は、注文が入ったように今日獲れた魚を刺身用に捌いていきながら、料理長を気にする。


料理長は「そうだなぁ」と唸る。

部屋の気温計は三十六度をさしていた。

その場の皆が苦笑いだ。


そのようなことをしていると、新たに少女の母親が少女の後ろから入ってくる。


「あなた。

白身魚のフライ定食・ご飯大盛り入ったわよ」


「あぁ、了解。

直ぐに出すから」


そのような合図で、料理長は元の仕事に戻る。


「何かあったの、マイ?」


少女であるマイに母親は尋ねる。

それに、マイは先程の話し合いを母に教える。


「そうね。

そろそろ修理しないと、二人が倒れちゃうかもしれないしね」


「でも、そうすると二日間、お店を閉じないといけないね。

お父さんのことだから、他の場所もとか言って、いろいろ始めちゃいそうだし」


「絶対、そうなるわね」


マイと母親は楽しそうに笑った。

それを聞いていた料理長は苦笑いしながら、二人に言った。


「今度はしないようにするから、注文とかを頼む」


「「りょうかい」」


仕事の合間だが、家族団欒な時間だ。



それから二時間ぐらいして、やっと落ち着いた時間となった。

家族みんながお疲れ様状態だった。


しかし、母親は皆にお茶を入れて「お疲れ様」と言う。

その入れられたお茶を皆で飲む。


「そういえば、マイ。

今日の朝のお客さんの数、どうだった?」


父親は娘に疲れた声で尋ねる。


「今日のお客さんの数、先週の同じ曜日より増えているね。

やっぱり、この前の国の友好間協定が関係しているのかもね。

市場の仕入れのお兄さんたちもそうだって言っていたし・・・」


この前と言っても半年ぐらい前のことである。

西方の国との戦争が終わってから三十年。

いよいよと言っていいほどの期間を経て友好関係が結ばれ、多くの分野で貿易が可能となったのだ。


そのうちに水産物も含まれた。


港には以前より多くの船が来航しており、多くの異国民も出入りしていた。

この料亭にも何人かがお客として来ていたが、言葉がどうにか通じるくらいで、長く話すには至らなかった。


しかし、重要なことはそこではなく、来客数の方だ。


「この調子だと、仕入れを増やさないといけないなぁ。

でも、置く場所が・・・」


「冷蔵庫、もういっぱいだよ。

新しく買うにも高いし、それを置く場所も無いし。

・・・背水の陣かな」


「いやいや、ナバー。

まだそこまで入ってないよ?

新しいメニューとかで埋め合わせとかでできないかな」


マヤの発案に調理場の二人は揃って首を横に振った。


「新しいといっても、それだけで期間が掛かるし、近いうちには無理だね・・・」


「そうだねぇ」


家族みんなでため息をする。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ