表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

5ショートストーリーズ9

ミイラ男君

人は見かけじゃ分らない。僕の経験からもそうハッキリ言えるのだ!

 ミイラ男君は確かに不気味だ。匂いも結構キツイ。

 昨年の九月に、我クラスに編入してきた、いわゆる帰国子女なのだ。


「え~、ご両親のお仕事の都合でエジプトから来たミイラ男君だ。

みんな仲良くするように」

 その日、先生はそう言っただけで、ミイラ男君は僕たちのクラス

メイトになった。他の説明は一切無し。

「えええ? ミイラ男? なにそれ? 名前なの? てか、人間じ

ゃないじゃん!」

 僕はそう思ったが、ここは勉強第一の進学校。周りのみんなは勉

強にしか興味が無いのか、彼を一瞥しただけで、また教科書参考書

にかじりついてる。ああ、心に余裕が無いのも人間としてどうかと

思うんだけど。

 休み時間になってもミイラ男君に話しかけようとする奴は誰もい

なかった。だから僕が勇気を出して話しかけたんだった。


 それから僕はミイラ男君と友達になった。彼は恥ずかしがり屋な

ので自分からは滅多に話はしないが、心の中に彼の考えが伝わるん

だ。いわゆる以心伝心、テレパシーって奴なのかなって僕は思う。

彼はいい奴だ。人とはちょっと、いいや、大分違うけれど、心のキ

レイな素敵な奴なんだ。


 そんな彼が悩み事があるとメールしてきたのは昨夜の事だった。

『オレ、ナヤミある。キイテくれるか』

『うん、もちろんだよ。で? 悩みって何?』


『オオ、チョット イイにくいな。けど…オモイキッテ…』

『うん。何でも言ってよ』


 そうして受けた相談には、彼の切実な悩みがあった。それはスバ

リ、彼の包帯についてだ。彼の包帯は見るからにボロボロだ。他の

人たちには民族衣装で通しているけど、できるなら同じようなスタ

イルで、もっとつけ心地のいいものは無いか? それに匂いも出来

たらシャットアウトしたい。欲を言えば、近未来的でファッショナ

ブルなスタイルができたら最高なんだけど。

 そんな彼の真剣な思いがメールを通しても伝わってきて、僕も一

生懸命に考えた。彼の悩みを一掃するようなそんなアイディアを。


 と、ひらめいた! 今と同じ様なスタイルで、つけ心地も良く、

匂いもシャットアウト出来て、近未来的でファッショナブルな奴

を!

 僕はその解決法を早速メールした。

『オオ、アリガト。ヤッテみる。ソレジャ、またアシタ』

『うん。新しいミイラ男君を期待してるよ。じゃ、また明日ね』

 

 次の日、僕はニュースタイルのミイラ男君を楽しみに、彼の登校

を待っていた。けれど、いつまで経っても彼は現われなかった。

 どうしたんだろう? 何かあったのかな?

 しかし、昨日の僕のひらめきには自信がある。あの、ボロボロの

包帯の替りに【透明な包帯】いわゆる「フィルムドレッシング」を

教えてあげる事が出来たんだから。もし入手不可能なら試しにラッ

プでもいいんじゃない? そうアドバイスも付け加えておいたし。

早く来ないかな、ミイラ男君…


 その頃、彼は色んな罪状を一杯付けられ、警察に逮捕されていた。

悪気はなかったんだよ。本当だ。ミイラ男君、ゴメンよ…

ちなみにフィルムドレッシングってのはさ、ドレッシングする為のポリウレタンで作られた、薄い透明なフィルム状のドレッシング材のことだよ。ドレッシングってのは傷を保護するために巻いたり覆ったりすることさ。包帯もドレッシング材だね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  ミイラ男が、衣装に悩みラップ巻きにされた、という物語、どこかの宣伝用ラップでしょうか? それとも透明な料理用だか保護フィルムでしょうか? 基本的にその忠告は、ただのいじめです。だと思われま…
[良い点] 奇妙な題名に興味をひかれる。 文章も読みやすくてよかった。 [気になる点] 最後のミイラ男はなぜ捕まったのか分かりにくいのでその辺はもう少し追及してほしかった。 [一言] 文章読みやすくは…
2015/01/04 13:19 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ