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エルフ嫁語り  作者: Mac G
40/43

#4

「姫、どうぞお座りください」


 周囲の仲間たちが、テーブルと椅子を元の場所に戻して席を勧めてきた。


「お邪魔ではないかしら」


「いえいえ、こんなむさ苦しいところへようこそいらっしゃいました」


「リーダー、服を着たら?」


「これは失礼」


 女性メンバーに言われて、男たちが部屋の隅で汗を拭く。服を着た姿に戻ってきて姫を囲うように全員が着席する。


「このチームはみなさんとても、仲が良さそうですね」


 楓には、明がここでは元いた世界より、いきいきしているように見えた。仲間たちとも和気あいあいとした雰囲気に包まれている。


「便宜上リーダーとは呼ばれているけど、みんな対等な関係なので」


 明の言葉に異論があった。


「うふふふ。謙遜してるけれど、みんなリーダーを信じてついてきているから」


 髪の長い少女、ムチのようなヒモ状の武器を腰に巻いていた。女性が二人。帽子をかぶった女性がもう一人。楓が気になったのは、どちらも楓やリリーナのような人間に比べて耳が長い。


「明、この人たちとどうやって知り合ったの? それにあなたがいなくなってから一ヶ月、今までどうやって暮らしていたのよ」


 辺境伯爵の屋敷で救われて以来、一通り騎士団や明の仲間にも挨拶はしていた。だが、まだ楓には明以外の面々には他人行儀にならざるを得ない。


 リリーナ姫は、彼らの雇用主的な立場であり、初対面の者にかしずかれることにも慣れているようだ。


「話すと長くなる」


「あなたのこと、お聞きしたいわ」


 リリーナがテーブルの上に組んだ手に、小さな顔をのせて微笑む。


「昨晩の宿では聞く時間が無かったけど、わたしも一応あなたの友人として心配していたのよ」


「すまない。君までこっちへ来てしまうなんてな」


「明どの、それはわたしの行った召喚術の結果で」


 気をつかったつもりが、またもあらぬ方向に話が向いてしまった。


「あ、いえ、そのようなつもりでは」


「エイプリルさんってさ」


 場を和ませるつもりか、女戦士が話を振ってきた。


「はい」


「明リーダーと親しかったの?」


「ええ、まあ。彼の妹を介して知らぬ仲ではないです」


「もしかして、リーダーの恋人さんだとか」


 彼女はいかにも面白そうに、探るような意地の悪いまなざしで問うた。


「「「なっ!?」」」


 楓と明、リリーナが同時に感嘆の声を上げた。


「そうなのですか! エイプリル?」


 リリーナの言葉には動揺の響きがあった。


「申し訳ありません。そのような可能性はまったく考えておりませんでした」


 召喚戦士二名がたまたま知り合いだったことを、リリーナは奇縁だと考えていた。

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