視点@扇風機
俺は扇風機だ。
一言で言ってしまったがそれ以外に説明のしようがないじゃないか。
今日も暑いな…………ん?扇風機なのに暑い感覚があるのかって…………?
ないぜ?
暑さを感じる扇風機があったら是非ともお目にかかりたいものだ。
さて、くだらない自己紹介はこのくらいにしてさっさと中身に移ろうじゃないか。
俺は夏になると人間様を涼しくするために働く、とーっても偉い機械なんだ。
でもな、毎回単調に羽根回してやってるんだが、そんな俺にだって不満ってもんは山ほどあるんだぜ。
今回は特別に少しだけ教えてやるよ。
「ただいまーっ」
おっと、早速人間様のお帰りだ。
どうやらこの家の娘らしい。まだ歳はそんなにいってないな。
「あーつーいー!ままー、クーラーつけてー!」
「だめよ!子供は扇風機で我慢しなさい!」
おいおい、
「子供は」ってことはアンタはクーラーで涼むってか。
「うぅー、扇風機じゃ涼しくならないよぉー……」
言ってくれるなお前。
ちょっ、足でスイッチ入れるなっての!チビなんだから手で届くだろうが!
ブィーーーン
「はぁー、気持ちいぃー」
今は首振り機能が同時進行中だ。その子供は俺の動きにそって一緒に動く。
しばらく動いていたが、動き疲れたのか何なのか、コイツは、
「首振りするなー!」
と俺の首の動きを止め始めやがった!
ガガッガガッガガッ………
おい!く、首がっ………や、やめっ…………離してくれぇ!
もちろんコイツには聞こえるわけないのよ。
そんなこんなで、俺の首はしばらくの間、悲痛の音色を奏でていた。
太陽も沈み始める時間帯、それそろ気温も下がってきただろうか。
あのさぁ………俺ら扇風機って普通床に真っ直ぐ立てて使うんじゃないのか?
何で俺は今、子供と一緒にしかも横向きでオネンネしてるんだろうか。
(一緒にねよっ♪)
あぁ、さっきこんなこと言ってたな………
ちくしょう!かわいいじゃねえか!
だが、立てておいてくれ。
首が折れそうなんだ!