最後の景色
とある都市に建てられた最新の電波塔。
高さ700mで、今まで最も高かった634mを抜かして世界一高い自立式電波塔の記録を更新した、現在最注目されている観光スポットだ。
入口に入る時点で長蛇の列。
さらに展望エリアとなっている、地上500mまで上がるエレベーターは6基あり、各最大40人まで乗ることが出来るが、常にすし詰め状態だ。
恐るべし、流行に踊らされし人間。
まぁ、俺もその1人ではあるのだけど。
長い長い列を少しずつ進んでいき、なんとかエレベーターに乗ることが出来た。
エレベーターは外の景色が見える仕様になっているのだが、満員の中央にいる俺は、ほぼほぼ外の景色なんて見えはしなかった。
非常に残念だ。
ただ、1分程で500mを上昇する為、浮遊感があるのではと思っていたが、本当に動いているのか疑問に思ってしまうくらい滑らかな上昇で、展望エリアに到着した際は感動を覚えた。
一面ガラス張りの展望エリアから見た景色は、まさに絶景だった。
今までの電波塔でも街が、車が、人がミニチュアサイズに見えていたのに、それらが更に小さく見える。
人に関してはもう見えないと言ってもいい。
地上にいる時は感じたビルの圧迫感も、この街もこんなに広いんだな、と認識を上書きされる。
人の流れに合わせて歩かないと、すぐに身動きが取れなくなる。
前を行く人達はゆっくり見たいから進行が遅く、後ろの人達は早く見たいからどんどん迫ってくる。
待ってくれ、そう押さないでくれ。
俺も早く進みたい気持ちはあるけど、前がそうさせてはくれないんだ。
そんなこんなで牛歩で進んでいると、後方からカップルと思われる男女の声が聞こえてきた。
「やばーい! めっちゃたかーい!」
「やべぇ、まるで人がゴミのようだ! だな!」
「人なんて見えないけどね!」
「それな!」
やけにテンションが高い。
後ろを振り返っても近くではないようで、全然男女の姿は見えなかった。
俺の勝手な想像だと、ギャル系カップルがはしゃいでいる感じだ。
「こんな景色をさいごに見れるなんて、ウチ、このバイト受けて良かったー」
「いやほんとだよな、もう心置きなくいけるわー」
なんだ、2人して遠くにでも引越したりするんだろうか?
「忘れ物はないか?」
「任せてー、ちょー完璧」
「じゃあいくか!」
「来世でも一緒になれるといいねー!」
2人の会話に違和感。
2人の姿が見えないのは理解していたが、俺は思わず振り返った。
瞬間、後方から激しい光と共に、衝撃が周囲に放たれる。
展望エリアを覆うガラスが割れ、俺を含め、その場にいた全員が外に吸い出され、空上に放り出された。
何が起こった? あの2人が何かしたのか? あの2人は何者だったんだ?
眼前に広がる青い空。
世界一の電波塔は火を吹き、放り出された人達が、それぞれの重さに従って落ちていく。
徐々に迫る地上を前に、俺の意識は──
高所恐怖症なので、私はエレベーターからもう怖いです。




