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最後の景色

掲載日:2026/09/26

 とある都市に建てられた最新の電波塔。

 高さ700mで、今まで最も高かった634mを抜かして世界一高い自立式電波塔の記録を更新した、現在最注目されている観光スポットだ。

 入口に入る時点で長蛇の列。

 さらに展望エリアとなっている、地上500mまで上がるエレベーターは6基あり、各最大40人まで乗ることが出来るが、常にすし詰め状態だ。

 恐るべし、流行に踊らされし人間。

 まぁ、俺もその1人ではあるのだけど。


 長い長い列を少しずつ進んでいき、なんとかエレベーターに乗ることが出来た。

 エレベーターは外の景色が見える仕様になっているのだが、満員の中央にいる俺は、ほぼほぼ外の景色なんて見えはしなかった。

 非常に残念だ。

 ただ、1分程で500mを上昇する為、浮遊感があるのではと思っていたが、本当に動いているのか疑問に思ってしまうくらい滑らかな上昇で、展望エリアに到着した際は感動を覚えた。


 一面ガラス張りの展望エリアから見た景色は、まさに絶景だった。

 今までの電波塔でも街が、車が、人がミニチュアサイズに見えていたのに、それらが更に小さく見える。

 人に関してはもう見えないと言ってもいい。

 地上にいる時は感じたビルの圧迫感も、この街もこんなに広いんだな、と認識を上書きされる。


 人の流れに合わせて歩かないと、すぐに身動きが取れなくなる。

 前を行く人達はゆっくり見たいから進行が遅く、後ろの人達は早く見たいからどんどん迫ってくる。

 待ってくれ、そう押さないでくれ。

 俺も早く進みたい気持ちはあるけど、前がそうさせてはくれないんだ。

 そんなこんなで牛歩で進んでいると、後方からカップルと思われる男女の声が聞こえてきた。


「やばーい! めっちゃたかーい!」

「やべぇ、まるで人がゴミのようだ! だな!」

「人なんて見えないけどね!」

「それな!」


 やけにテンションが高い。

 後ろを振り返っても近くではないようで、全然男女の姿は見えなかった。

 俺の勝手な想像(イメージ)だと、ギャル系カップルがはしゃいでいる感じだ。


「こんな景色をさいごに見れるなんて、ウチ、このバイト受けて良かったー」

「いやほんとだよな、もう心置きなくいけるわー」


 なんだ、2人して遠くにでも引越したりするんだろうか?


「忘れ物はないか?」

「任せてー、ちょー完璧」

「じゃあいくか!」

「来世でも一緒になれるといいねー!」


 2人の会話に違和感。

 2人の姿が見えないのは理解していたが、俺は思わず振り返った。

 瞬間、後方から激しい光と共に、衝撃が周囲に放たれる。

 展望エリアを覆うガラスが割れ、俺を含め、その場にいた全員が外に吸い出され、空上に放り出された。

 何が起こった? あの2人が何かしたのか? あの2人は何者だったんだ?

 眼前に広がる青い空。

 世界一の電波塔は火を吹き、放り出された人達が、それぞれの重さに従って落ちていく。

 徐々に迫る地上を前に、俺の意識は──

高所恐怖症なので、私はエレベーターからもう怖いです。

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