−1話
【辻褄合わせ】
・シズクの過去から
〈捨てられた〉の記述を〈捨てた〉へと【変更】
◆◇◆◇◆
森がどんどんなくなっていく───それは当たり前の様に木々を薙ぎ倒していく、人々の営みによるものから魔物、生物との戦争に至るまで消費していく、この際理由は関係ない。問題は減る一方な点だからだ
マナは無限とも思える環境魔力、その場に溢れ出るそれは森に根ざす木々がもたらす恵みの象徴とも言える存在だ
悲しきかな、それらは減っていった。森が減ったからマナが減ったのか、マナが減ったから森が減ったのか
いずれにしろ、森と生を共にする狼人にとってこれ程の危機は他になかった。森の境は後退の一途を辿り、気がつけば森だった場所は平地になり、畑になり、領地となり狼人はとある谷底に残る森で身を隠すことになった
アビーク領に残った森───谷の奥深くに残る〈不可侵の森〉ばかりだった。狼人はそこに隠れ住むと『狼の隠れ里』を築き、静かに暮らし始めた
厳しく脆い砂の様な乾いた土、寒暖の差が激しく、気候の変化の激しい土地柄故に開拓する意味もなく、森の堅牢さが狼人を守り、一時の平穏を齎した
しかし幸にも、不幸にもマナが滞留する土地となっていた不可侵の森は一見それは良さげな点に思えるだろう。しかしそうではなかった
過剰なマナは変質を引き起こす。狼人がその身をマナの器にした進化と同様に自然もまたマナにより変質していった
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【ソウテンガロウ】───倒れず。なのに何故倒れたのか。土地に根ざす者いずれは土地に還る【蒼天餓狼】、スキルの由来になった1匹の大狼。その快晴の空模様を写す毛並みは土地に還ることを望んだのだ
不死といえど望めば死ねる神の慈悲───不死殺しの奇跡により、蒼天餓狼は深い谷底にて、森となり死を望んだのだ
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その亡骸に魔力が変質を齎した。それは〈蒼のさいはて〉となりて己が子孫に牙を向いた
残った森さえ再び痩せ細り、再び狼人に危機が訪れた───里を救う方法を探しに行く。そう言って、止めるのも聞かず家出同然に下山した者。それがシズクだった
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手立てはなく、闇雲に模索する中、何をするにも金は必要である。しかし、雇う者はいないだろう
亜人と蔑まれる容姿と出自不明、経歴不明のシズクは商人や雇用主にとってリスクでしかない。博打と言って差し支えない存在
食事も厳しくなる一方
野垂れ死ぬかに思えた時に強面の人間、エルドロにより奴隷商の〈働き手〉として雇われることになった
しかし、弱った体と【不完全な才能】は結局のところ、その日暮らし止まりになっていた。故郷の問題を解決したい思いを胸に故郷を飛び出した
にも関わらず気がつけば、人の世で苦しいながらに生き永らえている現状に〈捨てた〉と己を恥じた
〈脚力強化〉【才能】の名を口にしないのもそれが理由だった。自分はこれを使うに相応しくない。鍛錬の果てに使い熟すことができればと
肩を痛め、腹の虫が忙しない鳴き声をあげる日々
◆
心も擦り減り、心に余裕を失ったある日。人にぶつかり商品をぶちまけた。珍しくない光景にため息が出る。奴隷の監督役が分かっている失敗を殊更責め立ててくる。分かってるって
「えっとですね?
僕がこの人から麻袋の中身を
買いたいとしつこく聞いてしまいまして…」
しかし、僕を庇う言葉が聞こえてきた。顔を上げたそこには快晴に似た、時には煩わしい太陽の様な人間がいた




