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〜〜〜


勇者とその仲間の帰還。


それは本来、華やかなものになるはずべきもの。

誰にとっても。勿論、勇者とその仲間たちにとっても。


華やかで、素晴らしいものになるべきもの。


舞う、紙吹雪。

響く、歓声。


開かれた、荘厳な門扉。

その先に広がる、煌びやかな光景。


それを光無き瞳で見つめ、


「なぁ、クリス」


勇者は、側に立つ剣聖クリスに声をかけた。

ひどく無機質な声音をもって。


「みんな嬉しそうだな」


「そのようです」


勇者の声。

クリスはそれに短く答える。

生気の宿らぬ笑み。それをその顔に張り付けて。


「きっと。みなさまは、勇者アレンさまに感謝していることでしょう」


「そっか」


「アレン様。先に進みましょう」


アレンの先に進む、クリス。

そしてそれに続く、仲間たちの声。


「いこ、アレン」


「これも神のお導き。ふふふ。見てください、アレン様。世界はわたしたちの手により、救われたのです」


アレンの左右。

そこに立ち、小柄の賢者リリス聖女マリアは感情の宿らない声を響かせた。


風に揺れる、黒と白のローブ。

呼応し、靡く二人の黒と白銀の髪。


しかし、二人の頬には未だ残っていた。


最後に浴びた、返り血。

その赤き血がくっきりと。


「あぁ、そうだな」


二人に答え、アレンは前に足を踏み出す。


しかしその一歩は震え、希望に満ちていた旅立ちの時の一歩とは、なにもかもが違っていた。


〜〜〜


進む、アレンたち。


その姿に人々は拍手を送る。

その姿に人々は羨望の眼差しを向けた。


アレンたちは手を振る。


仮面のような笑みを張り付けて、壊れた心を覆い隠すかのようにして。


そんな姿に、人々は更に熱狂した。


「勇者さま!!」


「あなたたちのおかげで世界は救われた!!」


「ありがとう!! ほんとに感謝している!!」


「世界を救ってくれてありがとう!!」


「これで闇に怯えることなく」


「光を謳歌することができる!!」


しかし、その声はアレンたちの耳には砂嵐にしか聞こえなかった。


手は振っている。

顔も笑っている。

足取りも軽い。


だが、アレンたちの目には一切の光も宿ってはいない。


通り過ぎていく、アレンたち。

その姿。それを、なにも知らない人々は熱狂と共に見送る。


だが、群衆の中の一人の少女は母に問いかけた。


「ねぇ、お母さん」


「なんだい?」


「勇者さまたちすぐにこの街に帰ってきたの? うーん…と。魔王を倒してから」


「そうみたいだね。だって、返り血がついてたじゃないか。魔王? 魔物の血? その"黒い血"の跡がね」


その母の声に少女は首を傾げる。


「黒い血?」


「あぁ、そうだよ。ほら勇者さまの姿が見えなくなった。帰るとしようかね」


少女の手を引く、母。


その母に少女は、呟く。

自分の胸の中で。


「黒い血? わたしの目には"赤い血"に」


「見えたけど」


そう不思議そうにつぶやいたのであった。

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