GOD
-1-
亜美の自宅アパートへ着いた三人は、早々に暗号を探し始めた。
「見る限り尾行はない……が、さっさと終わらせよう」
神屋の声が僅かに堅かった。トニーが不在の今、外出は非常に危険なのだ。すぐにでもホテルに帰る必要がある。
だがここは亜美の自宅アパート。暗号を探すと言っても、その在処は亜美にしか知りようがない。神屋と暁は、実質亜美を待つだけだ。
「どう? ある?」
暁は部屋を見渡しながら亜美に聞いた。
神屋は外の様子を窓から眺めていた。
「これが最後の暗号のテキストデータが入ってたCD」
『パッヘルベルのジーグ』を単独で収録しているCD……。だが中身は暗号のテキストデータだった。
暁は思いついたようにこう言う。
「もしかしたら、そのCDに隠されているかもな。あまり詳しくはないが、どうにかすれば、他のデータ……つまり鬼頭の最後の暗号が出てくるかもしれねぇ」
亜美は何も応えずに他の暗号の捜索を続けた。
「神屋、そう思わないか?」
亜美に無視された暁は、窓際でじっと動かない神屋に話しかけた。
「うーん。どうだろう。とにかく、早くここから出ないとね……長居は危険だ」
神屋の言う通りだった。暁も窓の外を覗いてみた。
「王里神会の奴らがここを監視していたとしたら、もう終わりだろ」
「そうかもね……トニーさんがいたら、もう少しは安心してられたんだけどね」
「彼に電話とかできないのか?」
「できるよ。ただ……」
「何だ」
「さっき……トニーさんからメールがあった。なんか、もう少ししたら来るって」
「はぁ……なるほど。俺らの場所判ってんのかな?」
「……んー」
暁は窓から目を離し、亜美の方を向いた。亜美は直立したまま、何かを考えるような表情をしていた。
「どうした」
「……………………暗号がいくつか見つかんないんさ。どっかにはあると思うんだけど……もしかしたら捨てちゃったかも」
「ええ!? やばくね」
「君の頭だって十分ヤバいよ。暁クン」
亜美の言葉で、自分が金髪であることを再認識した暁であった。
「自分の頭髪の色に落ち込んでいる場合ではないぞ。何とか打開策はないのかい。見つからない暗号を頭の中で覚えているなら、それでいいかもしれないんだけど」
神屋が振り返ってそう言った。暁はすかさず反論する。
「待て待て。頭の中で覚えてればいいのか? まぁ、確かにそうでなければキツい面もあるけどな。例えば、暗号のひとつに、ある哲学書自体に暗号が記されたものがあった。この場合はどうなる? 本自体は不必要なのか? それとも暗号の内容だけ覚えてりゃいいのか? 勿論、俺は覚えているけどさ。どうなんだ」
苦労して解いた暗号の内容を、忘れる筈もなかった。
神屋は少し考えてから口を開いた。
「実際、今はそんなに焦る必要はない……と思う。その本って、今どこ?」
「確か……図書館に返した筈だ」
「なるほどね。僕たちは本来、こうして外に出るべきではないんだが、状況が状況だからね。トニーさんさえいれば、その本は僕とトニーさんの二人で後日、回収できる。今は……暗号の内容だけで十分だが、間違っていたら話にならない。できれば、記憶よりも物的な記録が欲しい。暁のアパートにないかな? 暗号の内容をコピーした紙とかさ」
「……ああ、残ってる……筈だが…………亜美、どれが無かった?」
亜美は即座に答えた。
「八百屋で受け取った暗号がない~。それ以外は全部あるよ。本のヤツはコピーだけど」
「八百屋のヤツ……は、ウチにあるぜ。あれだろ? ほら…………」
「ビブリオテカとかジーグとか……」
「そうそう! 絶対ある!」
神屋が玄関に向かいながら、「暁のアパートに行くよ」と声を張った。
暁の自宅アパートに着き、最初にタクシーを降りたのは神屋だった。亜美の自宅アパートに到着したときも同じで、彼が最初に降りた。暁と亜美には待機していてもらい、神屋が様子を見てくるのである。もしも王里神会の手下が待ち構えていたら、二人には逃げてもらう算段である。その自己犠牲的行動の裏には、無関係な二人を危険に巻き込んでしまったことへの憐れみないしは償い、贖罪の意思が隠遁している。無論、神屋には何の罪もない。彼は二人をただ、無償の愛の心をもって救済しているだけだ。冷静沈着な言動、表情の影には、言葉そのままの優しさが佇んでいる。そのことを、暁も亜美も理解していた。
タクシーの中、二人は無言だった。いつ、どこから王里神会がやってくるかわからない……恐怖心が二人を包んでいた。
「ふぅ……」
暁のわざとらしい溜め息は亜美を振り向かせた。
「こんなことになるなんてな。こりゃ人生最大の思い出決定だ」
そう言って、暁は鼻で笑った。亜美も小さく笑った。「本当だよ」と呟きを添えて。
「しかし、彼が生きてるなんてな……」
「要するに、あの人はアタシたちを利用したってことでしょ?」
「まぁ、そうだろうな」
「……最悪だね」
「…………」
「ていうか、気になってたんだけど、あの手紙にあったさ……」
「ん?」
「第三勢力だっけ……」
「ああ、あれか」
「あれって何なの?」
「……………………さぁ」
「さぁって」
「わかんねーよ。いいか、ちょっとまとめるぞ。王里神会は俺たちを捕まえたい。何故か? 鬼頭の居場所を吐かせたいからだ。要は、鬼頭を殺すのが最終的な目的だろうな。しかしだ、ここである疑問が浮上する。なーぜ、王里神会は俺たちの存在を知っているのか」
「存在……」
「だからぁ、何で王里神会は、『外崎暁と篠原亜美は鬼頭の居場所を知っている』と知っているのか」
「まぁ、まだ知らないけどね」
「とにかく、あっちはそう考えてやがるわけだ。そこで鬼頭は第三者の存在を仮定した」
「んー。あ、わかった!」
「?」
「実は、あの八百屋のおじさんおばさん夫婦は王里神会だったってのは!? 鬼頭は直接、あの夫婦に暗号を記した手紙を渡した。しかもそのあとアタシと竜司くんは八百屋に行った。だから……」
「待ちやがりやがれ。おばさん夫婦が王里神会なわきゃねーべな。鬼頭は王里神会だったんだぞ!?」
「あ、そっか」
「王里神会に狙われているのに、王里神会の人にイケしゃあしゃあと会いに行って暗号渡してる場合じゃあねーだろう。大体、仮にあのおばさん夫婦が王里神会だとしたら、会いに来たその日の内に上に密告されて、今ごろ鬼頭はマジでフロム・ヘブンだよ」
「ううーん。どうなんだろ。じゃあ……あ、竜司くんが王里神会だったら!? あ、同じか。上に報告されてアタシたち今ごろ拉致監禁状態? アハハ」
「笑いごとじゃねぇよ」
「わかったわかった。つまり、アタシたちの出会った人たちの中には王里神会はいないってわけだね」
「そうかぁ……? わからんけど。もっとよく考えないと」
「誰と出会いましたっけ? アタシたち」
「……竜司だろ。二宮だろ。ん……二宮光。そういや、あいつなんか…………」
「暗号解読で一回だけお世話になったよね」
「ジーグ……いや、じゃなくて。うーん……あぁ!!」
「え?」
「あいっつの、しっ……知り合いが確か王里神会だっ」
「…………うそぉっ!?」
亜美が驚愕の声を上げたとき、階段横で手招きをする神屋の姿を暁が捉えた。
「この話はまた後でしよう。さっさと探して終わりにするぜ」
-2-
暗号の記された紙は五分もかけずに見つけることが出来た。
「よし、帰ろう」
神屋と亜美が部屋を出て行こうとする中、暁は机の引き出しに鍵を差し込み始めた。
「何してる」
「ちょっと待ってくれ」
「急いでくれ。王里神会はここが君の住所だと知っている」
引き出しを引くと、暁はそこからある物を取り出した。
「わぁ……綺麗」
亜美に感嘆の声を上げさせる物は…………。
「このペンダントがあると、心強い」
殺し屋でありながら現役の女子高生である如月愛からのプレゼント、赤色のペンダントだ。ペンダントには赤色の宝石と思われる石が付けられていて、鎖は綺麗な銀色で宝石の赤色が僅かな光と共に反射して輝いている。廃ビルで見たときと変わらない輝きを放っている……。
「買ったの?」
亜美に尋ねられた暁は、言葉を濁した。
「いや……。早くホテルに戻ろう」
暁はペンダントをポケットにしまった。
視界から消えるまで、亜美の眼差しが赤い綺麗な輝きを捉えていた。
暁はまだ気づいていなかった。このペンダントが、後に二人の運命を大きく変えてしまうということに……――――。
-3-
「光が俺たちのことを密告したとは考えにくい」
走行中、暁は切り出した。
「アタシもそう思う」
亜美は冷静な口調でそう言った。
「光って誰だい?」
神屋が尋ねた。
「うちの学校の同級生だよ。確か暁の隣の席の子」
「その人が何だって?」
「知り合いが王里神会なんだよ……」
暁の声は暗い。
「その知り合いの名前は?」
「知らん」
「光って子が、君たちが暗号ゲームに没頭しているときに鬼頭火山との関係に何らかのルートから気づいたとしたら……怪しいね」
「いや、それはない。関わったと言っても、鬼頭についてはまるで触れていないし、気づくような要素自体無かった筈だ」
「アタシもそう思う」
「まぁいい……とりあえずその子にはこれから注意してくれ。一応ね」
「まぁ……ぜってぇ無いと思うがな。俺は」
「一応だよ。一応」
「わかったよ」
――――ホテルに着くと、見覚えのある人物が暁の目に入った。玄関口で、大きな荷物を持って佇んでいる。
「ねぇ……なんか外人がいるよ」
亜美が不安げに言った。
「いや、心配要らない。彼は仲間だ」
神屋は安堵のため息をつきながらそう言った。
「ハジメマシテー。トニーデス」
ホテル「Renaissance」十四号室に響いたのは、どこかイントネーションの合わない日本語だ。日本語を覚えたての外国人の喋り方を忠実に再現している。
「は……初めまして~。亜美です」
「ワタシハコレカラアナタト暁サント神屋サンヲ護衛スル者デス。宜シク願イマス」
「よ……宜しく」
亜美とトニーが自己紹介している最中、暁と神屋は暗号に不具合がないかを確認していた。
「大丈夫だ。全部ちゃんと揃ってる」
「そうか……ならいいんだけど」
「はぁ……とりあえずはやることやったな……」
「そうだね。あとはこれらの暗号から鬼頭火山の居場所を特定すればいい」
「…………どうにも思いつかんな」
「何がだい?」
「本当にこれらの暗号から鬼頭の居場所が特定できんのかな?」
「それこそやってみなくちゃね」
「いや……だって考えてみろよ。この暗号は最終的に、二つの答を持っていたことになるんだぜ? まずひとつは『夜光公園』……もうひとつは鬼頭の居場所。俺や亜美が後者の答を導き出してしまっていたら、どうするつもりだったんだろう? 彼は」
「その場合、君たちは度肝を抜かれていたことだろうね。死んだ筈の彼に遭遇するのだから」
「ああ……見た瞬間気絶するかもな」
「――――多分、後者の答を導き出すことはできないように仕組まれていたんじゃないのかな」
「!」
「大体において、この作戦は僕と君たちが接触しなければ話が始まらない。つまり、僕がいて初めて解ける暗号になっている可能性が高い」
「…………そうか! 多分そうだ!」
「僕には判り、他の人には判らない何かが隠されているんじゃないのかな……その暗号には」
「それなら合点がいくな」
暁は口元をニヤリとさせ、神屋を見た。
「ぜってぇ解いてやろうぜ! なぁ! 神屋っ」
暁は大声で言い放つと、ベッドに勢いよく倒れ込んだ。祭りの日から眠っていなかった疲労がここにきてピークに達したようである。暁は気持ちよさそうに寝息を立て始めた。
夕方が近づく――。
亜美と談笑していたトニーの肩を神屋が軽く叩いた。
「神屋サン。スイマセンデシタ」
「どこ行ってたんですか」
「大事ナ用ガアリマシタ」
「……しっかりして下さいよ。僕なんかはいつ死んでもおかしくない状況にあるんですからね……」
夏祭り当日の藤原との会話を忘れたわけではない。藤原は神屋を完全に疑っていた。あのとき拘束されなかったのは幸いだった。トニーは床に置いた大きなバックに目を泳がせた。
「次カラハ注意シマス」
「頼みますよ。ところでひとつ気になることがあるんだけど」
「ハイ」
「昨夜、ここに来た二人組についてなんだけど……あれは?」
「アノ死体デスカ」
「……うん」
「ワカリマセンネ。目的ヲ吐カセルコトハデキナカッタノデ、アシカラズ」
「大丈夫かな……? もし仲間がいたら……相当ヤバイんじゃ……」
近くに座って聞いていた亜美は、我慢しきれなくなって聞いた。
「死体って何?」
「いや、実は……ここは一度襲撃されたらしい」
「…………え……」
「…………」
「嘘でしょ?」と言いたげな表情で亜美は目で神屋に訴えたが、神屋は目を伏せた。
「襲撃って……」
今一度、自分たちが狙われていることを再認識した亜美であった。
「安心シテ下サイ。ワタシガツイテイマス」
トニーの声が、亜美の胸中に響いた。トニーは床に置いた大きな荷物を見てこう付け足した。
「イザトイウ時ハ、ワタシヲ見捨テ下サイ。ワタシハソノタメニイマス――――」
…………――――日は完全に落ち、窓から見る外の世界は、薄暗い。
世界の終わりを予感させるようなどこまでも続く空の向こうに、果たして神は居座っているのだろうか…………。夜空をコウモリが横切った。
暗闇の世界を眺めて、亜美はそんなことをしばしば考えた。
話し合いにより、行動に移るのは明日からになった。今日は暁も神屋も疲れ切っているからである。
神屋はコーヒーを片手にテレビを眺めていた。
亜美も一緒になってテレビを眺めている。トニーは一人でチェスに勤しんでいた。
亜美はもう一度窓に目を移した。空の向こうはさっきよりも薄暗い。
……人生とは何なのか。
亜美は思った。こうして、黄昏ゆく世界の夜の断片を眺めていれば、いつかきっと人生の意味を知ることができると……。しかし、それはただの幻想だった。
神屋がテレビを消す。
「夜がやってきたね……」
窓の外を眺める亜美を見て、神屋はそんなことを言った。窓から吹き込む風が、艶のある亜美の髪を悪戯に揺らした。
「今夜は涼しい風が吹く。夏だということを一瞬忘れてしまいそうなくらいの涼しい風が……」
神屋の独り言のような囁きに、トニーが顔を上げた。
「神屋サン……神屋サンハ……神ヲ信ジマスカ」
神屋は応えず、ただ微笑みを作るだけだった。
トニーは諦めて下を向いた。彼の眼前には、盤上の激しい闘いが繰り広げられている。キングを動かすその指は、まさしく盤上の駒にとっての神の導きに他ならない。生かすも殺すも、神の気まぐれ次第である。
「神……か」
トニーの耳に神屋の小さな声が届いた。
「いると思うよ」
神屋は平然と語り出した。
「例えばそうだな……小説だ」
亜美には神屋の発言の意味が理解しかねた。人生を小説に例えているのだろうか。
「僕たちのいるこの世界は……もしかしたら、小説なのかもしれない」
亜美は夜空を窓から眺めながら、じっと神屋の言葉を聞いていた。
「……誰かが書いているんじゃないかな……、『神屋は言った』とか『トニーは床でチェスをしている』とかさ。考えられなくはないだろう」
そんなことを言って、神屋は窓に振り返った。
「神は案外、気まぐれな高校生かもしれない」
亜美はその発言に興味をそそられた。神屋の瞳に視線を送る。
「きっとこんな物語を作るのは、宿題に追われてて、人一倍気まぐれな高校生に決まってるよ」
「何故デスカ?」
ここにきてようやくトニーが口を開いた。トニーは大抵、いつも薄ら笑いを浮かべている。
「僕たちは、普通に人生を送っている他の人たちに比べて非常に忙しいだろう。だから作者も忙しい」
「……それって神屋くんらしい答じゃない気がする」
亜美も会話に参加した。
「ワタシモ亜美サント同意見デス」
神屋は身を乗り出し、テーブルに肘をついてこう言った。
「作者はきっと、心の寄りどころが欲しいんだ。忙しい毎日に疲れ果て、恐らく人生に絶望した。だから物語を作り上げた。そこに自身の存在理由を見いだしているに違いない。いわば執筆活動は彼の生きがいだ」
「……ふうん。神屋くんにしては、突飛な仮説だね」
「彼ト言イマシタガ、女性デアル可能性ハナイノデスカ」
「男だね……そして言うなれば、作者は二人だろう」
「?? ……なんで??」
「二人……デスカ」
神屋は椅子に寄りかかり、腕を組んだ。
「まず……大した名声もない矮小な存在と言ってもいい高校生が、一人でこんな長々と物語を構築していける筈もない。物語をある程度書いたら、もう一人にそれを見せてる筈だ」
亜美もトニーも、何が何だかわからない様子だ。
「そして見せられたもう一人の作者は、その続きを書く」
ここで亜美は疑問に思ったことをぶつけてみた。
「二人で考えて書いていくんじゃないの?」
すると神屋は声を荒げて笑った。
「今の篠原さんの発言をどう思う? トニーさん」
トニーはすぐに答えた。
「ソレデハ書イテイテ面白クナイ気ガシマス」
「……その通り! それじゃあ書く意味がない」
「ふーん。そうかなぁ」
亜美はトニーと神屋の考えに納得いかないという様子である。
「じゃあさじゃあさ! 何で男なの!?」
「……んんん」
「…………」
「……うーん」
「分かんないの?」
「……いや、普通、主人公が男なら、作者も男かなって……まぁ、突き詰めればカンかな」
亜美は数秒考えた。
……主人公が……男??
「……まさか……このお調子者めぇ!」
亜美は突然ニヤニヤしてそう言った。
「ん? お調子者?」
神屋はハテナマークを頭に浮かべた。
「この物語の主人公は、何も神屋くんだなんて、決まったわけじゃないんだからねっ」
そう言って亜美はニコニコしている。
トニーも笑っている。
「ああ……なるほどなるほど。そういうことか。ふふふ。だけど誤解しないで欲しいなぁ……何も、僕だって、僕が主人公だなんては言ってないんだからさ…………」
神屋は不敵な笑みを浮かべた。亜美とトニーの顔が曇る。
「この物語の主人公は僕じゃあないよ…………」
「え?」
神屋はベッドルームの方に顔を向けて、こう言い放った。
「今、ちょうど夢の世界にいる人さ」
十四号室には、今日金髪デビューした男のイビキが気持ち良さげに響いていた。