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undecided  作者: らきむぼん(raki) &竜司
王里神会篇 序
29/73

テンペスト

受験が終わるまでは非常に更新が遅くなりますが、どうかご了承ください。

今回から三話分程が、今までで最も重要な回になるかと思います。

少々長いですが、楽しんでいたただければ幸いです。

-1-


 神屋は十五号室の部屋の扉を開け、テーブルのグラスにほんの少し残った水を飲み干した。

「暁は……ベッドか……」

 呟いて、神屋はベッドルームへ歩みを進めた。ベッドに暁の姿はなかった。暁は窓から駅前の広場を眺めていた。

「寝ないのか、暁?」

 ベッドルームの窓からのやわらかい光を浴びる暁に、神屋は尋ねる。

「隣でいかがわしい作業が行われていると想像したら、眠れないだろ」

 暁はくたびれた目を神屋に向け、ぼやいた。

 作業服を着た二人の大男が十四号室に到着したのは今から三十分前、午前八時半頃であった。彼ら手には旅行用の大きなバッグが持たれていた。

 神屋は二人に「宜しくお願いします」と声を掛け、暁を連れて隣の十五号室に移動したのだった。それから三十分間、暁は部屋にただ独り放置されていた。神屋には、どこか行きたいところにフラフラと散歩に出掛けてしまう癖があるのではないかと、暁は冗談半分に思ったのだった。

「どこ行ってたんだよ」

 暁は、部屋に戻ってきた神屋の右手に持たれた紙袋を見ながら言った。

「買い物だよ」

「お前はもし亜美用の隣部屋を用意してなかったら、俺を死体処理屋と一緒にしておくつもりだったのか!」

「一緒に買い物に行けばいい」

「俺は外に出られないだろ!」

「出られるさ。これから出てもらうしね」

「冗談はよせ……」

 暁は、溜め息をついてベットに横たわった。

 ――コン、――コン。

 妙な間をあけてドアが叩かれた。

「はい」

 神屋はリビングに戻ると、紙袋をテーブルに置き、ドアへと向かった。

 続いて暁もリビングに入った。

 神屋がドアを開ける。

「終わりましたよ、確認しますかい?」

 死体処理屋の男が大きなバッグを指差して訊いた。

「いえ、結構です。信頼していますので」

 神屋は笑顔で料金を支払った。大男は「そりゃ、どうも」と不気味な笑みを返した。五十万円ほどの料金が神屋の手から大男の手へと渡った。暁にはその金額が割に合っているのか理解しかねた。おそらくは安いのだと思われた。少なくとも自分だったら五百万円はもらう仕事だと暁は思った。

「なぁ神屋、降りそうだな」

 暁は、神屋がドアを閉めるのを確認しながら言った。神屋は一瞬何の事か解らなかった。

「雨が?」

「神屋、例えば他に何か降るのか?」

「うーん……槍とか」

「今の俺には洒落にならねーよ」

 暁は真面目な顔で言った。もはや諦念が感じられる様であった。

「暁、雨が降るから何だっていうんだ?」

「亜美だよ。あいつ迎えに行けよ、雨が降る前に。買い物する暇あったらさ」

「……一応言っておくけれど、君も行くんだよ」

「……何で?」

「トニーさん居なくなっちゃったし、単独行動は逆に危険だからね」

「なるほどなるほど……って、オイ!! ボケかましてんじゃねぇ!! お前、買い物独りで行ってたろ!」

 盛大にノリツッコミした暁は、いつかの二宮光の姿を思い出していた。

「いざ王里神会が襲って来たら、僕が食い止めて君達は逃げる。篠原さんの性格じゃ、一緒に戦いかねないから、説得役の君が必要なんだよ」

「俺が説得しても言うことを聞かないだろ、亜美は……」

「僕の観察力を舐めないでほしいな。篠原さんは必ず君の言うことを聞くよ」

「ふうん……。Dだな」

「D?」

「『どうでもいい』の略。俺の中学で昔流行った言い方だ」

「その説明がDだと思ったことない?」

「…………その質問がDだ」

 Dな会話を済ませて、暁は冷蔵庫を開けた。理由なくオレンジジュースを取り出し、グラスに注いだ。柑橘系の匂いが暁の周りに広がった。

「暁、篠原さんにメールしていいよ。二時間後に迎えに行こう。場所は隣街のインターネットカフェ『ロキ』の三十八番の部屋、尾行には注意するように」

「……ちぇっ。分かったよ。ネカフェ『ロキ』の何だって?」

 暁はしぶしぶ了承して、待ち合わせ場所を聞き返した。



 暁はメールを亜美に送ると、ソファーに座り神屋に目を向けた。神屋はテーブルの上の紙袋の中をガサガサと音を立てていじくっていた。

「神屋、三十八番が空いてなかったらどうするんだ?」

「大丈夫。会議に行く前に、貸し切ったから」

「……は? お前の為に組織はどんだけ資金援助してるんだよ……」

「ん? 自腹だよ。強いて言えば両親の援助かな。僕の両親、アメリカで数学の研究やってるらしくてね。リーマン予想とか、そういう類の未だに証明がなされていない問題やらを研究していたな、昔は。経済面だけで言えば、金持ちっていうやつさ。僕が小学生の頃、あんな田舎に居たのも金持ちの気まぐれって感じらしい。あの頃は仕事を休んでたみたいだから。それに、幼少期は一般的な公立小学校で心を育てるのが良いとか何とか……」

「………………知らなかったぞ、そんな話」

「まぁ、それは全部親の話だし。僕には微塵も関係してないから、昔は隠してたんだよ。訊かれなかったしね」

「…………なぁ、お前さ、王里神会を潰してからどうする気だ?」

「しばらくは刑務所だろうね」

「……!! 何でだよ!?」

「当然でしょ、幹部なんだから」

 神屋は、冷静に返した。刑務所に入ることに、何も恐れを感じていない様子だった。

「そんな理不尽があるか! お前は王里神会の敵、つまり正義のはずだ!」

「今まで、王里神会の危ない命令に従ってきたのは真実だ。証拠もいくつか挙がるだろう」

「…………何だよ、それ」

 暁は、神屋が平然としている理由が解らなかった。自分達を助けてくれている神屋が、悪人として裁かれるなど、考えられなかった。

「一つ、頼みがある」

 俯いていた暁に、神屋が言った。

「何だ?」

「裁判で君がこの事件のことを話してほしい。僕が裁きを受けるのは免れないだろうけど、罪は軽くなると思う。…………そんなつもりなかったんだけど、やっぱり、出来るだけ早く暁や篠原さんと再会したいな」

 神屋は、少しだけ淋しげな表情をしていた。

「……当たり前だ」

 暁はテーブルに頬杖をつきながら言った。

「……ありがとう、暁」

「……ああ」

 暁はオレンジジュースを一口飲んで、おもむろに携帯を開いた。

「あ」

 いつの間にか亜美からの返信が来ていた。


 了解(`∇´ゞ

 二時間後?

 ずいぶん長いね。

 まあいっか笑

 待ってるね!(b^ー°) 


 亜美のメールにはそう書いてあった。

 そういえば、何故二時間も間を空けるんだろう……。

 暁もまた疑問に思い始めていた。隣街とはいえ、一時間もあれば双方が到着出来る距離だろう。

「神屋、二時間は長いだろ。雨降りそうだって言ってんじゃん」

「出発前にやることがあるからね」

「やること?」

「これだよ、これ」

 神屋は、テーブルの上の紙袋を左手で持ち上げて、右手の人差し指で指差していた。

「何だ? 何が入ってる?」

 神屋は不気味に微笑した。

 暁には嫌な予感しかしなかった。



 二〇〇九年、八月十日、午前十時四十七分。

 インターネットカフェ『ロキ』三十八番部屋のPCの画面右下には小さく現在の時刻が表示されていた。篠原亜美は、PCをインターネットに接続した。

 トップページには最新ニュースの記事が貼られていた。

「鮎川氏狙撃、搬送先の病院で死亡……かぁ」

 亜美は小さく溜め息をついた。

 やっぱりダメだったんだ……。

 心の中で呟き、亜美は検索フォームに「かみやきよたか」と入力した。

 数分前亜美は三十八番の部屋の扉を見て驚愕した。


「このルームは篠原亜美様により貸し切られております」


 亜美はこの張り紙を見て、指定された部屋が一室だけであった理由を理解したのだった。

 そのことも影響して、亜美は神屋の素性に興味を抱いていた。

「あっ」

 亜美は入力した文字の変換をしようとして、動きを止めた。

「漢字分かんないじゃん」

 亜美は神屋の調査を断念して、今度は王里神会を検索した。

 一番上に表示されたのは、王里神会のホームページだった。

「…………」

 亜美は少し悩んでからそれをクリックした。

 開かれたページは濃いオレンジ色の背景に黒い筆字で「王里神会」と書かれているページであった。大きく書かれた筆字の後ろには小さな星マークが八つ、大きな星マークが一つ描かれていた。小さな星は大きな星を中心として、同心円状に広がっていた。


 我が王里神会は、神への信仰などには頼らず、あなたの幸せをあなた自身で掴み取ることを可能とする宗教法人です。そして、それを助力して下さるのが、王里神会開祖である教主Kでございます。教主のお導きは…………


 亜美は表示された文章を読みながら不快感を感じ始めた。配色と書体、言い回し、その全てが視覚的洗脳を促しているようだった。

 亜美は気味が悪くなり、インターネットのウィンドウを閉じた。

「はぁ……暁遅いなぁ」

 亜美は両腕を真上に上げ、深く伸びをした。

 時刻は十時五十一分。暁は待ち合わせを十一時に設定していた。暁が遅いのではなく亜美が早いのだった。

「神の信仰などには頼らず……ね」

 亜美は王里神会が神を信仰しない特殊な宗教であると初めて知った。

 ――だったら名前に神なんか付けなきゃいいのに。

 以前暁が感じた疑問を亜美も考えていた。

「!」

 遠くで足音が聞こえた。複数の足音である。

「やっと来たみたいね」

 足音はだんだんと近づいて来た。近づくに従って、音は明瞭になって、人数が二人であることが分かる。

「あれ?」

 亜美の動きが止まる。

 足音が隣の部屋の前で止んでしまったのだ。

 バチッ!

「!!!!」

 電気回路がショートしたような音がなった。

 ――な、何!?

 直後、亜美は気が付いた。……スタンガン。

 謎の音の正体は紛れもなくスタンガンの音であった。

 バチッ!!

 今度は三十八番の部屋の前で音が鳴った。

 その後、十秒程の静寂が訪れた。

「…………」

 亜美は息を呑んだ。静かにドアノブへ手を伸ばす。

 コン、コン。

 彼女の手がドアノブに触れるその瞬間、ドアが二回ノックされた。

 …………ゴクリ。

 亜美は、意を決して、扉を思い切り開けた。

「……!!!!」

 そこには、茶色の長髪にキャップを深く被った男と、金髪にサングラスを付けた男が立っていた。

 亜美の体は瞬時に硬直した。

 茶髪の男の右手には、スタンガンが持たれていた。




-2-


「…………」

 言葉の出ない亜美を見て、茶の長髪にキャップを被った男が微笑した。

 金髪にサングラスの男は、おどおどしながらゆっくりとサングラスを外した。

「俺だよ」

 サングラスを外した金髪の男は、冷静になって見れば、亜美のよく知る人物だった。

「暁ぁ!?」

 亜美は素っ頓狂な声で叫んだ。

 金髪にサングラスの男――外崎暁は、遠くで店員がこちらを見ていることに、微かに怯えていた。

「変な声出すなよ。俺達が犯罪者みたいじゃないか」

 暁は金髪の前髪をいじりながら不満そうに言った。

「えっ? ええ~!?」

 亜美は暁に、正確には暁の髪に何が起きたのか理解できなかった。

 そんな中、茶髪の男がついに口を開いた。

「犯罪者みたいって……、僕はある意味犯罪者だけどねカッコ笑い」

「神屋、テメェ! 何余裕かましてブラックジョーク言ってんだ! あと、何だその『カッコ笑い』って。それは口語じゃねー!」

 神屋は「面白いな、暁は」と言って、スタンガンを黒の上着にしまった。

「……ってことは、コッチは神屋クン!?」

 亜美は神屋を見上げた。身長差は二十センチを軽くオーバーしていた。

「こんにちは。中があまりに静かだったから、刺客がいるかも、とスタンガンを構えていたんだが、どうやら驚かしちゃったみたいだね」

「べ、別に。ドンと構えてたもん」

 亜美は、恥ずかしくなって後ろを向いた。

「固まってたじゃんか」

 暁がからかうように言った。

「うるさいなー。それより、何で二人とも髪染めてんの?」

「俺は染めたけど、神屋はカツラだよ、ロン毛になってるだろ。コイツ、俺をはめやがったんだ」

 暁は神屋を睨んだ。

「変装をしようと思ってね。でも、カツラとヘアカラーを買い間違えちゃって……」

「買い間違えるはず無いだろ!! ぜってー俺もカツラで良かったはずだ! わざわざ時間取ってまでふざけたことしやがって……」

「はははカッコ笑い」

「何だそりゃ! お前の中で流行ってんのか、それ!」

「暁、Dだよ、D」

「ぶっ殺すぞ」

「D♪」

「そいつは『どうぞ』の『D』か、神屋!」

 暁は、神屋と漫才をやらされているような錯覚を覚えた。

 亜美はニヤリと笑って目を細め、暁の顔を覗き込んだ。

「なんか新鮮ね。あたしも染めたいなー」

「冗談じゃないって。俺、マジでハズいんだが……」

「文化祭までには慣れるよ」

「俺に十月の文化祭まで、このままでいろと言うのか!」

「良いじゃん。不良になった設定でいこうよ。まあ、その頃には髪が伸びてプリンみたいになってるだろうけどねー」

「なんという鬼畜な……」

 暁の訴えも虚しく、亜美は暁の金髪を面白がるだけだった。

「さて、暁、篠原さん。タクシー待たせてるし、そろそろ出発しようか」

 神屋はそう言うと、ドアに貼られた張り紙を取り外して、丸めた。

「そうね。行きましょ」

 亜美は、室内に置いたバッグの方を振り向いた。

「あれ?」

 バッグは忽然と姿を消していた。

「俺が持つよ」

 亜美が暁の方を振り向くと、暁は亜美のバッグを手に持っていた。

「あ、ありがと」

「ああ。……よし、行こうぜ」

 三人はタクシーの元へ歩き出した。



「ここが篠原さんの部屋だから。欲しいものがあったら僕が買ってくる。僕に頼みづらいものは佐藤静枝さんにでも頼んで買ってきてもらって。荷物置いて、用が済んだら十四号室に来てほしい」

「了解しましたっ。いよいよ、全てが解明されるわけね」

「彼の筋書き通りならね」

「彼って?」

「Volcano事件、通称V事件の中心人物、鬼頭火山だよ」

「……なるほどね」

 亜美は、満足とも不服とも取れぬ表情を見せ、十五号室に入った。

 暁はそのやりとりを側で聴いていた。

「V事件はVolcano事件って意味だったのか。Volcano……火山、つまり鬼頭火山の事件ってことだな」

「ああ。あくまで王里神会側からの名称だけど……」

 暁と神屋も、十四号室に順に入った。十四号室からは、血の臭いも、自己を空恐ろしくさせるかのような雰囲気も消え失せていた。

 暁は最初にクローゼットを開けた。中には普段通りの光景が広がっていた。さすが、その道の専門業者であった。おそらく、特殊な薬剤を使ったのだろう。死体があった痕跡は完全に消えていた。

 暁は数時間前を思い返した。確か、今亜美が居る十五号室に入ったときも、最初にクローゼットを確認したはずだ。死体など在るわけないが、暁は確認せずにはいられなかったのだ。

 一通り点検し、暁はソファーにどっしりと座った。

「なぁ、神屋。俺、多分この先ホテルに泊まるときはまずクローゼットを確認するんだろうな」

「ははは。かもしれないね」

 神屋は鞄の中を整理しながら言った。彼の傍らには取り外されたカツラとキャップが重ねて置いてあった。

 暁は神屋の鞄にチェス板が有ることに気が付いた。それは、現在暁宅にある将棋板を兼ねたものとは造りが違うようだった。つまり、チェス専用のものであるのだ。

 鞄にチェス板が常に存在するという時点で奇妙であることに相違ないが、盤上ゲームを用いて正確に目標の精神的特徴を捉える神屋は更に奇妙であるように思われた。

「そういえば、お前、亜美ともチェスか将棋やんのか?」

「そうだね。やってみようかな。……そうそう、僕負けたんだよ、佐藤静枝に」

「何を……だ?」

「将棋を」

 暁は口をポッカリ開けて数秒間フリーズした。

「あの女、計り知れないな」

 暁はしばらく会っていない静枝の顔を思い出しながら言った。

 奇しくも、彼は自分じゃ有り得ないと思っていた静枝と同じ、金髪になっている。暁は小さくうなだれた。

「ふと思ったけど、ブラインドで彼女と将棋を打ったら、今度は完膚なきまでにやられてしまうだろうな、僕は」

「ブラインド?」

「要するに、チェス板なり将棋板なりを見ないで試合をするんだよ。自分が打った手も相手が打った手も、全部覚えなきゃいけない。升目の座標を言って駒を動かすんだけど、置けない場所を言っちゃうと負けになってしまうんだよ」

「……俺には出来ない芸当だな」

 暁は、興味なげに言った。

 ――コンコン。

「入るよー」

 ドアが叩かれると、亜美の明るい声が飛び込んできた。

「どうぞ」

 亜美の声に神屋が応えた。亜美がずかずかと部屋に入ってくる。

「ねぇ、お腹空いた」

 亜美はまるで子どものように部屋の中央で言い放った。

「着いたばっかりじゃんか」

 暁は呆れた様子で返した。そういえばダイエットはどうなったんだろう。一ヶ月半程前から、亜美はダイエットをしていたはずだった。確かに、暁にはダイエットコーラを買いに行った記憶があった。

「育ち盛りなのっ」

 亜美は少し怒ったような表情になった。

「止まっただろ、成長」

「何でそう言えるのよ」

「去年から身長伸びてないじゃん」

「気持ち伸びてるわ」

「お前の『気持ち』は『ほんの少し』って意味じゃなくて、本当に『気持ち』の中だけの妄想だからな」

「横には成長してるもんね」

「自慢げになるな。成長は成長でも『肥大』だろーが。てゆうか、横にすら成長してないと思うがな」

「じゃあ、暁は食べないのね?」

「……………………食べます」

 暁と神屋は朝食を抜かしていた。確かに、何か胃に入れた方が良さそうだ。

「じゃあ、オーダーしようか」

 神屋が、電話から内線を繋いだ。

「何が良い?」

 神屋はメニューを暁に向かって投げた。

 亜美は暁の隣に座った。

「あたし、おろしきのこスパゲティ」

「俺はトマトスパゲティペスカトーレ」

 二人はメニューの最初のページにあったスパゲティの欄から適当に選んだ。

 部屋に料理が届いたのは十五分後のことだった。



「ちょっ、ちょっと待って! ねっ!」

「チェックメイト」

「キャー」

「も、もう一回!」

「…………」

「…………んっ」

「…………」

「……………………えいっ!」

「チェックメイト」

「キャーッ」

 亜美は十六回目のチェックメイトでようやく体力を使い果たした。

「神屋君強すぎ……」

「篠原さん、考えて駒動かしてる?」

 神屋は心から疑問に思った。

「亜美……。お前十六局やって、十五分しか経ってないぞ……」

 暁は呆れた目を亜美に向けた。開始からチェックメイトまでに平均一分もかかっていない計算になるのだ。

「だって、強過ぎでしょ?」

「お前が尋常じゃない弱さなのもあるがな」

 暁は呆れ顔で言った。

「えー、そんなことないよ。シズが『アミはスゴい強いから、誰にも負けないよ』って言われたもん!」

「…………あーあ……」

「あぁ…………」

 静枝に完全に遊ばれていることを自覚していない、可哀想な亜美に二人はどんな言葉を掛けてやったらいいのか分からなかった。




-3-


 神屋は、「オブザベイション」と書かれたメモ帳の篠原亜美の欄に「短絡的」と書き加えた。

「何だ? そのメモ帳」

 暁がそれとなく尋ねた。神屋がチェスか将棋で対局した後にメモを取っているのだとしたら、それは暁にとって大変興味深いものであった。

「今回の事件に関わる人物のデータを記録しているんだよ」

「チェスか将棋によるデータか?」

「いや、それに限らず……だよ。君の時みたいに、チェスや将棋を利用して情報を収集していることに気付く人もいる。その中には、意図的にカウンターやトラップを仕込んでくる人間もいるから」

「……そんな頭の回転が速いやつがいんのかよ……。まずはお前のチェスあるいは将棋の強さに驚いてそれどころじゃないだろ」

 データ収集の意図に気付いたところで、暁にはカウンターもトラップも用意出来そうに思えなかった。そもそも、「カウンター」と「トラップ」が具体的に何であるのかさえ暁には分からなかった。

「普通はそうだろうね。もしくは、佐藤静枝のように勝負に集中してしまうのが常だよ」

「大体、そんな探偵小説の主人公みたいに頭のキレるやつがいるなら是非とも見てみたいものだな……」

 暁は、高山竜司ならどうだろうか、と一瞬考えてすぐに彼でも不可能だろうと判断した。少し前、彼は「西」という一文字を「スペイン」と瞬時に結び合わせるという、彼の頭の回転の速さを知らしめる業を見せたことがあったが、比較対象が神屋となると話は別だった。何しろ神屋ならそんなことの二三簡単にやってみせるだろうと思えたのだ。

「鬼頭火山」

 神屋は、前触れもなくその名を言い放った。

「!!」

 暁は彼の名が神屋の口から出たことに動揺した。隣で性懲りもなくチェス板とにらめっこをして、打倒神屋の作戦を立てていた亜美も、顔を上げて神屋を見ていた。

「僕との対局で勝敗に関わらず、カウンターやトラップを仕込んできた人物は全部で三人いる。王里神会教祖K、王里神会幹部の藤原、そして…………鬼頭火山だ」

「…………」

 暁は神屋の発言に対する言葉が出なかった。情報量が膨大で、脳がそれを上手く処理できないようだ。

「神屋君は鬼頭火山に会ったことがあるのね」

 亜美は冷静に呟いた。

「当然そうなるね」

 神屋もまた、冷静な口調で返した。まるで、亜美を試すような態度である。

「一般人が推理小説家とチェスする機会なんて……普通はないよね。それはつまり、神屋君が一般人じゃないか、もしくは…………どっちも一般人じゃないかってことだよね?」

「……!! 意外に鋭いね。暁なら絶対、『確認』ではなく『質問』をしていただろうね」

 神屋は亜美の発言に驚いていた。彼女のキャパシティを明らかに超越した発言であるように思えたからだ。神屋の中にある篠原亜美のデータは次々と新しい情報が更新され変化しているようだった。このままでは、神屋は彼女のメモに「予測不能」と書いて観察を終了せざるを得ないだろう。

「随分と冷静だね、篠原さん?」

「まあね。あたし、昨日から考えてたのよ、あなたと鬼頭火山の関係について。……で、予想してみたんだけど、鬼頭火山は王里神会に入会してたんじゃないのかな」

「!! …………凄いな、予想外だった。君がそこまで辿り着いていたとは。だが、おしい。正確には『入会』というレベルじゃない。鬼頭火山は八年前の王里神会設立のときからの幹部にあたる人物だったんだ」

「!!!!」

「!!!!」

 二人は驚きを隠せなかった。暁は、浮かんでは消える言葉の中から、なんとかして文章を作り出した。

「鬼頭が幹部? は、話が見えない……」

 暁は、鬼頭火山の師がキリスト教のスペシャリストであることを思い出していた。鬼頭火山は王里神会設立に関わっている可能性があった。

「話が見えないのは当然だよ。話す順序が予定と違うからね。……さて、君らもそろそろ気になってきたようだし、ここらで本題のV事件を説明しようか。V事件の理解は君達が狙われる理由の理解と同義だしね」

 神屋はそう言って開いていたメモ帳を閉じた。

「……教祖Kは何もかもを見通していた。おそらくは今もなお、僕達は彼の予想内の行動をしているだろう。この国を手中に収めるために、内部で意見の対立が生まれることも、見越していたに違いない。だからこそ、彼はいつでも仮面を被っていた。文字通りの意味でも、暗喩的な意味でもね」

「どういうことだ?」

「Kは会員に対しても、幹部に対しても、素顔を見せなかったんだ。彼は常に仮面を、あるいは顔を隠せる何かを装着していた。だから、僕も教祖がどこの誰で、何歳なのか未だに判らない。確かなのは彼には、瞬時に人を惹き付けるカリスマ性があるということだ。そして、彼が素顔を見せなかった理由は保険だったんだ」

「……つまり、教祖である自分に心酔しきっていない幹部が、内部から反発してきた時に、自分の正体を特定出来ないようにしていたって訳か?」

 暁は神屋に導かれるようにして、尋ねた。

「そういうことだ。これで、話の方向性は分かったんじゃないかい?」

 神屋は、話を区切って問題を提議した。

 亜美が続けて答える。

「その教祖の計画に対する反乱分子の一人が、鬼頭火山だったってことね」

「そう。皮肉なことに、王里神会の規模を拡大するのに大きく貢献していた、初期メンバーであり、幹部であった鬼頭火山が反発の意思を表し始めたんだ。王里神会が、武力をもって日本の再構築を目指す教祖Kグループと元来の教義に従い平和的に幸福を目指す鬼頭グループに、はっきりと二分したのは今年の六月中旬頃だった」

 神屋は瞼を閉じ、暗闇の中に記憶を投影させているかのようだった。

「六月二十一日、鬼頭グループが参加した最後の幹部会議があった。そこで、鬼頭火山は七人の幹部を率いて王里神会を脱会した。僕が鬼頭火山とチェスをしたのはその日だった。僕はチェスの途中、鬼頭グループに入らないかと呼び掛けられた。だが、僕はそれを断った。心の中では鬼頭火山のやっていることが正しいと分かっていたが、凄まじい覇気を持った教祖と堂々と争う勇気は、その頃の僕にはなかったんだ……」

 神屋は後悔するかのように言った。だが、その一方で、ある種の希望を見出しているかのようでもあった。その姿は、何とも形容しがたい姿であり、暁と亜美には不安を増幅させる要因でしかなかった。

「鬼頭火山と僕のたった一回の対局が、奇跡的に希望を紡いだことに相違ないだろう」

 しばしの沈黙の後、神屋はそう言った。

「……何故だ?」

 暁が間髪入れずに尋ねた。暁の心には、六割の不安と四割の好奇心が渦巻いていた。

「僕が鬼頭火山に鬼頭グループに入ることを誘われたとき、僕は一瞬思考を止めてしまった。葛藤と恐怖がそうさせたのかもしれない。今まで瞬時に駒を動かしてきた僕が彼の誘いの言葉を聞いた途端、動揺して、挙げ句の果てには悪手を打ってしまったんだ。その瞬間、僕は鬼頭火山の駒になった……。鬼頭火山は確信したのだろう。僕の意思が鬼頭グループのそれであることを。そして、恐怖心によってKグループに所属せざるを得ないことを」

「…………鬼頭はお前をどうしたんだ……?」

「どうもしなかったよ。ただ『今は教祖Kに従え。来たるべきその時まで、ただ従順に』……そう言い残して、投了して、去っていった」

 神屋はチェスの試合を解説するような口調で言った。

 暁は、それを聞いて直感した。この事件は最初から壮大なチェスゲームだったのだと……。

「神屋君、つまりV事件というのは、鬼頭グループが教祖を敵に回した事件って意味なの?」

 亜美は、合点がゆかないというような表情で言った。

「いや、ここまでが前置きさ。鬼頭グループがただ素直に脱会したのなら何の問題も生じなかった。七人の元幹部が殺されることも、君達が王里神会に追われることも……ね。しかし、僕達が教祖Kの野望を阻止する可能性もまた生じなかっただろう」

 神屋は先程とは打って変わって、今度は確かな希望を捉えていた。

「……待て。神屋、お前は今、七人の元幹部が殺されたと言ったのか?」

 暁は続きを話そうとする神屋を制して、訊いた。

「……? そうだけど……」

 暁は少し前から「七人」という人数に引っかかっていた。

「まさか、その元幹部七人って、この近辺の街で起きた連続殺人事件の被害者七人なのか?」

「!! ……その通りだよ、暁。しかし、何故分かった?」

「何故って……、俺達はあの連続殺人の犯人が鬼頭火山だっていう所まで知ってるんだ。しかし、そうなると、鬼頭は自分の仲間を殺したことになる……」

「!!!!」

 神屋は驚き、言葉を失っていた。

「……なるほど。そうか、それで君達は何一つV事件の情報を持っていなかったのか……!」

 神屋は暁の言葉を聞いて、そう言った。

 暁と亜美はその言葉の真意が分からなかった。

「それってどういう意味?」

 亜美は神屋に説明を催促した。

「……鬼頭火山は、もし君達が王里神会と接触しても、V事件と無関係だと判断されるようにする為に、最初からV事件の事を教えなかったんだよ。虚構の中に真実に隠したんだ」

「……神屋、分かり易く説明してくれ」

 暁は、混乱する頭を冷静に保とうと、小さく深呼吸した。

「いいかい? あの連続殺人は鬼頭火山による犯行ではないんだ。犯人は教祖Kグループの雇ったプロの殺し屋だ」

「……!!」

「!!」

 暁と亜美はその場で愕然とするしかなかった。

 ――鬼頭火山が犯人じゃない?

「これで『予兆』は『希望』に変わった。君達は王手を取るための道標なんだ」

 神屋の中で論理は固まった。

 暁と亜美は、何がどうなったのか分からず、ただ神屋の説明を待つしかなかったのだった。



-4-


 室内はクーラーで涼しくなっていたはずであるが、何とも不可思議な生温さが三人を取り巻いていた。

 暁と亜美の精神は謎の塊が支配されていた。この謎の塊は言うまでもなく神屋がV事件を語る過程で生み出したものであり、広い意味では好奇心とも不快感とも言えるものだった。

 不意に訪れた沈黙は、各々の考えをまとめるのに十分な時間を作ってくれたようだった。

「ねえ神屋君、もし鬼頭火山が殺人犯じゃないなら、彼は殺された仲間を追って自殺したの? それとも鬼頭火山自身も自殺に見せかけた殺人による被害者ってこと?」

 亜美は出来る限り自分の推理を昇華させ、真実に近い答を導こうと試みていた。しかし、結果として現出した二つの疑問は、いずれも神屋の用意していた解答とは異なっていた。

「どうやら君の名推理もここまでみたいだな。……まずは、固定観念を捨てるんだ。……鬼頭火山は……」

 神屋は先を言いかけて、再び口を閉じた。

「…………鬼頭火山は……?」

 一点を見ながら固まってしまった神屋に、亜美は聞き返す。

 神屋は、数秒目を細めて、口を開いた。

「…………暁、どうかしたのか?」

 神屋の視線の先には暁がいた。隣にいる亜美には確認するまでもなかった。神屋は暁の表情に陰りを読み取ったのだ。

「……いや、何でもない。続けてくれ」

 暁は「いつもより平常」であることを強調するというような、矛盾を含んだ口調で言った。

 この時、暁は動揺を隠すようにしていた。

 暁には、神屋が何を言おうとしているのか分かっていた。

 トニーの別れ際の一言。その一言の重みを痛感していた。

 ――鬼頭火山は生きている……神屋はそう言おうとしているんだ。それは、暗喩でも、婉曲でも……ない!

 神屋は疑惑の目を暁へと向けていたが、すぐに元の表情に戻った。

「……鬼頭火山は生きている可能性が高い。もし死んでいたとしても、少なくとも彼の意志を継ぐ者が彼に成りすまして存在する」

 神屋ははっきりと言った。

「鬼頭火山が……神崎さんが生きてる……」

 亜美は、天井を見上げて神屋の言葉を繰り返した。

「何故だ? 神屋、何故お前はそう断言出来る? 意志を継ぐ者の存在を考慮に入れてるってことは、鬼頭に会って確かめたんじゃないんだろ?」

 暁は矢継ぎ早に尋ねた。もはや、彼の願いは一刻も早く謎を全て解明することであった。

「離反した八人とその仲間達は、『王里神会』の反抗勢力である自分達を『アンチマター』と呼んでいた。アンチマターは表では活動をしていなかった。王里神会は宗教法人の形を取って公的な一面を持つが、アンチマターは表向きには一般人だ。……知っているかい? 『アンチマター』は『反物質』、あらゆる物質に対する反対概念だ。それは光に対する闇、引力に対する斥力、神に対する悪魔、ゼロに対する無限、プラスに対するマイナス……そんなものを比喩している。それらが出会った時、双方は消滅するんだ。おそらく、彼らはその名の通り王里神会を倒すという目的以外では活動する気はなかったんだろう。……それが、鬼頭火山の意志なんだ」

 神屋は具体的な例を挙げて説明した。それは、暁の中の哲学にインスピレーションを与えていた。

 暁はこの壮大なチェスゲームが本来のチェスとは大きく異なるものなのではないかと考えていた。

 チェスには足し算も引き算も存在しない。王を詰めれば勝ちだ。しかしこの勝負は、最後に盤上の駒を完全に相殺させることが鬼頭火山の勝ちを意味し、それを防げば王里神会教祖Kの勝利となる。しかも、駒は全てプラスとプラスの闘いではなく、プラスとマイナスの闘いを強いられている。

 それはもはやチェスではない。さらに上位で、高度なゲームだ。

 悪魔は元々は神だった。そんな話はよく聞く話だが、「反する」のはどこか似ているからではないだろうか。悪魔は神から生まれ、闇は光から生まれ、『アンチマター』は『王里神会』から生まれた。

 源を同じくする二者が互いに異なる道を踏み出した時、両者は「反する」のだろう。暁はそう感じていた。

「しかし神屋、そのアンチマターが鬼頭火山が生きてる……って話とどう繋がるんだ?」

「アンチマターの代表者を名乗る者から、僕のPCへEメールが届いたんだ。そのメールの差出人は自分が鬼頭火山であるかのように文章を書いていた。だけど、あくまでもメールだし、その人物が鬼頭火山なのかどうかは、僕には判断できなかった」

「メール……? 王里神会にか? それとも、お前にか?」

「僕にだ。僕にはそのメールの送り主が鬼頭火山であるとしか思えない。そのメールを読んで、僕はアンチマターに協力することを決意したんだ。今度こそ逃げ出すわけにはいかなかった……。彼らは逆転の一手になりうる切り札をKから盗み出した。でもそれは僕がアンチマターに協力しなければ、非常に使いづらいものなんだ。僕が王里神会に付けばアンチマターはおそらく詰んでしまう。一方、僕がアンチマターに付けば王里神会を倒せる可能性が高まる」

 神屋は、真剣な眼差しでそう言った。

 亜美はすかさず「切り札って?」っと返した。

「切り札……か。篠原さん、これは真実であり真実でないような話なんだけど……要するに僕もそれがどんな切り札なのか分からないんだ。不安をあおるようで忍びない限りだが、それが本当に切り札なのかさえ、不明なんだ」

 神屋はテーブルの上に指を組んだ手を置いて、噛み締めるように言った。

「何それ、全然解らないんだけど」

 亜美はテーブルの上の巨大なワイングラスに入れらたメタリックグリーンの包装紙のチョコレートを一つ取り出した。

 包装紙をはがして人差し指と親指でチョコレートを摘むと、そのまま口に放り込んだ。

「何コレっ。にがーい……」

 亜美が飽き始めていることは誰の目にも明らかであった。

「暁、君がこの辺りで起きた殺人事件の話に出したとき、僕が何を言いかけていたか分かるか?」

 神屋に訊かれて、暁は数分前の記憶を思い返した。

「確か、アンチマターが最後の幹部会議の日に何をしたかって話じゃなかったか?」

「そう。それこそが切り札なんだ。あの日、鬼頭火山達は教祖Kが絶対に奪われたくなかったもの、他人の手に渡ったら絶対的に危険なものを盗み出したんだ」

「でも、それが何なのか分からないんだろ?」

「ああ、明確にはね。でも、それが発覚したときKは明らかに焦っていた。その後何日もしない内にアンチマターに接触したくらいだ。それだけに留まらず、現に七人の人間を殺しているのがその裏付けだ」

「七人がやられたのはKにとって重要な何かを持ち出した報復だったのか?」

「報復じゃあない。単に、危険な武器を手にしたアンチマターの代表者七人を排除しただけだ」

「……謎ばかり……だな」

 部屋は再び沈黙に包まれた。

 耳を澄ませば、雨音が聞こえる。どうやら降り出したらしい。

 神屋が鞄から印刷されたプリントの束を二束取り出した。

「これを読んでほしい。僕に届いたメールだ。僕には、君達へ向けて打った手紙のようにも感じられてならない。僕が説明するより、ずっと解りやすいはずだ」

 神屋はテーブルにプリントの束を並べた。

 亜美は、静かにそれを手に取った。暁も続いてプリントを手に取る。

 タイトルには「フロム・ヘヴン」とあった。

 その文書には、事件の全容が記されていた――――。


読んでいただいた方々、毎回有難う御座います。

次回は鬼頭火山あるいは鬼頭火山を継ぐ者が残したメールが丸々一話となります。最重要話になるでしょう。

漱石の『こころ』かってくらい長いですから、時間のあるときにどうぞw

いつ更新できるかは判らないのですが・・・

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