表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

第1話 この世界の君と 後編

 

「では、ガーディクルデバイスを受け取ってくれ」


  5人は机の上にあるガーディクルデバイスをそれぞれ手に取る。


「さっきから思ってたんですけど、これスマホみたいですよね」


ガーディクルデバイスをペタペタと触りながら瑠花が言う。


「馴染みがあり使い方が分かりやすい物がいいと思ってな。ガーディクルデバイスには変身できる事はもちろん、仲間同士の通話機能やメッセージ機能、写真機能もついている。更に基地やエラー空間への瞬間移動もできるぞ。他にも様々な機能が付いていてまさにガーディスの技術力の結晶というべきアイテムだ」


「便利~!すっごいスマホなんだね。」


スアテムが意気揚々と説明するが結柰の中ではもはやスマホになっていた。


「輝晃に言いがかりをつけられる前に言っておくが、盗撮や盗聴などの機能は無い。安心してくれ。紛失した場合や緊急時に備えて位置情報機能はついているが基本は使わない。プライバシーやコンプライアンスは守る超存在なのだ。」


「人をクレーマーみたいに言うなよ!何がプライバシーとコンプラは守るだ…名前は調べてるし、僕達を拉致った癖によくいうよ…」


「まあまあ、喧嘩してる場合じゃないだろ?えっと…どうすれば変身できるんだ?」


「このアイコンをタッチして「メタモルート エレクティオ」と唱えれば変身できる。今回は最初だから私が合図を出すのでそれに合わせて一斉に変身してみるといい。早速やってみたまえ」


「おーやっぱりあるんですね変身前の掛け声!いや~!気分上がってきました!」


 隼樹に聞かれスアテムが変身の手順を説明すると瑠花はウキウキとテンションの高い声を上げる。その一方で零士は声のトーンが下がっていた。


「俺は少し緊張してきました…。一体どんな姿になるんでしょうか」


「ガーディクルデバイスが君達の情報を読み取り、似合う衣装が形作られ出力されるのでそんなに悪いものにはならないはずだ。……よし。では、いくぞ!3、2、1…」


「メタモルート エレクティオ!」


  スアテムの合図に合わせ5人が叫と身体が光に包まれ衣装が構成されていく。ものの数秒で5人の変身は完了していた。中には武器を手元にある者もいる。5人はそれぞれ変身した姿にリアクションを取り、スアテムは能力と武器の説明を始める。


「すごいな…本当に変身した!この服アイドルみたいでカッコいいな!服に合ったインラインスケートも履いてる…俺はこれで戦えばいいのか?」


隼樹はキラキラした目で服や足のインラインスケートを見て変身に感動していた。


「ああ。隼樹の能力は超加速『フルグレ アクセレ』だ。自身の動きを高速化できる。身体能力が向上しているため、加速と合わせて打撃や蹴りを組み合わせればとてつもない威力になるだろう」


「アグレッシブはしたことないけど…まあ頑張ってみるよ!」


 一方、零士は落ち着いているが少し満足げに首に巻かれたストールを触っている。


「ふむ、この服、中々いい感じです。そしてこれは…銃ですか…?」


「零士の能力は空間転移『クロス モヴェレ』だ。ある程度の距離を瞬時に移動できる。しかし距離が長い程疲労する。それと銃だが、その銃は弾丸ではなく、レーザーを放つ事ができる」


「空間転移…スアテムさんが使った力と似てますね。2つともうまく扱えるかわかりませんが色々と作戦に組み込めそうです」


 変身ヒーロー、ヒロインに憧れがあった瑠花はテンションが高まり、踊るようにクルクル回りながら歓喜に震えていた。


「このお洋服フリフリとリボンいっぱいで可愛いです~~~~~!可愛いコスチューム!これこそ変身ヒロインの醍醐味(だいごみ)!テンション上がってきましたよ!で武器は無しですか?柔道で戦えばいいんですかね?」


「瑠花の能力はエネルギーのリングの生成『ロタ リミテーション』だ。攻撃には使えないが相手を拘束する事ができる。もちろん柔道で戦う事も可能だ。」


「わ、本当だ!なんか出せました!このリングを投げて当てたり、敵を寝技で固めてから拘束とか色々できそうですね!」


 結柰は服を気に入りにこにこした後、手に持っている弓を懐かしげに見つめる。


「ふふ!お花がモチーフで素敵~!武器は弓だね…昔は弓道してたけど久しぶりだから当てられるかなあ…」


「結柰の能力は治癒の力『フィオーレ サナ』だ。癒しの花のオーラを出し、それを矢に変え味方に撃ち込み回復したり地面に撃つ事で回復エリアを生成できる。そして攻撃用の矢も使えるぞ」


「便利だねー!でも回復と攻撃の矢を間違わないようにしなきゃ…」


 4人が変身衣装に心を踊らせはしゃぐ中、輝晃だけは唖然としながら不服そうにぼやいていた。


「な、なんだよこの格好…王子様かよ。趣味じゃねぇ…。それにレイピアなんて使った事無いぞ!」


「身体能力は向上しているからなんとなくで扱っても十分戦えるだろう。それと輝晃の能力は時間巻き戻し『レヴェルティ ウーア』だ。一回につき最大5分程度巻き戻せる。短いが戦況を変えるのには十分なはずだ」


「雑だな!?それに巻き戻し…か。チッ…短いな過去には戻れないのかよ…」


  一通りの説明が終わりいよいよエラー空間に向かう時が来る。


「では、エラー空間に君達を移動させる。準備はいいか?」


スアテムがそう促すと5人の表情に緊張が走る。それぞれがうなずくとスアテムはモニター前の機械を操作する。


「いよいよですね…変身出来ちゃいましたし、本当にエラースクローと戦うんですね私達…」


「嘘臭い話だと思ってたが変身ができたんだから当然エラースクローも本当にいる訳だ。はぁ……勝たなきゃなんだよな…」


「恐いけど戦うって決めちゃったし、もうやるしかないよ…!」


「でも、1人じゃ無いだけマシですよ。5人もいるんです。団結すれば倒し方だって見つかるはずです」


「そうだな、皆で頑張ろう…!勝ち獲るんだ未来を…!!!」


 4人「はい!」「ああ!」「うん!」「ええ!」


隼樹の言葉に4人は顔を合わせて勢いよく返事をする。


「T・アクシズドア接続完了!皆頼んだぞ…!」


 そしてスアテムが叫ぶと5人が光に包まれ姿が会議室から消え、一瞬でエラー空間に飛ぶのだった。


――――――――――


 エラー空間


  5人はエラー空間に転移すると辺りをキョロキョロ見回し警戒する。エラー空間は広く、所々に瓦礫(がれき)や柱のような物が置かれている。少し寂れたようなダークな雰囲気で空にはノイズが走り、バグを思わせる見た目をしていた。


「ここがエラー空間…。なんか不気味な感じだね。」


「名の通りエラーって感じだな…」


結柰と輝晃がエラー空間の感想を言っているとと5人の横に横長長方形のホログラム映像が流れる。スアテムだった。


「無事に着いたようだな。ここからはホログラム通信でやり取りをするぞ。ガーディスの技術で作られた小型飛行カメラで君達の様子もここから見えているから戦況なども確認できる。」


「改めてすごい技術力だなガーディス。…で、あそこにいるのがエラースクローか」


 先程モニターで見たままの姿でエラースクローは存在していた。少し離れた場所に20体以上は集まっている。それを見た瑠花は驚きと嫌悪感が混ざった顔をする。


「うわっ本当にいた!うげ~。サイズは小型犬くらいですけどうじゃうじゃいますよ。」


「グルル………!!」


「まずい、何匹かに気づかれました!猛ダッシュでこっちに向かって来ます。とりあえず逃げましょう!」


「逃げちゃうの!?」


逃げの提案をする零士に結柰は驚く。


「俺達は戦闘慣れしてません。無策で戦うのは危険かと…!」


「そうですね!逃げながら相手の戦い方を見ましょう!」


  5人は追ってくるエラースクローから逃げる。途中攻撃を試みる者もいたが素早く避けられてしまい、当たらない。中々距離を取れなかったが、途中見つけた大きめの瓦礫(がれき)に隠れなんとかやり過ごしたのだった。


「はぁはぁ…やっとあっち行ったね。しつこかった~」


「あいつら逆にこっちから攻撃しようとすると、ちょこまか逃げ回るぞ…!うざってえな!」


「くっ…このままじゃ、いたちごっこだ…!」


「闇雲に戦ってもキリがないかも…何か対策を考えなきゃ」


皆で考えこんでいると瑠花が何か思い付いた顔になる。


「そうだ!私がリングで拘束しましょうか?でもこいつらすばしつこくてこのままだと当てにくいですね…数も多いし…」


「それじゃあ俺が引き付けて動きをどうにかするよ。ここ広そうだし自由に動き回れば敵を混乱させられると思う」


続いて隼樹もアイディアを出すがそれを聞いた零士が心配する。


「いい案だと思います。ですが、あの数を1人で相手するのは危険ですよ…」


「大変だとは思うけど超加速の力(スピード)があれば行けると思う。戦いなんだ、絶対安全な作戦なんて無いと思うしさ」


隼樹はそう答えると零士はそれをやむなく受け止め、スアテムに質問をする。


「わかりました…。スアテムさん、俺の空間転移は皆さんを一緒に転移することは可能ですか?」


「可能だ。皆で零士に触れるか、零士を含めた皆で触れあうか手を繋げばいい。先程逃げる時に言うべきだったな…すまない」


「いえ気にしないで下さい。それなら…まず、スピードを出せる遥井さんがエラースクローを引き付け敵の動きを止めます。そして俺が皆さんを連れて敵が止まっているそこに空間転移し、澪瀬さんがリングを生成し数体ずつひとまとめにして拘束。敵を全部拘束したら颯真さん、彩愛さん、俺がそれを攻撃し撃破するというのはどうでしょうか?」


「いいんじゃないかな?やってみる価値はあると思う」


 零士がまとめたその作戦を聞くと瑠花が不安そうに輝晃を呼び止める。


「輝晃さん…あの、敵にリング当てるの失敗したら時間巻き戻してもらってもいいですか?自分でリング投げるの提案しといてちょっと不安で…。何回か繰り返せばコツも掴めるはずなので」


「…………。ん、仕方ねえな、わかったよ。まあ僕も失敗するかも知れないけどな…」


輝晃はその願いをを受け入れるが少しだけ目線が下がりうつむいていた。


「誰かがミスしてもカバーし合おうよ。皆で協力すればきっとうまく行くはずだよ!」


結柰の提案に皆が合意し頷く。意見を交換し、立ち回り方を決めて作戦を固める…。5人の中には短い時間の中で既にチームワークが生まれつつあった。


「隼樹側の作戦の様子はホログラム映像でリアルタイムで皆に中継する。隼樹がエラースクローを引き付けたタイミングで私が他4人に飛行カメラの映像からリアルタイムで記録している場所データを送る、それに合わせて零士が空間転移を使い皆とそこに飛んでくれ」


 スアテムが最終指示を出し、いよいよ作戦が決行されるのだった。


「じゃあ行ってくる」


「頼みました遥井さん。この作戦が難しい時はまた皆で別の作戦を考えましょう」


零士に頷くと、隼樹は4人から離れていく。インラインスケートを滑らせエラースクローの群れに近づき、叫ぶ。


「こっちだエラースクロー!」


「!!」


  エラースクロー達は隼樹に気付くと唸り声をあげながら一目散に追ってくる。隼樹はクロスオーバーで円を描きながら逃げ、離れた場所にいるエラースクローにも声をかけ自分を狙うよう誘導する。


「(よし、だいたい全部誘い出せた!でも追い付かれたら袋叩きに合うな…早くこいつらの動きを止めないと。超加速するにもただ早いだけじゃこいつらはきっと俺を見失って追うのをやめる。体力を奪うのもこいつらに体力なんてものがあるかわからないし…。ならやっぱり動きで混乱させるのが最適かな。)」


エラースクローを誘い出せた事を確認すると隼樹は滑りながら思考を張り巡らし、策をまとめる。


「ほらこっちだぞ!超加速(フルグレ アクセレ)!」


 隼樹はウィールのエッジを切り替え、ジグザグに走りながら急加速し、スピンや急停止などを混ぜながら不規則な動きを繰り出す。エラースクロー達は彼を追うが素早すぎて追い付けず翻弄される。


「グガ…!?」「ギイ……!?」


「どこに向かってるんだ?俺はここだ(何とか順調に動きを乱せている…このままいけば…!)」


「ギシャーーーーー!!!」


だがそう簡単には行かなかった。一部のエラースクローが前方の瓦礫(がれき)に隠れており襲いかかってきたのだ。後ろから追いかけて来ていたエラースクローと連携し隼樹を挟み撃ちにする形になっていた。


「あ、まずっ…」


鋭い爪が目の前に迫る中、隼樹は咄嗟(とっさ)にしゃがみ込み角度を切り替え何とか攻撃をかわした。前後にいたエラースクロー同士がぶつかり弾け転ぶ。


「ぐっ…あっ……!!」


しかし隼樹も無傷では済まず、攻撃をかわす際に右足を捻ってしまっていた。じんじんとした痛みが足首から広がってゆく。彼は痛みに顔を歪ませながらも必死に頭を巡らせ今取るべき行動を考えていた。


「(これじゃ足はもって数分だ…戻って別の作戦に変えるべきか?でもこいつらはもう俺に狙いを定めている。今戻ったら作戦を考える前に皆も巻き込んでしまうか?超加速があれば撒けるかもしれないけど、この怪我じゃ別の作戦では使えなくなる。彩愛さんの治癒の力もあるけど、どれくらい回復するかわからない…。それに、こいつらは知能が高い。動きを完全に学習される前に超加速をこの作戦に使って決めた方がいいかもしれない。幸い、今ので何体か動きが止まった。あいつらがぶつかるように誘導すれば行ける。…今やるしかない!)」


「隼樹大丈夫か!?」


「遥井さんっ!!」


「大丈夫だ……」


中継映像を見ていたスアテムと4人から通信が入り、一言だけ返事をするとスゥ…と息を深く吸いながら決意を固めた。彼はエラースクロー達の周りを囲いながら円を描くようにに移動し加速を始める。


超加速(フルグレ アクセレ)!……くっ…う"ぐ…!!」


「やめろ遥井!」


「戻って来てください隼樹さん!」


右足の痛みが彼の動きを止めようとするが歯を食いしばり必死に耐える。

苦しむ彼の顔を見て輝晃と瑠花が止めようと叫ぶが返事はない。


超加速しながら障害物があるところをわざと走り、柱をかわし瓦礫がれきを飛び越えながら円を縮め狭くしていく。エラースクロー達は隼樹を追うが速さについていけず何匹かが柱や瓦礫がれきにぶつかる。


「ギギャッ!?」


「ハァ…ハァ…………ぐ……あっ…!」


「すごい…エラースクローがぶつかりまくってる…。でも、遥井さんも苦しそうだよ…!」


「スアテムさん、場所データを下さい今すぐ空間転移を使って遥井さんに回復を…!」


「すまない。まだ、エラースクローの動きは止めきれていない。それをしたら隼樹がここまでやった意味が失くなってしまう」


脂汗を滴しながら苦しそうな声をあげる隼樹の様子を見て、零士がスアテムに向け頼むがスアテムは隼樹の必死の戦いを無駄にしたくないのかそれを断るのだった。


「気持ちはわかるよ…でも…!」


「また違う作戦を考えればいいだろ!このままじゃ遥井が…!」


「止めないでくれっ…!」


必死な表情で結菜と輝晃がスアテムに迫る中隼樹が叫んだ。


「こいつら、結構頭がいいんだ。今を逃したら多分俺達の手を読み始める…」


「遥井さん…」


「今ならまだ間に合うんだ。頼む皆……あともう少しだけ…俺を信じてくれ…。な?」


心配させないようにか彼は少し微笑むがそれはぎこちなく、やせ我慢に他ならなかった。その痛々しい姿に皆の視線はは釘付けになり、何故か隼樹を止めるのをやめていた。


「遥井さん…なんでそこまで……」


瑠花がぽつりとそう呟く。隼樹自身にも明確な理由はわからなかった。ただ、彼は目の前の事が間に合わなくなるのだけは嫌だった。

もう後悔したくなかったのだ。


「(まだだ。もっと…速さがいる…。)ハァ…ハァ…超加速(フルグレ アクセレ)!」


 顔を青くしながら隼樹は更に超加速を重ね残像ができるほどの速さを出し、ウィールが地面を削る。エラースクローは残像を追うが残像と残像が重なり消えた瞬間、追っていたエラースクロー同士がぶつかる。追うべき方向がわからず動きが慎重になる者や、恐怖したのか逃げようとする者も現れたが、隼樹を追うエラースクロー達の邪魔になり、また衝突が発生する。


「ガギャッ!?」

「グルッ!?」

「ギャズッ!?」


「(あと、あともう少し…!)ハァ…超加速(フルグレ アクセレ)っ…!!………づっ!ううぅ……ああああっ!」


 動けているのが奇跡なほどに隼樹は無理をしていたが彼は加速を止めなかった。

4人とスアテムは何も言わず、ある者は息を呑みながら、またある者は祈りながら、隼樹の戦いを見守っていた。

エラースクロー達は瓦礫(がれき)や柱、そしてお互いにぶつかり飛び回り地面に墜ちる。彼らは何が起きているか理解できないまま隼樹の作り出した神速空間に振り回されている。まるで竜巻のような勢いだった。


「っっ行っけえええぇ………!!!」


それを繰り返し繰り返し…

そしてついに彼らの動きは時が止まったように停止していた。


「………今だ!」


「スアテムさんからデータ来ました!早く遥井さんの元へ!空間転移(クロス モヴェレ)…!」


  スアテムの合図で4人は手を繋ぎ零士の空間転移で隼樹の元に移動する。そこにはエラースクロー達が転がっていたり、混乱し硬直している姿があった。その少し離れた所に隼樹が足を押さえて苦しそうに倒れている。それを見た結柰はすぐさま隼樹に駆け寄る。


「う……あ"ぁ………」


「遥井さんっ!!」


 隼樹のインラインスケートを外し足を見ると両足が紫色に()れていた。おそらく自然と右足をかばう動きをしていたためか左足にも負担がかかったのだろう。その上、怪我をした足で超加速を何度も重ねたのだ、それは見るからに重傷だった。骨も折れているかもしれない。


「ひどい…無理しすぎだよ…。今治療するから…!治癒能力(フィオーレ サナ)!」


結柰が能力を使うと隼樹の両足が花のオーラで包みこまれ腫れがゆっくりと治っていく。


「さ、彩愛さんありがとう…すごいな、痛みがひいていく…でも早くあいつらを……」


「大丈夫、澪瀬さん達がもうやってるから!。私も遥井さんをもう少し治療したらすぐ向かうつもりだよ」


その時、スアテムの通信が入る。ホログラム越しには申し訳なさそうに頭を下げるスアテムが映っていた。


「すまない隼樹…。君が怪我を負っているにも関わらず、私は作戦を中止しなかった。君の犠牲より作戦を優先したのだ。」


「いいんだよスアテムさん。スアテムさんは俺の気持ち考えてくれたんだろ?俺、やり遂げられて嬉しいんだ…あとは皆を信じて待つよ」


「…………結菜、隼樹を頼む」


「うん…!最善をつくすよ…!」


 その頃、先程隼樹がエラースクローの動きを止めた地点では瑠花達が作戦を進めていた。


「ありがとうございます隼樹さん…。これなら行けます…!エネルギーリング生成(ロタ リミテーション)!」


瑠花はエネルギーリングを生成しブーメランのようにエラースクローに2個ずつ投げ数匹ずつ十字状にリングで拘束し始めていた。だが最後のひとまとまりに差し掛かった時、一匹のエラースクローが正気を取り戻しリングをかわしてしまう。


「あっ…!?輝晃さん、巻き戻しお願いします!」


「………」


事前の会話通り瑠花が輝晃に能力の発動を頼むが輝晃の身体は硬直し返事がない。呼吸は浅く、目は開き、身体を小さく震わせながら拳をギュッと握っていた。その姿は明らかに平常ではなかった。その異変に瑠花は戸惑いの表情を浮かべる。


「えっ…あの…輝晃さん?大丈夫ですか…!?」


「ギギャア!!!」


その時、リングから逃れたエラースクローが輝晃の喉元に鋭い牙で噛みつこうと襲いかかってきた。輝晃はそれに気付く事なく人形のように無防備に固まったままだった。

隼樹の応急措置を済ませ、瑠花達の元に向かっていた結柰と通信越しのスアテムが叫ぶ。


「颯真さん危ないっ!」


「時を戻せ輝晃!」

 

「…っ!!」


一瞬だった。エラースクローの身体に光が浮かぶ。

咄嗟に零士が銃から放ったビームがエラースクローの胴体を貫いていた。


「グギッ……!?ゥゥ………」


輝晃を襲ったエラースクローは地面に落ちピクピクと震えた後停止。姿が塵のように崩れ消失したのだった。


「颯真さん!怪我はないですか!?」


額に汗を浮かべながら心配する零士の声に輝晃はハッとし我を取り戻す。


「っ!……悪い、皆…。クソッ何を呆けてるんだよ僕は!」


「そもそも私が失敗しちゃったからです…ごめんなさい…」


輝晃が声を荒げ自分を攻める姿を見て瑠花は申し訳なさそうに謝る。それを聞いて輝晃は罰が悪そうに下を向く。


「違う。澪瀬は悪くない…。僕が使えない役立たずだっただけだ」


そんな2人を零士は穏やかな声で優しく励ます。


「2人とも自分を責めないでください。誰だってうまくいかない事はあります。こんな状況なら尚更です。それより早くこいつらを倒しましょう」


 輝晃「あ、ああ。今度はちゃんとやってやる」


  それから零士、輝晃、結柰はエラースクローを仕留めに入った。瑠花もリング追加などでサポートにつく。害ある怪物とはいえ、生物の命を奪う行為にためらいはあった。だが世界のために時間軸を歪ませる彼らを見逃す訳には行かなかった。3人は改めて覚悟を決め、エラースクロー達を倒していく。その表情は少し険しい顔をしていた。


「つあっ…!彩愛、あとそっちのだけだ!できるか…?」


「うん大丈夫!これで…終わりだよ」


「ピグィッ……!」


結柰が最後のエラースクローのまとまりに矢を命中させるとエラースクローは塵になっていく。


「倒した…倒しましたよ全部!」


「や、やった…俺達やったんだよな!?」


「見てください!エラー空間が…!」


  エラー空間は地面からキラキラと光の粒が輝き、消え始めていた。エラースクローがいなくなり時間軸が修復し始めたのだ。それを眺めているとスアテムから通信が入る


「皆、よくやってくれた…。これで今回の異変は元に戻り、世界も滅びる事は無い。本当にありがとう。」


スアテムの言葉を聞き5人はほっと息をつく。が安心するのには早かった。


「しかし、これを起こした何者かは野放しにされてる現状だ…また異変は起きるだろう。その時はまた頼む…。」


「で、ですよね」


「こんなのを何回もやらなきゃ無いのか…」


「今回はなんとかなりましたが、次も同じに行くかどうか」


「遥井さんにひどい怪我させちゃったし…」


 先の事を想像し、皆の顔がみるみる曇っていく。

そんな4人に隼樹は明るく微笑んだ。


「でもさ、今回乗り越えられたのは大きいと思う。皆で協力しあってこの結果を出せたんだ。無茶はしちゃったけど怪我も彩愛さんのお陰で軽い捻挫ねんざくらいまでに治ったしさ。確かに不安はあるけど。俺、皆とならこれからも頑張れる気がするよ…!」


「全く遥井さんは無茶しすぎですよ。でも隼樹さんの言う通り、私達協力できましたよね…?私も零士さんが励ましてくれた時、気持ちが楽になりました」


「でも遥井さんが身体を張ってくれたから今回の勝利はあったと思います。ありがとうございます。俺も一人じゃ何もできませんでしたよ。皆さんがいたからです。…震えてたんですよ結構。」


「いや、対輪がいなかったら詰んでただろ今回。澪瀬だってリングを的確に投げてた。最後の追加リングも助かったし。対して僕は実際固まって何もできなかったけどな」


「颯真さんも頑張ってたよ~!私が最初エラースクローを倒すのをためらってた時、無理そうなら自分がするって言ってくれたんだよ!」


「僕だけ何もしてなかったからな…それくらい普通だよ」


  隼樹、瑠花、零士、輝晃、結柰がお互い褒め合い、場が少し明るくなっていく。不安は残るが隼樹のいう通り「この皆となら…」という雰囲気に包まれていたそんな5人を見てスアテムも口元が緩むのだった。


「巻き込んだ私が言っていいのかわからないが、私から見ても君たちは良いチームになれると思うぞ。」


「あ!スアテムさん笑ってます…!」


「スアテムさんもそんな顔するんだな…!」


「私、スアテムさんもチームの一員だと思うよ~」


「はい。サポートとてもありがたかったです…ですよね?輝晃さん」


「なんで俺に振るんだよ…。ま、まあ助かったよ…狂人扱いして悪かったな」


「ふふ。私はガーディスとして当然の役割を果たしただけだよ。では、君たちを元いた場所に戻すぞ。唐突だが日常に戻ってくれ。くれぐれも今回の一連の事は誰にも言わないように頼む」


「わかった。じゃあ皆また…!」


「うん。皆またね~。遥井さん、完治はしてないから無理しちゃだめだよ?」


 5人が軽い別れのあいさつをしているとだんだん視界がぼやけていく。意識が遠のいたと思った瞬間、隼樹の目の前には四ツ葉スターゲートスケート場の入り口があった。


「も、戻ってる…!!良かった…」


  隼樹が大会会場を眺めていると周りにいた学生達は目を丸くし大きな声をあげる。辺りにいた人々も 皆、きつねにつままれたような顔をしている。


「え…ある…スケート場あるわよ!?えっ?は?どうなってんの~~~~~!?」


「理解できない…!さっきのビルは消えたのか!?」


「うそうそうそ!?なんでなんでなんで~!?」


 先程の学生達が慌てふためく姿に「まあ、そうなるよなぁ…」と思っていると馳競から電話がかかってきた。鞄からスマホを取り出し電話に出るとものすごく慌てた様子の声が聞こえてくるのだった。


「あ!隼樹!?ごめん!!!俺さ二度寝してたんだけどお前の電話気になって今もう一回プリント見たんだよ!したら大会今日じゃん!?そうだよな昨日話してたもんな!?どうなってんだ!?いや本当ごめん!つかこれ絶対間に合わねー!とりあえず急ぐわ!そういや大会会場無いとかって言ってたけどどうなった!?」


「いいよ、気にしないでくれ。大会会場は………あるよ。でも多分大会は延期か中止になるんじゃないかな。俺もちょっと怪我しちゃったし、今日あったとしても出られないな…」


「え、お前怪我したの!?大丈夫か!?」


しばらく話した後、馳競との電話が終わると鞄にスマホを戻そうとする。その時、鞄に入ったもう1つのスマホのようなものが目についた。


「夢…では無いよな…。」


 ガーディクルデバイスを見つめ隼樹はポツリと呟く。

 まだ不明な部分もあるが、スアテムの説明はほとんど本当だった。世界を守るには、馳競と上を目指す未来のためには仲間と協力して前に進むしかない。地に足がつかないような状況に思う事は沢山あったが隼樹はひとまず日常にもどり、大会会場に向かって1歩踏み出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ