2人旅(放浪)の始まり
ディオルは子供です、女の子供です。
俺とディオルは商人がまだこの街に残って無いかと思い、物騒な路地裏などをグルグルと回っていた。
が、それらしき人物は見当たらなかった。
ダイオン「いなかったな。」
ディオル「あぁ、大方予想は付いていたが」
ディオルと俺は街の外に向かって歩き出した。
傍から見れば親子のお出かけに見えるだろう。
ディオル「もうこの街に用は無いのか?」
ダイオン「あぁ、もう特に気になることもないしな。」
ディオルは続ける。
ディオル「用は無いだけに俺はもう酒に酔えない、と。」
少女から発せられる言葉は門番をも寒さに襲わせた。
俺は冷えた体を擦りながらこう思った。
ダイオン(既に後悔しそうだ…)
ディオル「よし、行くぞ!」
俺とディオルの奇妙な放浪は始まった。
〜街から出て約15分後〜
ディオルは慣れない足を必死に動かし歩いていた。
ディオル「はぁ…はぁ…もう1時間たったんじゃねぇのか?」
ダイオン「10分も立ってないぞ。ディオル」
ディオルは歩きながら悲痛な叫びを上げる。
ディオル「あああーー!!クソ!!歩きにくい!!」
ディオル「なぁ、ちょっとおぶってくれよ英雄様。」
ディオルはこっちを死んだ魚のような目で見つめている。
ダイオン「その英雄様ってのなんなんだ?別に構わないが。」
ディオル「ひとつの村を救ったんだろ?ま、こんなガキの俺を連れてっている時点で俺にとっての英雄様だな。」
ダイオン「今の話でおぶるのはナシだ。行くぞ。」
俺とディオルは軽いジョークを話しながら歩いていた。
そんな話をしていると前から魔物が現れた。
ダイオン「おいディオル、お前は岩陰にでも隠れておけ。自慢の格闘技もその体じゃ使えないだろう。」
俺は剣を抜きディオルを守るように刃で隠した。
だが、そんなに俺の言葉とは裏腹に違った言葉が飛んできた。
ディオル「あまり舐めんじゃねぇよ。ただの荷物持ちとは違うって事を教えてやるからよ。」
ディオルは手を構えてやる気満々だった。
ダイオン「……無理はするな。」
ディオルはこちらを見ずに頷き、その瞬間魔物がこちらに向かって走ってきた。
魔物「ギャオオオオオオオ!!!」
ディオル「人型のゴブリンの変異種ってとこか。あいつの馬鹿力には気を付けろ。」
そんな言葉に返事をする間もなく、魔物は俺の方へと向かって爪を立てて来た。
ダイオン「うぉっ、危ねぇ。」
剣を地面に突き刺しで爪を防いだ、そこで空いた脇腹にカウンターを入れる。
ダイオン「フン!」
左足が弧を描くように魔物の脇腹に直撃した。
かのように思えた。
ディオル「大丈夫か?ダイオン。」
ダイオン「あぁ…かなり素早いな。さすが変異種ってとこか。」
俺のローキックは空を蹴っており、魔物は既に後ろへと回避していた。
ディオル「ちょこまかやるのはめんどくせぇ、俺に合わせろダイオン!!」
話しながら先陣を切り、ディオルのジャブが魔物に命中、そして強烈なアッパーが魔物の顎を砕いた。それを確認した俺はすかさず後ろに回り、ディオルに当たらない位置で横に剣をふるった。
魔物「グッグオロロロロ……」
気持ち悪い声を上げながら魔物は息絶えた。
ディオル「ナイス連携!初戦闘は上々ってとこだな。」
ダイオン「あぁ、これならディオルにも安心して背中を任せられる。感謝しよう。」
ディオルはニヤっとほっぺを膨らませ続ける。
ディオル「お前は俺に背中を任せて
俺はお前に手なんかをかかせる。最高だな!」
さっきまでの熱気が嘘のように冷めきった後、意味のわからないオヤジギャグを無視して俺は次の魔物を探しに行った。
ディオル「お、おい!ちょっと待てよ!」
その後休憩を挟みながら同じような魔物を5体ほど倒し、1時間ほど歩いた頃に日が落ちてきた。
ディオル「おいダイオン、日が暮れてきたぞ。そろそろここら辺で野宿とかまそうじゃねぇか」
俺は頷き、岩陰にあった浅い洞窟のような場所で野宿することにした。
ダイオン「今日は疲れたな。ずっと戦闘ばかり繰り返してたような気がする。」
ディオル「ま、そうだな。さてと。」
ディオルは得意げな手つきでお子様用リュックからマッチと道具屋で買った食料を出した。
ディオル「俺は火種を付けるからよ、ダイオンは薪を拾ってきてくれ。」
ダイオン「どのくらいだ?」
ディオル「うーんと、今が夕暮れ辺りだとしたらお前くらいの身長の木を2、3本くらいだな。」
ダイオン「分かりにくい、それにどうしてそんなに必要なんだ?今は冬じゃないぞ。」
ディオルは首を横に振り得意げに口からチッチッチと音を出した。
ディオル「油断は禁物だぜ、英雄様。寝てる間に魔物に襲われたらどうすんだ。ま、余分なくらいあればちょうどいいぞ。」
俺は納得し、剣を持って木を切りに向かった。
15分もたった後、俺は大量の木を洞窟へと持って行った。
……しかし、火は付いていなかった。
ディオル「クソっ!なんでなんだ!あの道具屋か?湿気ったマッチなんか買わせやがって! 」
状況だけを見ると火が付けれていないらしい。
ダイオン「おいディオル、薪は持ってきたぞ。マッチは俺がやるから飯の準備でもしててくれ。」
ディオルはこちらにふっと振り向き、震えた声で話し出した。
ディオル「面目ねぇ…これで最後の1本だ。これで付けれなかったら野宿は中止だな…」
ダイオン「1本あれば大丈夫さ、ここに火種を入れれば良いんだろう?」
ディオルは魔力式のランタンを未着火の焚き木に照らしながら頷いた。
ダイオン(よし…)
慎重にマッチを3回擦るとブワッと火が立ち、すぐさま焚き木に入れようとした瞬間に後ろから魔物の声が聞こえた。
魔物「グルルルル…ガオッ!ガオッ!」
その魔物の声に驚き、俺はマッチの火種を洞窟の水たまりに落としてしまった。
すぐさま俺とディオルは魔物の方へ振り返り、剣を取った。
ディオル「んの野郎…寿命が縮んじまったぜ…」
ダイオン「自殺志願か?お望み通り殺してやる」
俺とディオルで魔物をボコボコにし、戦いが終わったあとに二人で石に腰掛けた。
ディオル「クソッタレが、今日は長い夜になりそうだ、支度するぞ。」
ダイオン「そうだな。」
外に出る支度をしている途中、あることに気づいた。
ダイオン「おいディオル、お前魔法は使えないのか?」
ディオルはこちらを振り向かずにリュックに物を詰めながら続ける。
ディオル「冗談だろ、俺は拳一筋だ。魔法なんて使えようがないさ。」
俺はあることを思い出し、魔力式のランタンを照らしバックを漁って物をディオルに見せた。
ダイオン「ディオル、この本の魔法使えるようになってるんじゃないか?」
ディオルはこちらに振り向き、本を奪うように取ってからページをペラペラと捲り始めた。
ディオル「やるだけやってみるか。」
ディオル「まぁこれは賭けだが、この体だったら使えるようになってるかもな。」
ディオルは焚き木に両手を広げ、目を閉じ小さな声で詠唱しだした。
ディオル「ワレラカミノゴカコニアタイスルジンブツナリソシテソノゴカゴヲオレタチニアタエヤガレボケナス」
ディオルは目を一気に開き、炎の呪文を唱えた。
ディオル「ファイン!!」
そう放った直後、ディオルの両手から炎が吹き出し、着火剤に小さな火柱を立てた。
ディオル「おお!出来た!出来たぞ!!」
ダイオン「やるな。」
ディオル「おいダイオン!フーフーしろフーフー!火が消える前に!」
ダイオン「そんな事しなくても風の魔法でも使えばいいじゃないか。」
ディオル「あ、それもそうか。よし、詠唱無しでも使えるか試してみる。」
ディオルは目を瞑り集中し始めた。
ディオル「ウィンディ!!」
詠唱なしの影響か先程の火と比べあまり強くは無いが、逆に火を強めるにはピッタリの風だった。
そして、焚き木から火が上がり、くべた薪に火がついた。
ディオル「さすがだなダイオン!気づいて正解だったな。」
ディオルは喜びを隠すようにニヤニヤとしながら続ける。
ディオル「1度魔法ってもんを使ってみたかったんだよ!夢みてぇだな…」
ディオルなりに子供の頃に魔法を打ちたくて練習してたらしい。
ダイオン「ま、どっちにしろ見つけれてラッキーだった。さ、飯にするか。」
その後は飯を食いながらこれからの事を話し始めた。
ディオル「なぁダイオン、お前の旅の目標はなんなんだ?記憶探しとはいえ、この世界を飛び回るのには相当な時間がかかるぞ。」
ディオルは小さな手で食事を運びながら話す。
ダイオン「あぁ、それなんだが…」
ダイオン「魔王と一緒に戦った女の子を探している。これと言った特徴は覚えていないが、見れば1発で分かると思う。」
ディオル「なるほど、そういえば昨日もそんなこと聞いたな。女の子もお前と一緒に川に落ちたのか?」
ダイオン「いや…分からない。その辺がスッポリと抜けている。」
ディオルは完食したお椀とスプーンを水溜まりにぶん投げ、こう話した。
ディオル「なかなか難しいな、特徴も分からない人を探すっつーのは」
ダイオン「……真剣な話をしている途中に悪いが、お前は今女の子なんだ。食事や立ち振る舞い、言葉遣いなども正した方がいいぞ。傍から見たら不審者だ。」
ディオルは歯に付いた食べ物のカスを取るように小指を奥歯に突っ込みながら話した。
ディオル「そう言われたってしょうがねぇ、俺は体が変わっても俺だからな。」
そういった直後に放屁をしたディオルは思い出したかのように先程の本を取り出した。
ディオル「それはそうとダイオン、これ、色々試してみないか?」
ディオルはこちらに魔法陣が書かれた本を見せてきた。
ダイオン「あぁ。やってみせろ」
ディオル「了解した。この中から俺が使える魔法を調べてみる。ちょっとまっててくれ。」
ディオルはそう言うと指を舐めページをペラペラと捲り始めた。
ディオル「よし、これがいいな。」
ディオルが開いたページには(魔物を一定の時間一切寄せ付けない結界を貼る呪文)と書かれていた。
ディオル「えーとなになに……?」
ディオルは両手を広げTのようなポーズを取った。そして目を瞑り詠唱を始めた。
ディオル「…………エンスシールド!」
そういった直後、ディオルの体の周りから半透明で青紫色の球体が徐々に出てくる。
ディオル「おお!すげぇぞ!出来た!」
見てくれは魔法が初めて成功した可愛い少女そのものだったが、中身はおっさんだったことに少しの不快感を覚えた。
ダイオン「…凄いな、これで今日の夜は安心して眠れる。他のも試してみたらどうだ?」
その後は色んな魔法を試した。
火の呪文、水の呪文、氷の呪文、風の呪文、光の呪文、そして闇の呪文も。
攻撃系は水と風、そして光しか出来なかったが、補助魔法などは充実していた。
ディオル「よっしゃ!これからは呪文とサポート、更には近接格闘まで出来るパラディンに昇格だ!」
俺は喜ぶディオルを寝っ転がりながら見て、重い瞼に身を任せてそのまま眠りについた。
文章力がなくておっさんとダイオンが冒険してるみたいになってますね。
ちなみにディオルのオヤジギャグは僕のセンスです。