表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

こうして私は勇者になった

「はあぁぁぁ!?…っていや、ちょっと待て」


驚いたはいいものの、すぐに私は冷静さを取り戻した。


「えーと…そもそも白狼(はくろう)ってなんだ…?」


そう言いながら3人を見ると、カズが腕を組みながら誇らしげにしている。


「いいだろう。このカズさんが白狼について説明してやろうじゃあないか」


「おう…なんでお前が誇らしげなのかは謎だが頼むよ」


「白狼っつうのは30年前の厄災を終結に導き、颯爽と消えたま・さ・に!英雄というのにふさわしい…えー…人?獣?のことだ!」


「最後あやふやすぎんだろ!!」


あれぇ…おっかしいなぁ…と説明が上手くいかないことに困惑しているカズに呆れる表情をしていると蒼空(そら)椿(つばき)がアハハと笑った。


「ふふっ…w朱乃(しゅの)ちゃん、そんなに怒んないであげて…w」


「しょうがないんすよ…カズさんの説明がそうなっちゃうのもw」


「どういうことだ?」


「白狼って姿も存在もよくわかってないんすよ」


「そもそも大戦は白狼の力で終わったことを知っているのも円卓(えんたく)騎士(きし)だけだしね」


組織の中だけ…だから、普通に暮らしてたら知らなかったのか。


「あれ、でも何で隠す必要があるん…」


言いかけると、私は突然背後から頭にぽんと誰かの手を乗せられた。


「それは、白狼がえげつない力を持ち主だからだよ。それこそ、世界をまるまる1つ消せるぐらいのな」


後ろを振り向くとそこには、(つばさ)がいた。


「翼!?」


「「「隊長!!!」」」


3人は大きな声をあげると、正座をして頭を下げる…がすぐに翼は頭を上げろとジェスチャーをした。


「かしこまらなくていいよ、むしろもっと気楽にいてくれ」


そう言うと今度は私の髪の毛をくしゃくしゃとしながら、撫で始める。


「半日ぶりくらいだな~朱乃。どうだ?元気か?見ないうちに随分変わっちまって~」


「色々起こったよ!今隕石が降ってきても動揺しないくらい色々起こったわ…てか、どさくさに紛れて耳触るな!」


「つ、翼隊長!朱乃さんの耳の触り心地って…」


「お?君も触るかい?椿。ふわふわだぞ~これは至高のふわふわだな」


翼がそう言うと、椿はすぐにこちらに駆け寄ってきて、「いいすか?」と目を輝かせながら言ってきた。


こんな顔をされては私も断りにくい。


仕方が無いかといいぞと目で合図すると嬉しそうに撫で始めた。


「ふわふわ…!ふわふわっす!」


そんな椿を尻目に私は先程の質問の答えの続きを聞く。


「で、さっきの話の続きなんだが何でその白狼の力がバレちゃまずいんだ?」


「もし、こんなものが世の中にいるなんてわかったたら、それこそ戦争の元だ。人間やら国同士のな」


「だれが白狼を所有するからでな」


「なるほど…」


「まあ、でもウォンデッドがまた増えてきてる今、我が組織はまた白狼を見つけ出して手伝ってもらおうと思ってるわけだな」


「まあそれが、俺たち各部隊のもう1つの任務ってわけだな。わかったか?」


こくりと頷く。

それを確認すると、カズはニコッと笑ってからすぐに真面目な表情に変わった。


蒼空も椿も同様にだ。


「さて、ここからが本題だ朱乃。俺たちはこの世界を救うために戦う勇者だ。そんな俺たちから頼みがある。」


「俺らと一緒に戦ってくれないか?」


「お前の力はすごいんだ。覚えてないだろうが、昨日力が覚醒したお前は無意識下であの場にいたウォンデッドをすべて倒した」


「そんな力を…人を助ける力として使ってみないか?」


そう言ってカズは私に手を伸ばした。


「ちなみに」


と翼は口を開く。


「ならない、という選択肢もある。私がここに連れてくるまでは普通の一般人として過ごしてたんだ。そちらの方が少なくともまともな生活は手に入るだろう」


「ここまでの記憶も消してやるし、白狼の力が2度と出ないように封印もしてあげよう」


「ただ…君はそれで満足かな?」


まるで(あお)ってくるかのようにニヤケながらその提案をする翼。


とても意地悪だなと感じた。


だが、私の答えは決まっている。


あの戦いを見てから。


「なる…なるよ。勇者。世界を救う勇者に」


「私の力は…私はそうあるべきだ」


そう言って私はカズの手を取り、ギュッと握手をした。


それを見て、嬉しそうにする蒼空と椿が目に映る。


パチパチと拍手をする翼。


翼は拍手をしながら、どのようにやったのか謎だが初めて出会った時と同じ軍服の姿になる。


「これで、私はお前に隊を預けられるよ」


そう言いながら、また制帽(せいぼう)を被せてきた。


そして、息を数と全員に聞こえるような大きな声でこう言う。


「私は白狼隊、隊長を辞退する!その代わり、今日からは如月(きさらぎ)朱乃(しゅの)が白狼隊隊長だ!これは白狼隊隊長としての最後の隊長命令権として行使させてもらう!」


全員が強く頷く。


「んじゃな…頑張れよ。朱乃」


そう言って、また去っていた。


しばらく、場が静かになる。


(そうか…これでみんなと戦えるのか。"白狼隊の隊長"として…)


(うん…?)


「…ちょっと待て、あの人今私をこの部隊の隊長にするって言ったか?」


「そうっすね」


「そうだったね~」


2人の答えに表情が固まった。


「まあ、頑張れ!新隊長!」


そう言いながらカズは私にグッドの手を前に差し出してくる。


「まじ…かよ」


こうして私の勇者として生活は始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ