恵みの隕石
とある王国を治める女王は、国全体に広がる飢饉に頭を悩ませていた。今年は蓄えが不足したままに冬になってしまったのだ。
このままでは彼女の子である国民たちがみな飢えて死んでしまう。
もはや神にすがるしかないのか、などと考えているところに、一人の伝令が息を切らせて走って来た。
空から巨大な隕石が落ちてきて道を潰した、と。
ただでさえ食糧問題で頭が痛いときに、なんでそんなものまで降ってくるんだと女王は思わず天を仰いだ。そして大きな体をのっそりと動かすと、とりあえずその隕石を調べるようにと命ずる。
それからしばらくすると隕石を調べた部下が興奮した様子で戻って来た。
なんとその丸い巨大な隕石は不思議な色をしており、食べることができると言うのだ。しかもそれは甘く、舐めるだけで活力の湧いてくるものだったという。
驚きながらも女王は、ひょっとしたらこれで冬を越すことが出来るかもしれないという希望の光が見えて、思わず神に感謝を捧げていた。
ちょうどその頃、女王に感謝を捧げられた存在は項垂れて泣きそうになるのを我慢していた。食べ始めたばかりの飴を口からこぼしてしまい、それが地面にいるアリの巣のすぐそばに落ちてしまったのだ。
「もう一個はあげませんよ」
母親からそう聞いた子どもは、ついにワンワンと泣き始めてしまう。
だが蟻の女王にはそんなことは知るよしもなかった。