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泥棒のように右見て左見て、スリッパを脱いで物陰に隠れながら移動する。
皆が真面目に授業を受けている中で、なんで私は真剣にスニーキングをしているのだろう。
マジで不思議だけど考えたらドツボにハマりそうなのでやめた。
教室の前を通る時には更に慎重に、教室側に身を寄せて移動する。
扉が閉まってる教室ならいいけど、空いてる時はその教室内の生徒に委員長が協力してもらって乗り越えた。
協力してくれた生徒は困惑しながらも、先生の視線が黒板に移ったタイミングにジェスチャーをしてくれた。
そのおかげでバレることなく、屋上へ続く踊り場まで来れた。
こんなに必死になってここまで来たけど、見ればわかる答え合わせをした。
ほら、この通りと言わんばかりに屋上への道を紹介しながら。
「屋上……はダメだった。ガッチリばリードがあったし、鎖でガッチガチ」
「アニメや漫画のようには行かないのね」
初めから答えを言おうとしたのに、口を人差し指で抑えられ、「ネタバレはダーメ」なんて言われたからこうしたけどさ、意味あったかな?
委員長は鎖を固定している南京錠を見ていた。
「何とかなるかもって言ったらどうする?」
「どうもしないかな。場所に拘ってないし。サボる理由も正直無いしね」
「なら、なんでサボってるの?」
委員長の問いかけは首を傾げておどけたぶりっ子を演じていたけど、質問には答えられず、委員長へのツッコミも出来なかった。
頬に手を当てて体を曲げてそのポーズのまま固まってしまった。
私は「なんで」が嫌いだ。だからだろうか、何も言えずになんの表情も作れずに、解けかけた糸を結び直した感覚になった。
スっと姿勢を直した委員長はニコリと笑うが、何も言わなかった。私と一緒。
「後は体育館の2階」
「授業も結構あるんじゃない?」
「ほかのクラスが授業する時はこっそり逃げるか縮こまって本読んでる」
「へぇ、てっきりゲームとかしてると思った」
「あんまりゲームしないんだ」
「意外。不良はゲームとタバコだと思ってた」
「多分イメージしてる不良と私は違うんじゃない?」
「後はあとは?」
「ワクワクしてるね?」
「なんかね、未知って感じてこういうの好き」
「す……。そうですか」
「あとは無い。教室で真面目に受けてる振りをする」
「授業は真面目受けないと、メッだよ!?」
「現在進行形でサボってるんだけど?」