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「それでは……」
咳払いをして、話し始めて、いつ息継ぎしているんだろうと不思議に思った。
ちなみになんにも耳に残ってない。こういうラップありそうだなあとか思いながらいただいたお紅茶を頂戴する。
はーはー。ナカナカビミデアル。
紅茶も飲み干した頃、メイドをもう1人連れて委員長が戻ってきた。
メイドはそれだけで美術品みたいな台車を引いていて、その上に乗っているのはいわゆるアフタヌーンティーと言うやつだろうか。
全く馴染みなしである。
物珍しさに惚けていると、なにやら心配そうな表情で委員長が覗き込んでくる。
「えっと、なにか機嫌を損ねることをしてしまいましたでしょうか」
横の戌井さんがそっぽを向く。
おい、厄介なかとした自覚あったんかい!
委員長があまりにも不穏そうで、弱そうに見てたから手を取って落ち着いてくれればなぁと思った。
「いや。そんな事ない。ただ」
「ただ?」
「驚いた。す、凄いよ。本当に」
本心だ。もう全てに驚いているんだから。
あの雨の日からずっと。
驚きの連発で、当たり前すら驚くべきことになっている。これは他の誰でも同じように感じるものなのだろうか。
多分違うんだろう。
よく分かんないけど、私の為に動くこのご令嬢だからかもしれない。
例えこんな私に似つかわしくない豪華な茶会を用意されなくても同じように思っただろう。
ようはコンビニとかファミレスとかでも良かったのかもしれない。
まあ、なんやかんやと考えてみたものの、目の前のマカロンや1口サイズのケーキ達の誘惑は揺らぐことは無いのだけれど。




