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こういう車、なんて言うんだっけ。
ファミリーカー?やたら背が高く人数も入りそうな車だ。委員長の事はよく知らないけれど、お嬢様らしいということは知っていたからてっきりリムジンとかが来ると思った。
これはアレだろうか。庶民的考えで金持ち全員リムジンみたいな浅い考えだったということなんだろうな。
ともあれ、お付のスーツを着た女性が恭しく一礼をした後に軽々と自転車を後部座席を倒した場所に載せた。
誰かの家へ行くという事に少しの抵抗感を覚えるけれど、逃げ出すための足はもう簡単には取り出せないし、なんか知らないけどめちゃくちゃ期待した顔の委員長を突き放せるほど腐ってはいない。新鮮でもないけど。
「お、お願いします……」
辛うじて最低限の言葉だけゴニョゴニョと言ってみた。伝わったかは分からない。
お付兼運転手だった女性がバックミラー越しに「承りました」とハスキーな声で返事をして車を走らせた。
「……なんか、収容所へ向かう捕虜の気分」
沈黙があまりにも耐えられなくて言わなくてもいい様な軽口を言ってしまった。
「なら、そうですね。私の部屋に禁固10年とかどうでしょう」
「ごめん、悪かった。委員長がいうとシャレにならない気がしてきた」
「何でですか!?」
「いや〜、それが出来そうだから?」
「ぐぬ、ぬぬ」
「えぇ、言い返してよ」
「フフ、ああ失礼致しました。お嬢様がそんなに楽しそうなのは初めてでして」
「はぁ。……いっつもこんな感じですけどね」
「そんな事ないですよ!?ですよね!?」
「えぇ、どうかなあ」




