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上手くいかない時は1人で抱え込まないで相談するが吉。という事で早速相談に乗ってもらうことにしました。


放課後、寧々さんと私とで綺麗しにした空き教室は、あれ以来掃除はしてませんけれど、綺麗な状態が続いています。


私は毎日ここに来ているわけじゃないし、用がない限りはここには来ない。


だからほぼ毎日ここに来ているであろう人物が換気とかしているんだと思う。


まだ、春先だから良いものの、これから猛暑になった時には扇風機もクーラーも無いこの部屋には居られないだろう。


そんな先の話は良いとして、私は放課後に居ると期待して空き教室へ来た。


目的の人物はちゃんと居た。

酷く退屈そうに。


隣に座った時に逃げられるかもと思ったけど、一瞥されただけで、何も無い天井をただボーッと眺めている。


その横顔は憂いていて、少しだけ空いた口は私を夢中にさせた。

1分か、5分か。はたまたそれ以上か。


これ以上見つめているとよからぬ事をしてしまいそうで、言いたかったことと全然違うことをペラペラと喋っていた。



「と、言う感じで上手くいってないように思うのですよ」

「はぁ」


間の抜けた返事。

唖然とした表情で私を見てくれていた。

少し照れますね。でも、ちゃんと話を聞いてくれていたかはあやしいです。


「聞いてます?」

「あ、ああ、うん。本人に言うか?」



寧々さんは自分を指さしてふるふると軽く首を横に振りました。


「あ、バイトの時間……。じゃあ」


それだけ言って立ち上がり、軽くお尻を叩いて埃を払うと、床に寝そべる様に置かれていたカバンを手に取って帰ってしまった。


「おーい、まだ話は終わっちゃあねぇぞ……」


時代劇の様なセリフをその背中に投げかけてもリアクションは無し、なんなら最後の方は聞こえてすらいなかったと思う。


「うーん、今は避けてたって感じじゃ無かったよね」


うんうん、と自分に言い聞かせないと泣けてきそうだった。こんな経験は始めてだ。


……。こんだけ追い回すのって私は寧々さん、好きすぎなのでは?

いや、この好きは友達の、好き。


友達ってあんなにドライか?


今言ったバイトって嘘かもしれなくない?

そう思ったら途端にものすごい寂しさが体を包んだ。

凍えてしまいそうなほど寂しい感情で泣きそうになった。

強く瞬きをしたらよからぬ物が床を濡らすだろう。


「確かなくては。……そうです。私はお客さんなのです」


あーあ。なんだかムショウに喉がカワイタナ。

コーヒーがノミタイナ。


よし、追いかけよう。



私が空き教室でうだうだと悩んでいた時間は驚くほど長かったらしく、短い針が次の時間を示していた。


急いで喫茶店へ向かう。

そういえば、今日は寧々さんと登校してるからバイクは無い。


邪魔されたくもないので、予めメイドに連絡はしておこう。


歩きながらスマホを片手にLINEを送る。

校舎はガヤガヤと活気があって、部活引退を控えた3年生と新入部員の1年生とがぎこちなさそうにしている。


帰宅部の人も多い。

私のことを知っている人達はすれ違いざまに「委員長、またね!」と手を振って自転車で駆けていく。


私がさようならを言おうにもその姿は遥か先へ行ってしまった。


さっきのは、安達さんよね。


「あんなに元気が有り余ってるなら部活動入ればいいのに」


そう言ったが、人には人それぞれの事情があることを私が1番身に染みて知っているはず。

それなのにそんな事を口走ってしまったのは、私が実はソレを望んでいるからかもしれない。


不自由のない自由。

私はその世界の殻の中から光を見出したのに。



歩くだけでじんわりと汗をかいた。

カランと軽いベルが来店を知らせると、寧々さんは言っていたとおりにウェイターの格好をしてアルバイトに勤しんでいた。


「いらっしゃ……」


挨拶の途中で言葉が途切れ、電源が落ちたロボットのように固まった。


「いませー…………」


お、最起動。


寧々さんが水とメニューを持ってきてくれました。

中々様になっていて、慣れている感じがしました。

寧々さんはいつからバイトをしているのでしょうか。元々お手伝いとかで幼い頃からやっていたのかもしれませんね。




「いいですか寧々さん!」

「あ、ちょっと待って。ハーイ、お伺いしまーす」


水を一気に飲み干して、寧々さんに来る途中に何度もシュミレーションした事を言おうとして、遮られる。



「……仕事に真面目。良い」



恐らく私が注文を頼むとは思わなかった寧々さんは新たに来店してきたスーツの人へ接客に入ってしまいました。

その人は決まっていたのかサッサと注文をして、寧々さんもマスターへ伝えたら、私の所へ戻ってきてくれました。



「で?」


冷たく聞こえた言葉とは裏腹に、どこか照れたような表情は何を考えているのか、考察の必要がありそうですが、後の課題ということにして、今度こそ伝えます。


「だからですね、遊びませんか?」


思ってたん言葉と違う。

これはあれですね。ひよったと言うやつです。

ま、まあ?あれこれうだうだ考えていたことは結局は説教臭い事だったし、フランクになり過ぎている気はするけれど、良い切り口にはなったと思う。


つまり、ファインプレー!


「……………………………………」

「偉く悩みますね」



「……いいよ」

「えっ?」

「良いよって!遊んであげるって言ってんの!」

「ホントですか!?今更嘘なんてダメですからね!」

「やっぱ、やめときゃ良かったな」

「ダメでーす!もう取り消せませーん!やったァ!」


「何がそんなに嬉しいのやら」

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