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「まあ、私の事はいいよ。委員長はなんでいるのさ。授業中じゃない?」
授業開始のチャイムはほんの数十分前になったばかりな気がする。
真面目で優等生様がこの時間この場所にいてはいけないと思った。
私は良いのかと言えば、まぁ、良くは無いんだけど。
先生を含むみんなから認められる人と、ほぼ忘れられてる人とでは、なんというか、価値が違うから勿体なくない?要らぬ気遣いを内心してしまう。
「心配してくれるの?嬉しい」
委員長は感動しましたを体で表現した。
天に昇る背筋の伸び、ピシリと揃えられた綺麗な足並み。細過ぎないかと心配なほどの足は私の方を向いていて、その綺麗さに見惚れそうだ。
いや、JKの生足見て見惚れるは不味いか。
「うーん、心配よりも好奇心?」
誤魔化すや様に本心とは別のことを伝える。
なんというか、素直に心配してますなんて照れくさいし、柄じゃなくて照れくさすぎる。
「心配してくれるの?嬉しい」
「あ、正しい選択肢選ばないと先に進めないやつだ」
「心配してくれるの?嬉しい」
同じ姿勢、同じセリフを同じ様に再度言われる。
白い目を向けて、委員長もふざけるんだなと思った。
しかも相槌すら許されないみたいで、またまた同じセリフを言われる。
ゲームの主人公の気持ちを味わった。
「はいはい、心配、心配」
キリがないし、形だけでも言わないと先に進まなそうだし、正直このノリはめんどくさい。
「寧々さんはやっぱりいい子ね」
委員長は手を取って大袈裟な態度をとる。
もう、委員長がどんな人か知れば知るほど分からなくなる。
クラスメイトがこの委員長を見たらどう思うんだろうか。
私が知らないだけで、この委員長を知ってのかもしれないけど。
何も知らなすぎると思うと少し不味いかなーっと、思うけど、なんかダルい。
「無理やり言わせてる自覚持とうか」
「ふふん、初めてサボったわ」
「わーお、不良が伝染してしまった」
「冗談よ」
「嫌にはぐらかすね」
「だって、理由を言ったら」
「言ったら?」
「寧々さんはどっか行ってしまいそうで」
「うーん、分からない」
「……先生から探すように言われたのよ」
「それ、先生の仕事じゃない?」
「小テストがあまりにも早く終わってしまったので、思わず探してきますと言ってしまったわ」
「言ってしまわれたか」
「はい、私の事情は終わり」
「分かったけど、腕は掴まなくて良くない?」
「逃げない?」
「逃げない、逃げなーい」
悪戯心と言うものは歳を重ねたからと言って無くなるものでは無いらしい。
手を離した瞬間5歩程全力疾走してみた。
6歩目が無かったのは、私以上の脅威的な身体能力で私よりも先に行って私が委員長にぶつかったからだ。
「………」
「ごめんて」




