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当たりが暗くなって、各家は人の営みが可視化できるよう電気がともる。
母親かな?料理を作って、子供を叱って、今日あったことを話しているのかもしれない。
だから遅い時間に帰路に着くのは少し嫌だ。
お前は可哀想だなとまざまざと見せつけられるようで。
知らず知らずペダルを漕ぐスピードが上がる。
立ち漕して無心で汗かいて名義上の自分の家をめざす。
真っ暗で人の気配のない家。
ただいまも言わず、ガチャりと鍵が開く音、ガチャンとどビラが閉まる音だけが唯一の人が鳴らす音だった。
パチッとリビングの電気をつける。
荷物をソファーに乱暴に放り投げる。
くたびれた老人のように階段を上がって自分の部屋に付くと電気をつける。
「はぁ〜〜〜!!!」
枕に顔を押し付けてくぐもった叫びとも大きなため息との中間の声を出す。
ベットへダイブして足をバタバタさせる。
意味は無い。
少しだけ、気持ちが楽になった。
声を出すのは大切だ。
心につっかえたものが少し流れて行く気がした。
今日はおかしかった。普通とは違った。
私の感じる普通はみんなの感じるものと違くて、首を絞める思いがある。
しめ縄でくくられた首輪で宙ぶらりんだった。
自由はなくて、見えないレールを走らされているような。
「人と久々に喋った」
これはもはや快挙なのではないだろうか。
自分を褒めたたえてなんとか賞を授与してもいいかもしれない。
仰向けになって天井の電球が眩しくて手で隠した。




